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大浴場から
部屋に戻ると
まだ松山さんは
入浴中であった。
しばらくすると
松山さんが出てきた。
僕の勧め通り
無精髭も剃ってくれて
顔はサッパリしている。
髭がなくなると
浮浪者風でなくなり
秀才と見えなくもない。
ちょっと
見てくれよ!
と
松山さんが
僕を浴室に誘う。
松山さんは
浴槽を指差しながら
これを見てくれよ!
と
驚いた表情である。
浴槽を見ると
ウソでしょう?
と
僕は驚いてしまった。
浴槽の中の
お湯は真っ黒というか
形容しがたいような
気持ち悪い色だった。
僕が入ったら
こんな変な色に
お湯がなってしまったんだ!
どうしてかな?
と
松山さんは
不思議そうに
さかんに首を捻る。
おい!
おい!
この人
マジに言ってるんか?
天才と変人は
紙一重と言われているけど
松山さんを見てわかった。