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その僕の背後から
君は本当に
肝っ玉が据わってるな!
きっと
将来は大物になるぞ!
と
感心したような
松山さんの声が届く。
おそらく
僕が無用心でなく
松山さんの本性を
見抜いた上であること。
それを
松山さんは知って
自分は確かに
持ち逃げなんて
できる人間ではないな!
この子は
中学生なのに
鋭いところがある!
と
僕の人間観察力に
感心しているんだろう。
僕のことを
肝っ玉が据わって
将来は大物になると
松山さんは言った。
残念ながら
もう僕には
将来なんてない。
ただ
肝っ玉が据わっていると
僕も今、自覚している。
とんでもない
事件を犯したのに
自分でも不思議な程
普通に過ごしている。
今は午後八時前で
犯行から7時間も
まだ経っていない。
それなのに
ずっと前のようにも
僕には感じられるし
他人事のようにも感じる。