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松山さんは
無用心な僕に
見ず知らずの人を信用するなと
後学のために教えたいんだろう。
それも
相手のことを思った
ありがたい指摘である。
部屋に入って
持ち金の大半を
金庫の中に入れた。
そのカギは
僕のリュックに入れてある。
それを
松山さんは見ていたんだ。
何度も言うが
僕は幼い頃から
慎重派で用心深い。
なので
普段の僕ならば
こんな無用心なことは
絶対にしないはずだ。
それなのに
今日は用心しなかった。
これも
今の僕が日常でなく
非日常にいるように
感じているからだろう。
ただ頭のどこかで
天下の京大生が
そんなことしない!
と
僕は思っているからだろう。
京大卒の人間は
普通に生きていけば
生涯年収は5億以上だ。
それを
たかが100万ほどの
はした金を盗むことで
捨てることはしない。