愛するあなたが死んだ時
わたしには恋人がいました。
彼は10年前車にはねられて亡くなってしまいました。
彼はやさしい人でした。
何処へでも連れてってくれたし、私のわがままも聞いてくれた。
いつだって私のつらい時には駆けつけてくれたし、私のことを何よりも大事にしてくれました。
写真を撮るときはいつでも笑っていました。
彼のことがずっと好きです。
でもなぜでしょうか。日々、私は彼を忘れていきます。
彼は本が好きでいつも手に持っていました。
でももう、どちらの手に持っていたかわかりません。
彼は煙草を時々、ベランダで吸いました。
でももう、彼の好きな銘柄は思い出せません。
彼は時計が好きでした。
いつも腕時計を付けていました。
どの腕時計がお気に入りだったかはもう覚えていません。
彼の声はもう思い出せません。
あんなにやさしい声で、私を癒してくれていたのに。
顔だって、もう笑った顔以外は覚えていません。
あんなにきれいな顔だったのに。
貴方と私の心はずっと一つだと思っていました。
でも、私はあなたをだんだん忘れていきます。
貴方は私の中でだんだんと死んでいきます。
私は人殺しです。
私は、明日結婚をします。
貴方とは別の人とです。
私はきっと薄情者です。
わたしを恨んでください。
わたしを憎んでください。
わたしを忘れないでください。




