な死にさせたまひそ
ご拝読いただき感謝の極みです。
一応現代日本なんですけど、ちょっとだけ色々違うので、世界観を知りたい人はあとがきに
読まなくても作品は楽しめると思いますが一応
風倉探偵事務所
東京のとある下町に存在するこの探偵事務所は浮気調査や人探しなど一般的な探偵業をしていた。
人々は彼女のことを秀才と...
「助手く〜ん、ビール持ってきて〜」
訂正する、人々はこいつのことを変態と呼ぶ
「何を言ってるんですか響子さん、昼間っから」
「ねぇねぇいいでしょ〜どうせ今日も事件なんか起きないんだからさ〜」
清々しいほどのだらけっぷりである。
「取り敢えず散歩でもしたらどうです?リフレッシュにはちょうどいいです」
ソファーに寝転がる彼女を横目に机の上にある、ビール缶や安酒の瓶を片付ける。
「えぇ〜もうボク起き上がれないよぉ〜起こして〜助手くん〜」
缶瓶を片付け再び彼女の方へ向かう
「もう...仕方がないですね」
渋々彼女の脇に腕を通し抱き上げる。
抱き心地は悪くないが花の香や女の子の匂いなんてしない。酒と事務所の消臭剤の匂いだけ
「起き上がったなら早く着替えて準備してください」
「は〜い」
僕はこいつの母親なのか?
着替えるために寝室に向かう彼女を見ながらそう思った
家近くの街道、ここでは古くから様々な店が立ち並ぶ商店街になっており、風倉探偵事務所はその少し外れにある。
その商店街には喫茶店があり、今はそこで時間を潰している。
「う〜む、こんなところにこんなに雰囲気いい感じの喫茶店があったとは知らなかったな」
「いつも家にこもってばっかだからじゃないですか?」
「失敬な、つい3日前だって人探しで歩き回ったんだぞ?」
響子はコーヒーをひと口飲み込み、話を切り出した
「それで?こんな所に来るなんてどういう要件かな?まさか本当にリフレッシュという訳でもないんだろう?」
「響子さんに隠し事は通用しませんね…少し待っててください、もうすぐ来ると思うので」
そう言ってから程なく、店の扉が開きスーツを着た女性が入り、こちらに気づいて近づいてくる。
「ふ〜ん、警察の人がこんな所に1人でボクに何か用かな?」
「警視庁の狡噛阿礼です。あなたが風倉響子ですね?」
そう言うと僕の隣に座り彼女と向き合った
「ねぇ助手くん、ぼく逮捕されたりしないよね?さっきからこのお姉さんの表情が険しいんだけど…」
「阿礼は僕が呼んだんですよ、響子さんに会いたいって」
なんでこんなにビビってんだ
「安心してください、逮捕なんてしませんよ。私は依頼をしに来たのです。ちょっとした情報収集ですよ」
さてどうやら俺に口を挟む隙はないらしい
話に聞き耳を立てながら、頼んだ珈琲が酸化しては勿体ないと口に含む
まだコーヒーは暖かく、苦い
話が終わると阿礼は退店し、喫茶店はまた僕と響子だけになった
「で、どうするんです?依頼受けるんですか?」
「とりあえずは」
仕事が始まればいつものだらけっぷりもマシにはなる、これで僕の手間も減ってすこしは楽なるというものだ
「依頼の内容は?」
「知り合いの華族から相談があって、娘さんがストーカー被害を受けてるらしい、私達の仕事は彼女をつけてストーカーを見つけて、そのストーカーが誰かを突き止めることらしい」
「その手の話は警察が動きづらいからね」
「早速明日から、その人に張り付いてみよう」
帝都郊外
「よし!じゃあ行こうか!助手くん」
響子が意気揚々と言い放つ
「よし!じゃないですよ!なんですかそれ」
「何ってそりゃアンパンと牛乳じゃないか!当たり前だろう?」
左手に牛乳、右手にアンパンを持ちながら言う
「目立ちまくりじゃないですか!早く食べてください!」
「むぅ」
彼女は牛乳とアンパンを食べ終わるやいなや、話し始めた
「今回の依頼人は近くの女学校に通っていてね、下校中に視線を感じるらしい」
「つまり彼女が下校する道をたどって、ストーカを見つけ出すわけですか」
「その通り!感がいいねぇ助手くん」
この地域は東京から近く、警察や憲兵が多く常駐していることや、近くに華族の多く通う女学校があることも相まって見通しがよく治安がいい。
見通しが良ければストーカーもしやすいが、見つけようと思えば見つけるのは容易い。
下校時間となった
多くの生徒はここで下校し始める、依頼人は今日念の為車で先に帰っている。
ストーカーの特徴は既に聞いている、その特徴に合う人間を見つけてちょっと伝言を伝えるだけでいいだろう
あたりを見渡しながら響子と下校路を歩く、彼女がこんなことを言い出した
「こうやって歩いてると恋人同士みたいだね」
「そう見えるなら好都合です、怪しまれなくてすむ」と私が返すと彼女は少し不服そうな顔をして
「私の望む答えとは違うなぁ」という
「じゃあ顔を赤くして、『何言ってるんですか!!』とでも行ってほしかったんですか?」
「その通り」
ところで僕の体格は年齢の割にだいぶ小さいし童顔だ、お酒を買えば年齢確認どころか怒られる始末、面倒くさくなって最近はお酒の上に身分証を置く。
そんな話はどうでも良い、一番の問題は彼女の僕に対する態度だ。
端的にいえば彼女はショタコンだ、事あるごとにからかってくるし
何より距離が近い
「はぁ」
思わずため息がこぼれる
「君何歳だっけ?10?」
「25です、今年で」
「あれ?十代じゃなかったっけ?」
「そんなわけ無いでしょお酒飲んでるんですから」
「あれぇ?」
「わざとらしい」
そんな事を言っていると彼女のポケットのスマホがブルブルと震えた
「おや」と響子が反応する
「どうしたんです?」
「どうやらそれらしい人が見つかったらしい、行こう」
こうして私達は通学路から少し離れた地域に移動した
ただのストーカーの調査、警察の人にも事前に伝えてある、実に簡単な仕事だ
しかし、なにか違和感を感じる、ストーキングされていたのが貴族院議員の娘であること、そして今日は下校路の少し外れたところに居ること。
しかし彼の目的はわからない、令嬢を誘拐するつもりならもう少し大人数に物々しい車を用意してるはずだし、殺すならもうやってるはずだ
しばらくしておそらくストーカーの居るであろう施設の前につく
看板には市立公民館と書いてある
「公民館か...」響子が意外そうにつぶやく
「この辺の公民館はあまり使われてないみたいですね、時々子どもの教室などをやっているようですが今日はなにもないそうです」
「そりゃいい、子供には見せられない荒事も多少はやっても問題ないだろう」
「程々にしてくださいね、警察やら憲兵のお叱りを受けるのはもう懲り懲りですから」
ロビーにはほとんど人が居ない、今日はほぼ使われていないのだろう
「管理人に事情を話してマスターキーをもらってきます、響子さんはお好きにどうぞ」
「それじゃあ遠慮なく」
僕はロビー奥の受付に向かい、事情を説明する。
「わかりました、私がついていきます」と管理人
管理人が鍵を持って出てくるが、その時ロビー中に銃声がなった
耳に異常をきたすほどの防音に管理人は思わず耳をふさぐ
僕は響子の危険を察知し管理人から鍵を奪い取り銃声の方向へ向かう
助手くんと別れたあと、公民館の周りを見て回っていた。
地域の人が集まる公民館にしてはなかなかに豪華だ。
豪華なシャンデリアやソファーもある
しかし誰も居ない、まぁ使う機会もちょっとした市民の講座以外ないのだろう
その時ふと気づいた、ホールの鍵が開いている。
閉め忘れたのだろうか、おそらくありえないだろう、犯人がいるのはおそらくこの中だ
扉に手をかけ少し扉を開けると銃声が聞こえすぐに壁の方向に伏せた。
「誰だ!公安か!」という声が中から扉越しにうっすら聞こえてくる
「私はただの探偵だ!」と返す
「探偵だと!?」中の男が狼狽える
そして「中に入ってくるな!俺は爆弾を持っている!」と続けた
舌打ちをする、今私は銃を持っていない
となればここから退くしかないが出口に行く道は射線が通る
八方塞がりだ
犯人はゆっくりとこちらに近づいてくる
おそらく私を生かすつもりはないだろう、警察は間に合わない
イチかバチだが角待ちで格闘戦を仕掛けるしかない
そう思い構えたとき、もう一発銃声が鳴り、犯人の叫び声が聞こえた
「ぐああぁ!」
「警察だ!銃刀法違反の容疑で逮捕する!」
そう言ってステージの上に立ち硝煙を銃口から出しているのは
助手くんだった
ホールの裏口の扉の鍵を開けて入ったのは正解だった
犯人は響子の方に気を取られているようだ、こちらを警戒してはいない
奇襲をかければ無力化することはできると思ったが、犯人が少しずつ出口に向かって歩き始めた
出口の前には響子さんが居る
一度動いた手が戻る
こいつを外に出すわけにはいかない
止めた手をもう一度動かす
簡単だ
彼女を死なせてはならない
「警察だ」
「なんでこんな早くに警察が、あ”あ”ぁクソ」手から血を流しながら男が悶える
「両手を挙げて、膝をつこうか」
男は諦めたかのように両手を上げ、膝をついた
「そのまま大人しくしてて」
響子がホールの中に入ってきた
「助手くん!その銃は一体...」
最もな質問だろう、しかし
「今はそれどころじゃありません、後で説明するのでとりあえず響子さんは舞台の奥を...」
そう言い切る前にテロリストの男が動いたことに気づいた
「くたばれ帝国主義者が!!」
ピンの抜けた手榴弾が目に入る
こちらに飛んできた手榴弾を、つかみ取り投げ返す
起き上がった犯人を蹴り飛ばし落とした手榴弾の上に倒す
走って離れる響子に飛び込み、地面に伏せさせて耳をふさぐ
この間約5秒、手榴弾が爆発した
強い衝撃波とともに足と耳に激痛が走った
「あ”あ”ぁ」
耳が聞こえない
爆発が収まってから、響子が馬乗りになって何かを言ってきてるが何も聞こえない
「すいません響子さん、耳が...!舞台の裏にパソコンがあります!あいつはおそらくそこで爆弾の管理を行っていました!仕掛けられているはずです!おそらく依頼者の家に!」
響子は舞台の裏に走っていった
破片があたったのか左足が激痛で動かない
右足と手を使って立ち上がり左足を引きずりながら、ゆっくりと舞台裏へ向かっていく
聴力が少しずつ回復してきた
「駄目だ!爆弾が停止できない!」響子が嘆く
スマホを取り出し依頼人へ電話をかける
「ストーカーの目的はお前らの家全員だ!爆弾が仕掛けられてる!早く逃げろ!」
依頼人が答える
「は...はい!君!すぐに旦那さまを外に!私がお嬢様を!私達も避難だ!」
依頼人はすぐに察したのだろう、この状況で冷静で迅速な反応は実に助かる
「急げ!」
冷や汗が流れる
「はい!」
通話がつながったまま手伝いである依頼人は走り、令嬢の部屋にたどり着き扉を開けた
「お嬢様、失礼いたします」
依頼人は無言であり、お嬢様と呼ばれる人は電話が遠く何を言ってるのかはっきりとは聞き取れないものの、薄っすらと聞こえてくる内容からおそらく...
窓から彼女を投げ飛ばして避難させてるな、と
その後爆発音が聞こえ電話が切れた
「おい!大丈夫か!」
無事を祈るしかないだろう
外から警察のサイレンの音と警笛が聞こえてくる、警視庁の公安部だろう
「すいません響子さん、支えてもらっていいですか?」
もう足を引きずって歩くのは懲り懲りだ
「大丈夫かい?助手くん」
「左足以外は」
「君...一体何者なんだ、銃の射撃に犯人の制圧...とても普通の探偵の助手じゃない」
「それは…」
説明しようとした時、入口の扉が開き、奥に指示を出している阿礼が見えた
こちらに気付いた阿礼がこちらによってくる
「大丈夫か!救急隊!こっちだ!君も怪我をしているんだろ?私が代わる」
阿礼が俺を支える
「ありがとうございます」
響子が礼をいう
「犯人は爆発四散、巻き込まれて足が逝った」
「先ほど侯爵邸が爆発したが死傷者は居ないそうだ、よくやった、とりあえず病院に行くぞ」
「復帰できて良かったよ、助手くん」
杖を突きながら事務所の前に来た私に対して扉の前で待っていた響子が言う
「なんかギャップ萌えで可愛いね、杖」
「は?可愛くないんですけど?」
「結局君は一体何者なの?」
「まぁ話せば長くなるんですけど、端的に言えば公安の諜報員です」
「ふぅーん」
「探偵の身分は色々都合がいいですし」
「そうだね」
響子は一瞬不機嫌な顔をして、すぐにいつもの僕のことを舐め腐った妙に腹が立つ顔に戻った
事務所を見て
「あの〜響子さん、彼女は?」
僕の視線の先には有名女学校の制服を着た女の子がソファーに座っていた
「入社希望だよ、今面接してるんだ〜」
「何が”今面接してるんだ〜”ですか、僕そんなの聞いてませんよ」
「言ってないからね」
「言ってくださいよ」
「ねぇねぇいいじゃないか〜、もしかして助手くん、嫉妬してr…」
「違いますよ?他に雇うのは全くもって問題ないですが…彼女はまだ女子高生じゃないですか?」
響子と言い合いをしていると座っていた女子高生は少しソワソワしだした
「えーっと、これ〜私お邪魔な感じですかね?」
我慢できなくなったのか、ついに口を開いた
「失礼、僕は三井エト、君の名前は?親御さんはどうしたの?」
そう自己紹介すると彼女は顔色を変えて立ち上がり
「貴方が三井さんなのですね!」
と声を張り上げた
「なぜ僕の名前を?」
「失礼しました、私、西園寺楓と申します」
「西園寺...」
「はい!三井さんが私達を助けてくださったと聞いています!」
「西園寺は?」
「軽傷で、今は別荘で療養中です」
「ならあんたもそうした方が良い、命を狙われる可能性は高い」
「いえ、お父様が”ここへいけ”と...」
「というわけだ」響子が口を挟む
少し考えていると、また事務所の扉が開いた
今度は何なのだろうか、もう少しうんざりしてきたのだが
扉の方へ振り向くと阿礼がいた
「よう、相棒」
「次から次へと...まったく」
一応ifの世界線なので
第二次世界大戦に日本は史実よりも善戦して三国同盟を抜けてアメリカと単独講和します。
国内が破壊されすぎなかったお陰で日本は戦後大躍進、植民地となった各国の独立を認めて東アジアは大東亜共栄圏という比較的結束された共同体となります
その盟主である日本は超大国として世界に君臨することになります
単独講和とはいうものの、戦後大規模な民主化運動で女性参政権は認められましたし、今のイギリスよりもちょっと君主の権限が強いくらいです
こういうわけで、作中には近衛師団や華族が登場しますし、当然貴族院もあります
貴族、近衛兵みたいなロマンを追加したいがゆえに加えた設定ですからご都合主義です
あとこれは後に作中にも書く予定ですが、戦後の大躍進には医療技術も含まれているので、医療だけはバカすごいです、死ななければたいてい助かります
まぁフィクションなんでご都合主義ですよ