神社での思い出
人とはどのような存在だろうか。その一つの定義として社会的な存在というものがある。私が高校に入学してから早1年がたったが、その新たな社会の中でもこれまで以上に様々な考えや魅力を持つ人との出会いを経験した。私の16年間の人生で出会った人物の中からとても印象に残っている人物を一人紹介したい。
それは私が小学2年生のころに会った人物である。今となっては顔も思い出せないし、名前はそもそも知らない。その時私は冬休みの最中、元旦を2日ほど過ぎた日であった。当時同じクラスだった友達2人と一緒に松戸神社という近所にある神社に初詣に行っていた。行列、とは言い難かったが列に並び、いわゆるビリビリ財布からお賽銭に使う小銭を出そうとしていた時であった。後ろにいた女性に「お賽銭なら15円入れるといいよ。」と声をかけられた。その方は古希はとうに超えておられるであろうお方で、卒寿を超えられていてもおかしくはなかったと思う。細身で白い帽子をかぶっていた。私は「お賽銭は5円入れるとご縁がある」というのをどこかで耳にしたことがあったのでそうしようと思って準備していたのだが、「15円」と言われてひどく不思議であったのを覚えている。その方は、ただのクソガキであった私の心など見透かしていたようで、「15円なのは十分ご縁があるようにって意味だよ。」と優しく教えて下さった。「確かにな」ととても納得して、順番が来ると友達と私、そしてその女性の4人で一斉に15円をお賽銭箱に投げ込んだ。私は自分の願いが終わり、目を開いた後に見た女性が長く黙して合掌している姿をいまでもありありと思いだせる。その後私はその方を目にしたことはない。
人は他人から自己イメージ即ちアイデンティティを獲得する以上人とかかわることは必要不可欠だ。今回私が紹介した出会いも「お賽銭は15円入れる」というアイデンティティとして残っている。新たな人との出会いは自分のより良いアイデンティティを獲得する良い機会である。これからも大切にしていきたい。