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第3話

長い間更新できなくて申し訳ありません。

ようやく第3話です。

これからはもう少し更新速度を早めていきたいと思います。


「以上で申し送り終わります」

 申し送りを終えて、響子がカウンターから離れると、師長が近づいてきて目で「ちょっと」と合図をする。頷いて後を付いていくと、師長は休憩室へと入って行った。

「お疲れ様。昨夜もけっこう大変だったわね」

 と苦笑いしながら労を労ってくれる。そんな気持ちがあるのなら、毎回由美の夜勤に自分をペアにするのは止めてくれたらいいのにと思うが、師長である小島はそんなことは一切お構いなしである。

「三枝さん、どう?」

 と問われても答えようがない。毎回由美は同じようなことを仕出かしては響子を悩ませているのだ。

「そうですね。まだ、業務をこなすことだけで手いっぱいで、他のことには気を回す余裕はないようです」

「そのようね。日勤業務を見ていてもそうだから、まして夜勤で他のスタッフがいないとなると、パニックになるんじゃない?」

「ええ、そういうこともありますね」」

 小島が何を言いたいのかわからないので、曖昧に返事をすると、小島はくすりと笑って

「あなたは優しいわね。これが他の人だったらすぐに、もう一緒には夜勤できませんということになるんだろうけど」

 確かに、その気持ちはよくわかる。私だって、できれば一緒に夜勤はしたくないわよと、思っているのだ。しかし、誰かが彼女を一人前にしてやらなければならない。と言って必ずしも響子がしなければならないこともないけれど。

 それより、夜勤明けで疲れているのだから話があるのならさっさと話して欲しいと思う。

「で、師長、何かお話があるんじゃないですか?」

 と、眠い目をしょぼしょぼさせながら訊く。

「ああ、そうね。実は斎藤ナースのことなんだけど」

「斎藤さんがどうかしたんですか?」

「ここのところ体調が悪いようだから受診させたのよ」

「それで?」

「彼女、妊娠してるのよ」

「えっ?妊娠?」

「そうなの」

「まだ独身でしたよね?」

 と訊いてみたが、今時独身で妊娠することは珍しいことではない。ただ、普段の彼女から受ける印象が、未婚の母にそぐわなかったのだ。

「で、相手は誰なんですか?」

「それがねえ、言わないのよ」

「言えない相手ってことですか?」

「それがわからないの。でね、悪いんだけどあなたから訊いてもらえないかしら?」

 げっ!また私?響子は真っ暗な淵に堕ち込んでいくような気がした。

「あの…師長、どうして私ばっかりなんですか?」

 睨みつけながら訊ねる響子の視線を、いとも簡単に跳ねかえして、小島は

「だって、あなたはみんなから信頼されてるから」

 と宣〈のたま〉う。これじゃあまるで、師長自ら「私は信頼されていないのよ~」と公言しているようなものだ。響子は大きなため息をひとつつくと

「それって、今日でなくてもいいですよね?」

 と諦めモード全開で訊く。

「もちろんよ。彼女は今日遅出で昼からでないと来ないから。あなたの都合のいいときに、でも早い目に訊いてみてちょうだい」

「わかりました」

 と立ち上がりかけて、ふと、気が付いてもう一度座り直す。

「斎藤さん、生むつもりなんでしょう?」

「そうらしいわね」

「たしか、山口の出身でしたよね?ご両親にはお知らせしたんですか?」

「それがねえ…」

 と師長にしては珍しく難しい顔をして

「個人情報が邪魔をしてできないのよ」

 と言った。

「個人情報?」

「ええ、彼女は成人しているし、ご両親に話すには本人の許可がいるのよねえ。寮に入ってくれていたら誓約書を交わすから、こちらから報告して、来ていただいてってできるんだけど、彼女は一人暮らしでしょう」

 困ったわあと続けて、わざとらしくこめかみをもむ師長を見て、仕方ないと諦めて

「一度彼女に連絡して話を聞いてみます」

 と立ち上がりながら言った。

「ありがとう。助かるわ」

 途端に嬉しそうに礼を言う小島に、もっとしっかりしてよと心の中で文句を言って休憩室を後にした。


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