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王太子殿下にお譲りします  作者: 蒼あかり
恋を知らない氷の令息(マルクス編)
12/23

12

翌日には体調も戻り、特別何もないまま日は過ぎた。


今日は王妃殿下のお茶会の日。アリーシャが来る日である。

いつもは参加しないアルバートも茶会に参加するらしい。

「どういう風の吹き回し?」と王妃殿下に訝しがられたようだが、「たまには良いではないですか」と、半ば無理矢理に参加したらしい。


この茶会には王太子の妃候補の令嬢を王妃が選抜する意味もあるため、王太子本人であるアルバートが直接参加することはむしろ話が早いわけだ。

だが、本人に何度誘っても是と頷くことはなかった。

突然の参加にバタバタと対応が大変ではあるが、王妃はなかなかご満悦のようではあった。


その日、俺は朝から執務室を出ることはなかった。

朝から茶会の準備と称して執務室を留守にしていたアルバートと顔を合わせずに済むのは気がラクだった。

アルバートの護衛でルドルフもいなかったので、部屋には俺だけ。

仕事も手に付くわけもなく、だらだらと時間を潰していたが、仕事人間には長時間そんなことは土台無理な話で、いつのまにか溜まった仕事をこなしていた。


今日の茶会はサロンで行われるらしい。いつものように窓下の庭園には人影はない。

夕方近くになりそろそろお開きになろうかとする頃、いつもアルバートがそうしているように窓下に目をやる。


夕日に照らされた庭園は、色を失い赤みがかった色彩に覆われていた。


その中に人影がふたつ。少し距離をおくように、でもそれは離れることなくゆっくりと庭園の奥から向かってくる。


誰のものかは一目で理解できる。

自分の主であり親友と、家名のための政略結婚のための婚約者だった。


呼吸が浅くなり、次第に苦しくなる。

窓に寄りかかるようにやっとのことで立っている。

どうなっても良いと覚悟していたはずなのに。冷静ではいられない自分がいる。


破談になった後のことを考えねばと思うのに、何も思い浮かばない。

家のこと、今後の自分の身の振り方、アルバートやアリーシャへの対応、考えねばならないことは山積みなのに何も考えられない。


ぼんやりと二人の影を目で追っていた。


だんだんと近づく影がふいにこちらを見上げる。

俺の心を見透かすように目が合うその瞳は、俺からそらすことはない。

耐えられなくてそらそうとしたのは俺の方だった。

目をさらし空を見上げた後カーテンを閉めようと手にかけたとき、男の手が女の肩に置かれた。


後ろから両肩を掴み、自分に引き込むようにするその姿を見て、俺は、、、、、執務室を飛び出し走り出していた。



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