物語の始まり
続きを書きました。どのようにして混沌の生命が現代に繋がるのかがこの前日譚でわかります。そしてこれはまだ前日譚なので人に名前をつけていません。話を読み進めていくとどんどん背景がわかってくるのでその情景を想像しながら読んでください。
そして地球、人間の基礎が出来上がっていた中世の頃。人間特有の知性を用いて、基礎能力に歴然の差がある動物に対して狩猟を行っていた時代。まだその頃は重火器などの圧倒的な科学力がなく、弓や剣で戦っていた。引き金を引けば生き物を殺せてしまうようなモノはまだ人間の間にはなかった。
そう、人間の間には。
そして視点は人間の世界に入る。
そこには名も語るべきもない一人の少年がいた。彼は小さい頃から好奇心旺盛な子供だった。それ故に何度も危ない目にあっていた。もちろんそのことを親が看過するはずもなく、よく叱られていた。少年はずっと世界を知りたいと言う欲に駆り立てられていた。しかし、それを親によって抑制するように言われてしまったため彼は時が訪れるまで、その欲を押さえ込んで育って行った。そうして育って行った少年は気がつくと12差になっていた。彼は元々は好奇心が旺盛な子供だったので、それを押さえ込むために本による知識でその欲を満たそうとした。それがいい方向へころがったのか少年は賢く育った。さらに少年は物事への理解が早く、思考を深く速く行うことができた。
そう、彼は天才と言われるようなヒトだった。
12歳にして思考力はとうに二十歳のそれをを超えていただろう。
そして前日譚はそんな彼の日常から始まる。
彼の1日の生活は現代の我々が見ると、とても質素なものだった。
朝起きて本によって知識を蓄え、剣の朝稽古をする。剣の稽古が終わったら、昼食を食べる。食べ終わり次第図書館に赴きまた読書をした。夕方になる頃まで本を読んだなら、今度は弓の稽古に入る。それが終わったら晩飯を食べて寝る。 と言うものだった。これをほぼ毎日行ってきた。何も変わることなく。
この時代は剣や弓による役職が多かったためこのように親に毎日稽古をさせられるのだ。
ある日の昼食を食べていた時、いつも一緒に食べている友が一つの噂話をしだした。
「なあ、町外れにある洞窟の噂。聞いたことあるか? ねえよな。お前はいつも一人だしな。噂を話してくれる友達なんて俺くらいしかいないか」
「余計なお世話だ」
彼はそう突き放すように言った。しかし、心のうちでは物凄く気になっていた。
「そうかそうか、でもまあ元は好奇心旺盛なお前だ。心の内は気になってるんだろ?」
「チッ、言うな」
そう、この友は彼が好奇心旺盛なことを知っている数少ない人のうちの一人なのだ。この友とは昔、よく一緒に冒険に出かけていた。ほとんどが彼の好奇心によって巻き込まれたことなのだが。
そうして友は話を続けた。
「そんでよ、その噂なんだけどよ。その洞窟に出るって話だぜ。化け物が。」
「なんだよその化け物って、曖昧すぎないか?」
「そりゃあそうだろうなぁ。だって生きて帰ってきたやつが一人しかいなかったんだから。」
「一人?そんな化け物に遭遇したなら撤退の作戦を立てて数人は生きて帰って来れるはずじゃないのか?」
「それがよ、洞窟に入った途端に何者からか襲われてそいつ以外瞬殺だったらしいぞ。」
「そりゃあすごいな。でもそんな強烈なやつなら姿くらいは見えてたんじゃないか?」
「んにゃ、そう言うこっちゃねえ。姿ははっきりと見えてたらしいんだ。それでも言葉に表せなかったんだ。」
「は?なんで?」
「それはな、その化け物が見るたびに姿形を変えてたんだと。ある時は人間の姿になって、目の前で殺されたやつの姿にもなったらしい。そして次の瞬間には熊、蛇、虎と変わっていったらしい。」
「そんなバカな話があるわけないだろう?ただの見間違えだ。見間違え。」
そう言って会話を終わろうとして、その場から立って離れようとした彼を引き止めるように一つの言葉が飛んできた。
「そいつは人の姿でとどまったと思ったら生き残った一人に話しかけて、意思疎通をしようとしたらしい。」
そう言われると彼は押しとどめていた好奇心が何者かによって解放されたよな感覚に陥った。
「っ!・・・・・はあずっと忘れてたのにな。おもしれぇ。そこに行ってみようぜ。」
そう彼は不敵に笑った。友は何かに喜ぶような顔をして言葉を返した。
「おう!」
読んでいただいてありがとうございました。もっと先の話になるかもしれませんがいつかは彼の名前を明かしたいと思っています。考察なども少しして見ると面白いかもしれませんね。