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縁が紡ぐ異世界譚  作者: 龍乃 響
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第97話

 俺達は戦後処理には関わりが無いので、そのまま村に戻って来た。

 勲功に伴う褒章についても後日の為、王都に留まる理由も無かったのだ。

 長旅を終えて帰って来た俺は、やっと自分の部屋でのんびりとする事が出来た。流石に戦争は肉体的にも精神的にも消耗する。それに竜人体で全力を出し続けたのも理由なのか、身体が悲鳴を上げていた。

 なので戻ってからの数日は、のんびりとさせて貰う事にした。当然、頑張った皆にもしっかり休暇を与える。

 だが結局アルトは直ぐに普段通りの執務を始め、シアンも戦後の雑務を始めた。これは性格によるものだろう。

 結局、正教国との戦争もグランダルとの戦争も、転移者が関わっていた。恩寵にもよるのだろうが、この世界に与える影響は大きいようだ。

 これで王国内に5名、死亡が2名、残りは5名だ。今後もこの世界で関わって行くのだろうか。俺の恩寵に引き寄せられる可能性もあるだろう。

 そんな事を考えながら天井を見上げていると、眠気が襲って来た。折角の休みだ、昼寝でもさせて貰おう。

 そして間を置かずに、俺は眠りに付いた。


「…さて、今更だけど私達はユートの妻になったわ。なので今日は第1回妻会議を開催します」

「わー」

「…面子を見れば予想は付きましたが、これ定例ですか?」

 私は思わず口に出しましたが、アルト様は構わず話を進めます。

「まず最初に、夜の順番を決めるわ。私、姉様、モエミの順番ね。今日はユートも疲れていたみたいだから、明日から開始よ」

「…子作り、妻の役目」

 侑人様は貴族なので、後継ぎを残すのが大事なのは判るのですが、毎日では大変なのではないでしょうか。

 そんな私の表情を読み取ったのか、アルト様が続けます。

「ちゃんとモエミの次には1人の日を設けるわ。ユートは若いから大丈夫でしょう」

 …此処に居る全員、侑人様より若いのですが。まあ今更でしょうか。

「さて次ね。側室の受入れについてよ」

「え、誰か充てがあるんですか?」

「今は無いわ。でも今後、ユートと懇意になる者も居るかも知れない。その時の事を話しておきたいのよ」

「…受け入れるかどうか?」

「そう。私は受け入れるべきだと考えるわ。勿論私にだって独占欲はある。でも、それでも子を残す事の方が大事よ」

「私も…別にいい」

 2人はあっさりと側室を認めてしまいました。私は…気持ちの整理がつきません。考えるともやもやします。

「モエミは一夫一妻が常識だもの、悩むのは仕方無いわ。でも今居るこの国の貴族は一夫多妻が普通なの。直ぐじゃないから、徐々に受け入れなさい」

「…はい」

 私は渋々頷きました。

「さて、次は側室候補の選定よ。…私はカエデが最有力候補ね」

「私は…ヴァイのお姉さんが怪しい」

「ああ、剣の師匠だものね。修行中は同棲していたようだし、要注意ね」

 え、これは私も誰か名前を挙げる流れでしょうか。

「モエミはどう?誰か居る?」

 案の定問われたので、私は正直に答えます。

「えっと、最近リューイさんの侑人様を見る目が変わった気がします。尊敬と憧憬って感じでしょうか。無関心を装っているので、余計に気になります」

「ああ、戦争での活躍を間近で見たからかしらね。確かに変わった感じはするわ。…女性趣味で無ければ良いのだけど」

 そうです、戦争中の侑人様はずっと竜人体でした。もしあの姿に憧れているのだとしたら、ちょっと意味合いが変わるかも知れません。

「…それ位かしら。ユートは恩寵によって出会いが生まれるから、今後も候補は増えると思うけどね」

「本気で好きなら、構わない」

「そうね。まあ本気になれば、私達の誰かに相談に来るでしょう。その時には臨時会議を行ないましょうか」

 そう言えば、私もそんな感じで受け入れて貰えたのでした。ならばもし同じ気持ちの人が居るなら、助けになってあげたいと思います。

「じゃあ最後の議題ね。…私はクリミル伯爵家の後継ぎだから姓は変えないわ。でも2人はちゃんとツムギハラ姓を名乗りなさい」

「…判った」

「はい。…でも、名乗る機会ってあるのですか?」

「此処じゃあ殆ど無いわね。王都ならお茶会や舞踏会で名乗る機会はあるけど、精々貴族の来客があった時くらいかしら」

 そうですか。なら自己紹介の練習は要らなそうです。

「あと、私が子供を生めなかった時の事も言っておくわ。その場合、1人目はツムギハラ家、2人目はクリミル家の跡取りとするわ。自分の子供が別の家の子になるけど、それだけは覚悟しておいて」

「…大丈夫。私が生めばクリミル家」

「そうね。それが次善策よ。だから頑張って頂戴」

「頑張るって、子作りをですよね。…何を頑張れば良いのでしょうか」

 私は思わず疑問を呟きます。

「あら、扇情的な寝間着を纏うとか、囁きや仕草でその気にさせるとか、色々あるわ。要はユートを飽きさせない事ね」

 いきなりハードルの高い意見です。それを言っているのが一番年下のアルト様だというのも、不思議な感じがします。

 まだ一度しか身体を重ねていない私には、少し早い気がします。…もう少し慣れたら考えましょう。

「…こんな感じかしら。じゃあ今日の会議はこれで終わりね。次の開催時にはまた私が招集するわ」

「…おつかれ」

「お、お疲れ様です」


 そうして、私達は会議を終え解散しました。

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