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縁が紡ぐ異世界譚  作者: 龍乃 響
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第76話

 2人の特訓を始めて既に数日が経過した。だが部屋の外では、未だ1刻も経過していないだろう。

 萌美は充分に慣れて来たので、今は魔物では無く俺と手合わせをしている。

 メイスは振りの速度は遅いが、遠心力と重量により威力が大きい。なので俺は回避に専念し、萌美には無理の無い最適な振りを身に付けて貰う事にした。

 そして、アルトとの訓練と同様に隙があれば随時指摘して行く。特にメイスの大振りによる隙は致命的だ。細かい振りでも威力は充分あるので、それを叩き込んで行く。

 ふと横を見やると、ファルナが3体のレッサーデーモンに苦戦している。小柄とは言え竜なのでリーチは勝っているのだが、如何せん攻撃が単調だ。手を振り下ろすか真横に薙ぐか、の2択しか無い。

「ええいっ、近寄るな無礼者がー!」

 そう喚きながら手を振り下ろす。だが目測を誤り懐に入り込まれる。そしてレッサーデーモンから繰り出される両手の連撃。ファルナは腹部に直撃を受け、大きく仰け反った。

「ぐほあっ」

 響く悲鳴。止む無くバランタインさんがまた指を鳴らし、3体のレッサーデーモンが消える。

「…想像以上に学習せんな。もっと頭を使え」

 辛辣なバランタインさんの言葉に、ファルナはそっぽを向いた。

「魔法を使わせるのじゃー!倒せれば一緒じゃろう?」

 接近戦に不向き、と言うよりは絶望的だ。敢えて強い魔物にして危機感を煽ったが、効果無しだ。自ら固定砲台になるつもりか。

 これは本格的に対策を考える必要がありそうだ。俺は取り敢えず、シャルトーさんを呼んで来た。

 同じ竜なら、接近戦の戦い方を熟知しているのでは、との期待からだった。

 だが、その期待は大きく外れる事になった。

「接近戦での戦い方ですか?手で殴るか、爪で切り裂きます」

 其処に工夫や駆け引きは無いのだろうか。どうやら魔物寄りの戦い方のようだ。

 まあ折角呼んだので、シャルトーさんの戦い方を見せて貰う。

 相手は先程のファルナと同じく、レッサーデーモンが3体だ。

「はあっ!」

 シャルトーさんは一気に駆け寄り、両手の爪を一閃。同時に2体を切り裂く。そして残りの1体を右手で上からぐしゃっ、と潰した。

 あっと言う間に倒してしまった。だがこれで判った事がある。

「ファルナは…そもそも身体能力が無さ過ぎだな」

「頭脳労働専門だからの。当然じゃ」

 ファルナが誇らしげに言う。絶対頭脳も使っていないと思うのだが。

 俺はバランタインさんに思った事を告げる。

「魔法を使わせてでもレベルを上げさせて、基礎能力を上げる方が早くないですか?」

「…そうだな。流石に此処までとは思わなかったわ。仕方無い、魔法を使って構わぬ。どんどん魔物を倒せ」

「おぉ、待遇改善じゃな。良し、任せておけ!」

「100日程費やせば、マシにはなるだろうて」

「お?100日じゃと?それは流石に長過ぎ…」

 そこで俺は手をぱんと叩き、皆に言う。

「それじゃ邪魔にならないように、俺達は一度部屋から出ようか」

 そう言い、バランタインさんとファルナを残して部屋を出る。

 直後に何か叫び声が聞こえたような気がするが、きっと気のせいだろう。


 100日と言う事は、こちら側では10刻だ。暫く掛かるので、アイリさんに頼んで一泊させて貰おう。

 居間に行くと、丁度アイリさんとアンバーさんが話をしている所だった。

「アイリさん、暫く掛かるようなので、今日は泊めて貰えますか?」

「あら、良いわよ。賑やかなのは嬉しいわ」

 快諾して貰えたので、一安心だ。後は待つだけだが、途中で様子を見るくらいはしよう。そうしないとファルナは拗ねそうだ。

 そう考えていると、アイリさんが言った。

「そうだ、聞いたわよ。アンバーちゃんと結婚したんですってね。おめでとう」

「あ、有難う御座います。実際には未だ婚約ですが」

「でも夫婦らしい事を全然してないそうじゃない。…今から席を外す?」

「…そんな状況を作られて、何をしろと?」

 流石にそんな中でイチャイチャ出来る筈も無い。と思ったら、アンバーさんが呟いた。

「…子作り?」

「何故疑問形?と言うか無茶言わないで下さい」

 アンバーさんは子作りネタを何時まで引っ張るのだろうか。


 暫くして、俺は様子を見にバランタインさんの部屋に入った。すると、ファルナの声が響く。

「ふはははは!!水刃螺旋陣カッター・スパイラル!」

 無数の水の刃がイビルデーモンの群れを切り裂き、血飛沫が部屋中に舞う。

「そして止めじゃ!氷結連槍陣フリーズ・ファランクス!」

 残った数体が氷の槍に貫かれ、果てる。

「くはははは!水竜王の力、思い知ったか魔物共よ!」

 その言い草は、最早王では無く魔王だった。

「くっ、手遅れだったか…」

 その変わり果てた姿に、俺は唇を噛み締める。もっと早く来てやれれば…。

「おい、どういう意味じゃ!?儂は正常且つ冷静沈着じゃぞ!?敬え!」


 ファルナ弄りは程々にして、俺は様子を伺う事にした。

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