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縁が紡ぐ異世界譚  作者: 龍乃 響
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第116話

 翌朝、村に戻った俺達は村長に結果を報告し、併せて冒険者ギルドの場所を確認した。

 するとこの村から馬車で2日程の所にある街を紹介されたので、そちらに向かう事にする。

 宿を引き払い、澪と合流。村人総出で見送りをされながら出発をした。

 澪は寂しそうだったが、この世界に来てからの全てだったのだから当然だろう。

 さて、ルートは街道を真っ直ぐ進むだけなので迷う心配は無い。丁度中間地点にも宿場があるので、野営をしなくて済むのは助かる。

 ダンジョン攻略中より行なっている澪の身体強化訓練は、今の所順調だ。徐々にだが魔力の渦を維持出来るようになって来た。

 後は魔力が続く限り身体強化を維持する事で、制御力向上と魔力増加に繋がる。そうすれば属性魔法も扱えるようになるだろう。

 道中では魔物や夜盗との遭遇は全く無かった。2日間なので何とも言えないが、そこそこ治安は良いのだろうか。

 そして村長に教えられたロルートの街に到着する。見た感じ、街としては小規模な位置付けだろう。

 街に入ると、王国程では無いが冒険者をちらほら見掛ける。やはり国による差はあるようだ。

 入口の衛兵に聞いた通りに道を進み、冒険者ギルドに到着する。デルムの街のギルドよりも少し小さい。

 受付に行き、以前にスタウトさんから貰った推薦状を真似て、出発前に俺が書いた推薦状を出す。

「私、ユート=ツムギハラと申します。こちらの澪を冒険者として推薦します」

 そう言い、併せて冒険者証も見せる。受付は納得してくれたようだ。

 だが若干困ったような表情で、受付が口を開く。

「では早速試験を、と言いたいのですが…。現在、試験を行なえるA級以上の冒険者が居りません。ですので、ユート様にてご対応頂けませんか?」

「ん?推薦者が試験を行なっても問題無いのですか?」

「はい。と言うか、此処のギルドは小規模でして…。待っていたら試験を何時行なえるか判ったものではありませんので」

「そうですか、では私が試験を行ないます。訓練場はどちらですか?」

「ご案内します。こちらです」

 そう言い歩き始める受付の後を追う。

 試験場に到着し、俺は木刀を手にする。そして澪には訓練用の槍を渡す。

「では始めます。宜しいですか?」

 俺がそう呼び掛けると、受付が返事をした。

「はい。こちらの副マスターと見届けさせて頂きます」

 受付の隣には、事務仕事が専門という風の中年男性が立っていた。元冒険者では無いのだろう。

 俺は木刀を構え、澪に顔を向ける。

「まずは攻撃を受けるから、好きなように打ち込んで来てくれ」

「判った。宜しく頼む」

 澪はそう答え、槍を構える。

 そして繰り出される連続の突き。訓練用の槍でも恩寵の効果があるかが懸念だったが、どうやら問題無いようだ。

 俺はそれを全て上半身の動きで躱す。耳元を過ぎる風切り音は鋭い。

 すると攻撃に振り抜きや突き上げなど、バリエーションが増える。どれも一流と呼んで差し支えない動きだ。

 俺は時に避け、時に木刀で受け流す。やはり速度と鋭さは素晴らしいが、一撃に込められている力は弱い。実際に受けていないギルドの人には判らないだろうが。

 此処までで既に、一般人では目で追うのも難しい攻防だ。これでも充分だろうが、訓練がてら手を加えよう。

「次からは合間に反撃する。好きなように受けてみろ」

「応っ!」

 アルトの剣術指南と同様に、攻撃の隙を突いて反撃をしてみる。すると攻撃と同様の精度で受け、弾く。

 だが俺が本気で打ち込んだら防ぎ切れないのは目に見えているので、加減しつつ攻防のやり取りを行なう。

 そして不慣れな身体強化も相まって疲れが見えて来た所で、強めに反撃を加える。

 すると槍は澪の手から落ち、片膝を付いた。

 俺は木刀の切っ先を澪に向け、宣言する。

「只今の試験により、この者はC級冒険者の資格有りと私は判断する!ギルドの者よ、如何か?」

「異論は御座いません。試験は合格とさせて頂きます」

 副マスターがそう答える。俺はほっと一息つく。澪も安心した表情を浮かべている。


 澪の冒険者証が発行されるまでの間に、先日のダンジョンについての報告をしておく。

 話を聞くと、同様に国境近くで魔物の大量発生があったようだ。今は主力がそちらに向かっているのも、試験を行なえる者が居なかった理由だったらしい。

 ついでに4属性の魔石を購入し、澪に持たせる。すると土属性の石が反応した。

「扱える属性は土だな。お金が溜まったら、土属性の魔法書を買って勉強すると良いぞ」

「そうか、冒険に役立つのなら是非そうさせて貰おう」

 そして少しして澪の冒険者証が発行された。いつもの説明もされている。

 これで澪も立派な冒険者だ。今後は自力で頑張って行くだろう。

「世話になった。これで今後も頑張って行ける。有難う」

「いや、元気にやって行けるなら問題無いさ」

「…貴方の居場所を教えて貰えないか?いつか自分が強くなった時に、是非再戦したい」

「ああ。正教国を東に抜けた、アーシュタル王国の最初の村だ。近辺で俺かアルトって名前を出せば、教えて貰える筈だ」

「判った。それでは侑人、それに楓。また会おう」

 澪はそう言い、早速ギルドの依頼板を見に行った。

 これで今回の遠征も無事終了した。あの調子ならもう手助けは不要だろう。


 俺はそんな満足感と共に、帰路に着いた。

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