表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁が紡ぐ異世界譚  作者: 龍乃 響
115/176

第114話

 此処に治癒魔法を使える者は居ないので、俺が応急処置として澪に魔力を流しておく。これで問題無いだろう。

 落ち着いた所で、俺は澪に告げた。

「一定以上の実力差があると、恩寵でも対処出来なくなるな。何より、身体強化が使えないのには驚いた」

「…身体強化?」

「ああ。魔力を体内に循環させて、身体能力を強化する方法だ。遠近問わず、最初に身に付けるべき物だな」

「そんな物が…。だが村の者は、誰も言ってくれなかったぞ?」

「それでも恩寵で充分に戦えていたから、既に身に付けていると思われたんだろう」

「…それは簡単に習得可能なのか?」

「難しくは無いが、流石に5分10分では無理だぞ」

「構わない。取り敢えず教えてくれ」

 そう言われた俺はかつて教わった通りに、まずは魔力を感知する所から教えた。


 さて、澪には魔力感知から循環までを集中して覚えて貰い、魔物の相手は俺と楓で対処する事とした。

 弱い敵はそのまま楓に任せ、強めの敵は俺が阻害魔法を掛ける。

 俺の場合は竜玉により最初から魔力量が大きく、その感知も容易だったようだ。澪は大分苦戦している。そもそも魔力量自体が少ないのかも知れない。

 そして階段を降り4層へ。

 通路の先から四足歩行のナマズが近付いて来る。人間と同程度の大きさがあり、気持ち悪い。

 などと考えていると、全身に雷を走らせ接近して来た。電気ナマズか。

 接近戦は感電の恐れがあるので、魔法で対処する。水棲寄りになると、鰐などと違い防御力が低いので倒し易い。動きも俊敏では無い。

 俺と楓で魔物を倒した頃、やっと澪が魔力を感知出来たようだ。なので次のステップである、魔力を渦状に広げる訓練に入る。

 其処からは指導を楓に任せる。比較的容易に覚えてしまった俺よりも、実体験を反映出来るだろう。

 そうして魔物を倒しつつ進んで行き、また階段を降り5層へ。

 其処は広い空洞になっており、周囲には地底湖が広がっていた。

 水面の上に通路が伸び、その先には広めの地面がある。其処に近付くと、見覚えのある機械と人間の死体があった。機械はグランダルの魔素増幅装置だろう。

 ならば死体は実験成功体か。魔物に倒されたのだろうが、あの強さで簡単にやられるだろうか。

 可能性としては、実験成功体を上回る魔物…変異体の出現の可能性が大きい。

 ならば此処はもう、その敵の領域か。すると水面が波立ち、巨体が姿を現す。

 出現したのは亀の魔物だ。だが大きさが異常だ。25メートルのプール位の大きさがある。これが変異体で間違い無いだろう。

「楓と澪は階段まで下がれ!」

 俺は2人に呼び掛け、カタナを抜く。

 敵の動きは大きさ通りに鈍重だが、巨体はそれだけで攻撃が通り難い。

 まずは竜人体を発動。そして敵の注意を2人に向けさせないため、精霊を2体召喚する。

 俺は敵の注意が精霊に向いている内に、背後に回り込む。

 足や尻尾の皮は分厚そうで、背中の甲羅も硬そうだ。幾らカタナを振っても致命傷は与えられないだろう。

 ならばと俺は魔法を放つ。

獄炎轟爆砕陣ヘル・バースト!」

 敵の巨体を炎が包み込み、爆発する。だが爆風が消えた後には、甲羅に身を隠した姿があった。

 動き自体は遅いが、魔法に対する反応が早い。ならば急所を狙うしか無さそうだ。

 俺は身体強化の魔力を全開にし、甲羅の先端に飛び乗る。そして引っ込めていた頭が出て来た所を狙う。

 しかし甲高い音と共にカタナが弾かれる。皮膚は斬ったが、頭蓋に弾かれたようだ。

 ならばと首を狙おうとするが、敵は急に頭を持ち上げ、俺を打ち付けようとする。

 咄嗟に後方に躱すと、敵は精霊を無視して俺の方を向く。精霊には倒されないと踏んだか。

 亀は腹部も硬い殻で覆われている筈だ。ならば、やはり首を狙うしか無さそうだ。

 俺は甲羅から降り、正面に回り込む。敵と正対する形だ。

轟雷風旋陣ヴォルテック・ストーム!」

 牽制で魔法を放ち、同時に間合いを詰める。

 予想通り再度甲羅に身を隠しているので、首元の下に潜り込む。

 そして頭を出したタイミングでカタナを横に薙ぐ。剣筋は首を大きく切り裂き、血が噴き出る。

 だが敵は動きを止めず、前足で何度も踏み付けて来る。躱す度にその重量で地面が揺れる。

 この巨体から血液量を想像すると、暫くは活動し続けるだろう。

 ならば首を落とす位に斬り付けるしか無い。

遅速鎖スロウ・チェイン!」

 動きを遅くする時空魔法を放ち、再度下に潜り込む。

 そして首元の切り口、その更に奥を何度も斬り付ける。首をまた引っ込める間に、数十回の斬撃を加える。

 首を引っ込めた所から、多量の血が滝のように流れ出る。

 俺は其処に向け、魔法を放つ。

獄炎螺旋撃陣ヘル・スパイラル!」

 炎の螺旋が流れ出る血を蒸発させ、頭部に熱を巡らす。

 たまらず敵は頭を出すが、その直前に俺はその上へと飛んでいた。

 そのまま落下しながら、首の上部に斬撃を加える。すると頭がその重さに耐えきれず、地面へと落下した。そしてその巨体が地に伏す。


 俺は敵が再度動き出さない事を確認し、精霊を帰還させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ