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しっぽなき猫  作者: 風来星楽
しっぽなき猫の冒険
5/7

冒険 四日目

 僕は、目を覚ました。そして、優しいおじさんの元に戻ると決意した。あのおじさんは、僕を忘れていないはず。エサだってあるはず。猫や犬を傷つける人じゃないはず。僕だってあの人をそんな人だとは思いたくない。あのおじさんは、僕のしっぽを奪い取る、そんな人じゃない。“あの人”と違って…。

 僕は、昨日通った道を戻る。早く会いたい、早く。空は暗い、もう少しで太陽が昇りそうだ。風も強い。おじさんの元に行きたい。抱っこしてほしい。“かわいい”と言ってほしい。そう思ったとき、僕の前に怖そうな猫たちが横断していった。怖くなった。足も動かない。でも、おじさんに会いたい。そんな気持ちが僕を動かそうとする。でも、動かない。ボス的な猫が僕の存在に気付いた。その猫は、ギャーギャーと鳴いている。怖い、怖い、怖いとしか思えなくなった。猫にさえも嫌われている。僕は、このとき生きている意味さえも失いかけた。足が動かせない。僕はそこで倒れてしまった。


                      ✻


 私は、仕事場に向かった。私の仕事場は、動物保護センターである。毎日、朝と夕方に野良猫・犬たちにエサをあげたり、病気の猫・犬を治療したり、里親を見つけてあげたりしている。

 「今日は戻ってくるかな、タマ。]と私はつぶやいた。

「タマって?」と神崎さんは言った。

「私がずっと前に飼っていた猫だよ。しっぽを切る必要があって、手術したんだ。外出先で逃げて行ってしまって、車にひかれて河川敷にとんでいってしまって探せなくなったんだ。でも、ここに帰ってきたんだ、多分。タマがそうであるならば…」

 話し終えると、私は、ご飯を食べて、猫・犬のエサを外に出した。そこから夕方までははっきり言ってやることがない。動物が何かに遭ったという連絡がない限り、仕事はない。だから、山の上の小屋に行っている。そこでたまたまタマにあった。それからのこと、このセンターのエサをもって、小屋に行き、タマにエサをあげていた。

 私が小屋に向かおうとしたその時だった。大声でこちらに叫んで、向かってくる人がいた。

「道路で、猫が…。猫が倒れています!」と言っている。

私たちは、その人の案内でその現場に向かった。私は、びっくりした。そこに倒れていたのは、タマだった。私は、その場で、崩れ落ちた。そして、自然と涙があふれてきた。

「タマ…ごめんな、助けてやれなくて…、本当にごめん…」と叫んでいた。

タマは、センターに運ばれた。すると、タマは、意識を取り戻した。ただ、体には、傷があった。ほかの猫にやられたのであろうか。私は、タマを治療した。すると、みるみる元気になっていった。私たちは、タマをどうするか、話し合った。センター内の職員の多くが、数日間ここで保護して、その後、里親を探すということに賛成していた。でも、私は、反対した。もし、里親が決まって、タマを引き取ったあと、タマをまた捨てたら…。タマがまた悲しんでしまう。私は、タマをこれ以上悲しませたくなかった。だから、「タマは、タマは、私が引き取る」と言い張った。でも、私の家は、猫を飼える環境ではなかった。だから、飼える環境になるまでは、センターで保護してもらうことにした。これで、タマに毎日会える。私は、“タマを絶対に幸せにしてやる”と決意した。そして、私はタマに

「これからはずっと、死ぬまでいような」と言った。

タマは、答えるように、ニャーニャーと鳴いていた。



僕は、幸せな日々を送れるようになった。あの優しいおじさんとずっと一緒にいられるんだ。一度失った希望も戻ってきたように僕は、元気になった。エサを食べ、水を飲み、おじさんとよく遊んだ。とっても楽しい。うれしい。幸せだ。僕の冒険は、もうここで終わったんだ。家から見た空は、青く透き通っていた。雲一つない空だった。







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