冒険 二日目
僕は、まだ日も昇っていないときに、目を覚ました。もうこのころには、本来の目的を忘れていた。今はもう、あの優しい優しいおじさんのことで頭がいっぱいで他の事は考えられなくなってしまった。
僕は、昨日の場所へ向かった。そこにはおじさんが待っていた。手には魚を持っていた。おじさんは、「かわいいね」とやっぱり行ってくれる。もうこのおじさんに対する恐怖心は消えていた。ここには、他の猫は見かけない。僕にとってここは幸せの楽園だった。
僕が魚を食べ始めると、おじさんは、「どんな名前にしようか。」とつぶやいた。僕は、泣きかけた。僕に名前を付けてくれるなんて思わなかった。「じゃ、……タマにしよう」とおじさんは言った。僕は本当にうれしかった。正直どんな名前でもよかった。今思い返せば、“あの家族”は名前なんて付けてくれなかった。“あの人”は傷つけるだけ傷つけておいてかわいがってなんかくれなかった。だから、あいつは、許せない。このおじさんは運命の人だったのかもしれない、僕にとって。
僕は喉が渇いたので、小川に行った。だけど、子供たちが遊んでいて近づくことができなかった。やっぱり人間は怖い。僕は、飲めずにあの場所に戻っていった。もうその場所には、おじさんはいなかった。でも、そこには水が置いてあった。一口、二口と飲んだ。いないはずのおじさんの声が聞こえてきた、“よく飲むね”と。振り返っても、誰もいなかった。一滴残らず飲み干した。これでおじさんも喜んでくれるだろう…。もう“あの家族”“あの人”のことは完全に頭の中から消え去っていた。今は寒くない、山がどんなに寒くても、あのおじさんの温かい気持ちが僕を包んでくれているから……。
そして、僕は、洞穴に戻って、眠りについた。“明日が楽しみだと思いながら…。