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47.2回生


ここからエピソード7になります!


 月日は流れ──私はあっという間に2回生になりました。


 つい先日入学してデビュタントを終えたと思っていたのですが…… 1年経つのは早いものですね。


 私も13歳になり、今年は14歳になります。

 立派に成長して、どんどん女の子らしい体つきに変わってきました。見てください、鏡の中の女の子が私に笑いかけてきてくれるんですよ? 素晴らしいと思いません?

 鏡の前で微笑む自分の姿を眺めるのが、私にとってかけがえのない大切で幸せな時間です。


「……お嬢様、なに鏡を見てニヤニヤしているんですか?」


 このように無粋な子もいますが、軽くお仕置きをして黙らせます。


「あいたたたたっ! い、いたいですお嬢様許してくださいいぃぃいぃっ!」

「でしたらその減らず口を閉じることですね、ネビュラちゃん」

「ひいぃぃぃ、分かりましたぁぁぁあ!」


 あ、なんだかネビュラちゃんで遊ぶのは楽しいですね。ちょっとスッキリしました。



 そういえばつい先日、3回生だったカロッテリーナやエトランゼたちが卒業していきました。

 卒業式で涙を流しながら答辞を述べたカロッテリーナ様は、それはもう大変お美しかったですね。さすがはイケメン男子シーモアの実姉です。

 カロッテリーナ様とはこの1年でいろいろと接する機会も多く、大変目の保養になりました。卒業後は帝国の第一皇子のもとに嫁ぐ予定なのだとか。すると将来は皇后なんですかね。


 一方、エトランゼとはあまり接点がありませんでした。この1年逃げるようにして距離を置いたというのが主な理由なのですが……あ、これ避けてたんですかね?

 幸いにもデビュタント以降は接する機会もなかったので助かりました。私、女の子は好きなんですが、聖女だけはどうも苦手なんですよ。


「……結局あなたが聖女の資格があったのか、ワタクシにもわからなかったわ」

「私には聖女の資格などありませんよ」

「……誰もが好んで聖女になりたがると思っていたんですけど、あなたは違うのかしらね。ワタクシは…………いえ、なんでもありませんわ」


 それ以上なにも言うことなく、エトランゼは卒業していきました。

 卒業後は聖女として世界中を旅して回るのだそうです。私も卒業後は旅立つ予定ですので、なるべく彼女とは関わらないようにしたいですね。



 私のお姉様メントーレであるキャメロンは、3回生となりマジカルコースの最上級に進みました。

 ダンジョンでのトレーニングを経て魔法の力に目覚めた彼女の実力は、学園の中でも特出したレベルに達していたのです。


 またキャメロンは、『柔らかくする能力ギフト』を駆使してわずか1ヶ月で劇的なダイエットに成功した人物として有名になり、今では多くの女子生徒にダイエット指南を行っています。

 あ、もちろんダンジョンのことは秘密にしていますよ? なんでもギフトを使って体脂肪を柔らかくして分解しやすくすることで、脂肪燃焼効果を向上させる独自の技を編み出したのだとか。


 おかげですっかり忙しくなってしまった結果、あのマシュマロ双丘をなかなかタッチできなくなったのは無念で仕方ありません。それでも時々はあの墓地で一緒にランチを食べたりしています。ダンジョンにはもう潜っていませんけどね。



 さて私の話に戻りますが、この1年何をしていたのかというと……ちょっとしたマイブームにハマっていました。

 マイブーム、それは──うら若き乙女たちの才能を開花させることです。


 やり方は簡単です。

 まず何か悩みを抱えてふさぎ込んでいるような雰囲気の子に声をかけて、抱えている悩みを聞き出します。その上で、様々な手を尽くしてその悩みを解決していくのです。


 これにはメリットがたくさんあります。

 まず、合法的に女の子と仲良くなれます。しかも全く嫌がられません。

 次に、魔力が増えます。アレクの時にも判明していたのですが、誰かの才能を開花させると魔力が劇的に増えるのです。その量は、治癒を施した場合の増加量を上回る場合があります。アレクやキャメロンの場合は一発で1000近くの魔力が増えましたからね。

 また、覚醒させたときにどんなアンデッドの素質が出るのか、まるで一発大当たりのクジを引く時のように毎回ワクワクするのです。


 私がキャメロンと一緒に検証を行った子たちは、平均してA〜Cランクの素体になりました。Sランクまで伸びた子はいませんでしたが、なかなかの成果といえるでしょう。



 また、覚醒についてもいろいろとわかってきました。

 大きなポイントは、必ずしもすべての子が覚醒するわけではない、ということです。


 現時点で分かり始めていることとしては、最初からそれなりの実力を発揮している子に関してはほとんど変化がなく、逆にキャメロンのように比較的落ちこぼれの評価を受けている子の方が大きく伸びる傾向にあるということです。


 キャメロンほどの劇的な成長を見せる子はさすがにいませんが、今後良質なアンデッド素体を見つけるにあたり、なかなか良い研究ができたと考えております。


 ただ、良いことばかりではありません。

 落ち込んでそうな子に声をかけまくった結果、最近では落ち込んだふりをして私と話したがる子が増えた気がするのです。

 ……それはそれで悪くはないのですが、もともとコミュ障の私は普通に会話することが下手なので毎回会話に苦労してしまいます。おかげで素体候補に声をかけづらくなり、研究の方が完全に滞ってしまいました。

 このマイブームはそろそろ潮時かもしれませんね。



 マイブーム以外にも、大きな変化がありました。

 なんと──この私にも友達ができたのです。しかも、たくさん!


 デビュタント以降、私に話しかけてくれる子たちがものすごく増えました。

 なんでも私とシーモアのやりとりが「本当は惹かれあっているけれど、身分の差から身を引いた悲劇のヒロイン」という、全く意味不明な評価をいただいているみたいなのです。

 身を引いた、の意味がイマイチ理解できませんが、訂正するのも大変なのでそのまま放置しています。若干不本意なものはありますが、実害はないので良しとしましょう。


 オルタンスや彼女のお友達のミモザたちとも相変わらず仲が良いです。

 デビュタントの翌日、なぜかオルタンスが、「あの……アタクシなにも知らなくて……まさかあなたが二人の妃様のお知り合いだなんて……いろいろとごめんなさい」と、顔面蒼白で震えながら謝ってきたのですが、意味がわからず「なにをおっしゃいますの? 私たち、お友達ですよね?」と言ったらものすごく嬉しそうに何度もうんうんと頷いてくれました。

 それ以降少し態度が変わって、以前のように悪いところを指摘してもらうことが減ったのは少し残念なのですが……。


 そして、もっと仲良くなった人がいます。

 なんとびっくり、アナスタシアです。


「おはようユリィ、今日も良い天気ね」

「おはようアナ。気持ちいい日ですね」


 どうです? この会話!

 なんと私たち、お互いをユリィとアナと愛称で呼び合ってるんですよ!

 これって凄いことだと思いません?

 たしかにアナスタシアが不思議なギフトに覚醒してからなんとか仲良くなりたいとは思っていましたが──まさかここまでの関係になるとは思っていませんでした。


 しかも、デビュタント以降アナスタシアとは、週に2〜3回は一緒にランチを食べています。

 おかげでランチの席にカロッテリーナが入ることもありましたし、キャメロンを加えて4人で食事をとることさえありました。


 学年でもトップクラスの美少女と、愛称で呼び合い一緒にランチを食べる。こんな夢のような出来事が本当にあって良いのですかね?

 あいにくと彼女の覚醒したギフトに関する調査は全く進んでいませんが、それは二の次で構いません。だって、この幸せなひと時を大事にしたいんですもの。


 ……しかしなぜたくさんいる生徒の中から私なのでしょうか?

 あ、もしかしてあれですかね。シーモアのことでも聞きたいのですかね。


 実はアナスタシアとシーモアは昨秋に婚約を発表しました。

 アナスタシアは笑いながら政略結婚だと言っていましたが、前世で女性に全く縁のなかった私からすると、どんな理由であれこんな美女と結婚できる時点でどれだけ幸せなことなんだろうと思いますけどね。


 そういえば以前アナスタシアとこんな会話をしたことがあります。


「ユリィがシーモアの準妃になれば、一緒に楽しめるのにね」

「……妃には興味はありませんが、アナと一緒になにかするのは楽しそうですね」

「あら嬉しいわ! そういえばユリィ、あなたの好みのタイプってどんな人?」

「んー……」


 骨?


「まぁわたくしには言いにくいかもしれませんね?」


 確かに言いにくいので、笑って誤魔化すことにします。

 あれってどうしたら良かったんですかね。もしかして、逆に振って欲しかったんですかね? アナスタシアの好みはなんですかって。

 どうにも女子とのトークに関してはまだまだやりとりに関して未知のものが多く、己の未熟さを痛感します。もっと精進せねば……。



 そして今日もアナスタシアとランチを食べていると、ふとこんなことを聞かれました。


「ねぇユリィ、前にわたくしと一緒に何かするのは楽しそうって言ってましたわよね?」

「え、ええ……」

「だったらお願いがあるんだけど──わたくしと一緒に生徒会に入りませんこと?」


 ──生徒会?

 なんですか、それは?


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― 新着の感想 ―
生屠会?楽しそうね?
[一言] 才能を目覚めさせていくのが趣味…? これもう、あの男の記憶を押し付けられただけの聖女だったりしない? 前世の肉体(ゾンビ)もモジモジしてたし。 …あ、ない?そう…。 さて、嫌がらせのつもり…
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