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3.鑑定眼

おまけで今日はもう一話更新( ^ω^ )

 あっという間に私は2歳になっていた。


 かつての私は自分が生まれた日など特に把握はしていなかったが、カインとフローラに祝われることで、ちゃんと誕生日を把握することができるようになった。ずっと一人だった前世の私には無縁だったものではあるが、こうして経験してみると、祝うということもそう悪くないものだなと思う。


 私は近くにあった鏡に視線を向ける。

 鏡に映し出されたのは、わずか2歳の幼い幼女──今の自分”ユリィシア”の姿である。

 大きな瞳や長い睫毛、僅かに垂れ下がった眉毛は母親であるフローラに、整った鼻や丸みを帯びた唇は父であるカインによく似ていた。瞳は右目がカイン譲りで蒼く、左目はフローラ譲りで碧色をしている。色違いの目──いわゆる金銀虹彩(ヘテロクロミア)というものである。

 ただ、二人に似ていない部分もある。真っ白な白銀色の髪の毛だ。フローラは「神に愛された証──聖母の御髪」と言って喜んでいたが、その意味は私にはよくわからないし興味もない。


「いやぁ、しかしユリィシアは本当に可愛らしいなぁ。まるで天使のようではないか、アルベルト剣爵よ」

「さすがは伯父さ……オットー伯爵、お目が高い!ユリィシアは世界で二番目に可愛いんです! あ、もちろん一番はうちの妻ですけどね」

「ふぉふぉふぉ、お前は相変わらずだなカイン」


 カインの向かいに座るのは、豊かな髭を生やした初老のオットー伯爵。カインの伯父ということで、これまでも何度か来訪したことがある。


 成長するにつれ理解が進んできた事柄の一つが、カインが爵位を持つ貴族になっていたことだ。

 かつては【 剣皇騎士 】の二つ名持ちとはいえただの騎士だったので、おそらくは私を討伐した実績を踏まえ爵位を与えられたのであろう。カインの両親には未だに一度も会ったことがないので詳細は不明だが、叔父が伯爵なので間違いなく貴族の落胤……おそらくは次男や三男、もしくは庶子なのではないだろうか。

 ……つまり今の私は貴族令嬢ということになるのであるが、正直この点も興味はないのでどうでもいい。

 とりあえずフローラ仕込みのカーテシーを披露すると、オットー伯爵は満面の笑みを浮かべた。


「いやぁなんて可愛らしいんだ! うちは男の子しかいないからカインが羨ましいよ」

「ははは、絶対嫁にはやりませんよ? ところで伯父さん、伯母さんは?」

「あぁ、アレクのことを見に行ってるんじゃないかな」


 そういうと二人は、私のことなど忘れたかのように立ち上がると、そそくさと弟が寝ている部屋へと向かっていった。一人取り残される形となった私は、カーテシーを崩すと、はぁと大きく息を吐いた。



 そう、実は私には弟が生まれていた。名前はアレクセイ。私の大切な聖なる双丘も、今は完全に彼に奪われてしまっていた。無念……。

 とはいえ、悪いことばかりではない。フローラの注目が弟に向けられることが多くなったため、今この瞬間のように、私が一人になれる時間が生まれるようになったのだ。

 それは、いよいよ自分が持つギフトの検証が可能な時期が来たことを意味していた。


 実は私は、現時点で確認できているだけでも3つものギフトを所有している。

 ギフトには大きく分けて先天的なものと後天的なものがあるが、共通しているのは、ごく限られた人間しかギフトを持っていないということだ。ゆえに神からの贈り物──ギフトとして、持つものは重宝されていた。

  しかし、ギフトを持つものはいても、二つ以上のギフトを持つものなど、ほとんど聞いたことがなかった。……ましてや3つもギフトを持つなど、なんと恵まれていることであろうか。


 私の右目──父親譲りの春空のような抜けた青色をしているこの瞳に宿っているのが、一つ目のギフト──《 死霊眼ネクロ・アイ 》改め《 鑑定眼アプレイズ・アイ 》だ。

 その能力は、様々な検証の結果──どうやら私が持つ知識や知見を視覚化して見ることが出来るものであるようだと判明した。だが、それでは無駄な情報も多いので、私は改良カスタマイズを施して、自分が見たい情報だけをシンプルに見えるようにした。

 たとえば、父親のカインを見た場合、瞳の中にこのように表示される。


  ── カイン・アルベルト ──

  性別:男性

  素体ランク:S

  適合アンデッド:

  スケルトン(B)……98%

  スケルトン・ソードマスター(A)……92%

  デスナイト(A)……82%

  デュラハン(S)……76%

  ──


 そう、改良カスタマイズした私の《 鑑定眼アプレイズ・アイ 》は、対象のアンデッド化適合率を即座に表示するようになったのだ。

 やろうと思えば色々と細かい情報を見ることもできるのだが、私には不要なのですべて非表示にしている。


  ……それにしても、カインはやはり英雄だけあって、素晴らしいポテンシャルを秘めている。スケルトン・ソードマスターやデスナイトはアンデッドでも上級(Aランク)に数えられる種族だ。これだけの適合率を持っていたなら、間違いなく超強力なアンデッドになるだろう。特にデュラハンは貴重度レアリティが高くSランクである。前世の私でも最後まで手に入れることができなかった垂涎の的だ。


  前世の師匠から聞いた話として、アンデッドとして死者を復活させる場合には、生前に約束を取り付けていると成功率が高まる傾向があると教えられた。一種のおまじないや迷信のようなものだと付け加えられたが、あいにくと前世の私はあまり他人とかかわることがなかったことから、この有用性を確認することができなかった。


  しかし今世は違う。

 オットー伯爵が帰宅したあと、私に対して目じりを下げるカインにお願いしてみることにする。


「ねえ、おとうさま」

「なんだい、ユリィシア?」

「おとうさまは、しんだらたすけてくれる?」

「へ? 死ぬ? あーそういうことか……心配するな、お父様は決してお前を置いて死んだりしないぞ!」

「そうではなくて……もししんでしまったときには、わたしのためにちからをかしてくれますか?」

「死んだら? ……ああそっちか。もちろんさユリィシア! 愛する娘のためなら喜んで、死しても君を守るよ!」


 カインは私に言葉に疑いすら抱かず、あっさりと了承してくれた。いかに剣皇騎士といえど、からめ手には弱いようだ。

 ふふふ、これで優秀なアンデッド候補を大した労もなく手に入れることができたぞ。思わずほくそ笑んでいると、カインが嬉しそうに私を抱き上げ、ふにゃりと表情を崩した。


 この調子で、私は母親フローラとも生前契約を交わすことに成功し、二体の超優良アンデット候補を手に入れることに成功した。ちなみにフローラの適性はこうだ。


  ── フローラ・アルベルト ──

  性別:女性

  素体ランク:S

  適合アンデッド:

  ワイト(B)……99%

  スペクター(B)……97%

  ファントム(A)……86%

  リッチー(S)……79%

  ──


 これまた素晴らしい結果である。

 前世ではアンデッドの素体集めには大変苦労したというのに……なんという素晴らしい二度目の人生なのだ。


 だが、まだまだ私の夢は終わらない。

 私の夢はレアなアンデッドを収集することである。その中には、これまでの歴史上ほとんど創造することができなかった伝説級のアンデッドも含まれる。

 その夢に、また一歩近づいたことに私は大きく満足していた。


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