【ゲーム&コミカライズ発売記念】《side:ピナ》尊いのです
2024/12/20にPCゲーム版がついに発売!
また同日にコミカライズの第1巻も発売!(東条さかな先生)
※ちなみに本作は「ホーリーアンデッド」という名前に変わってます(笑)
これらの発売を記念して、久しぶりにSSを更新します(*´ω`*)
ピナには素敵なお姉様がいます。
お名前は──ユリィシア・アルベルト。
ユリィシアお姉様は本当に特別な方です。
まず目を引くのがずば抜けた美貌。ピナはこれほど整った顔立ちの綺麗な人を今まで見たことがありません。まるで天使が地上に降りてきたかのようです。
次にスラリと伸びた手足やキュッと引き締まったウエスト。全身のバランスが良く、まるで聖母神様が最高の寸法を組み合わせたみたいだって親友のナディアがよく言ってます。
あとは、どんなに騒がしくても遠くまで聞こえる透き通った声。本人は否定なさいますが、歌を歌えばきっと皆が魅了されること請け合いだと思います。
たった一歳しか違わないというのに、もっと年上の……本当のお姉様のように思えるほど魅力的な人。どうやったらあんなに素敵で綺麗な女性になれるのでしょうか。
学園においてもすでに数々の伝説を残していて、ジュリアス・シーモア王子とのデビュタントでの悲恋も有名な話ですし、二人の妃から花の公認を貰ったことも前代未聞の出来事として語り継がれています。
まさに生ける伝説とも言えるユリィシアお姉様は、学園の子たちにも大人気です。皆はお姉様のことを【白百合様】、【白銀の天使】などと呼んで慕い敬っています。
剣爵令嬢であられるので貴族としては最下層となるそうですが、上位の貴族令嬢の方々もユリィシアお姉様には一目も二目も置いているところが凄いですよね。
そんな素晴らしいユリィシアお姉様が、今日も妹であるピナに話しかけてくれます。
「ピナ、今日も良い天気ね」
「はい! ユリィシアお姉様!」
声をかけられたのが嬉しくてピナはつい大きな声で返事してしまいますが、ユリィシアお姉様は嫌な顔一つせず微笑みを返してくれます。
あの整った顔で笑みを向けられると、興奮してつい頬が熱くなるのが自分でも分かります。
あの笑顔は何度見ても慣れないものですよね。
ユリィシアお姉様が立ち去ったあとは、いつも同級生に囲まれます。
「ユリィシア様に声をかけてもらえるなんて、羨ましいわぁ」
「ねぇねぇ、ピナは白百合様となにをお話ししてらっしゃるの?」
「今度わたくしも白銀の天使様にご紹介頂けないかしら?」
みんなユリィシアお姉様の大ファンなのです。
そして妹であるピナとナディアは、皆から羨望の眼差しを受けながらたくさん声をかけられるのです。
平民出身のピナは、以前は同級生からも無視されていましたが、今では驚くほど周りに人が集まってきます。これもすべてユリィシアお姉様のおかげですね。
ピナは──ユリィシアお姉様の妹になれて、とっても幸せなのです。
◆
でも最近、ピナ以上に皆の注目を集めるものが出てきました。
それは──ユリィシアお姉様とアナスタシア様の関係です。
お二人はピナたちが入学する前から親しくしてらっしゃいましたが、この頃さらにお二人の仲が接近しているように感じるのです。
「ねぇユリィ、この紅茶美味しくってよ」
「本当ですね。香りも良いですわ」
「でもユリィとこうしてる時間が一番わたくしにとって美味しいかも……」
「まぁ、それは私にとっても同じですわ」
ああ、なんと心を強く揺り動かす会話なのでしょうか。
お側でお二人のお話を聞いているだけで、ピナの胸の奥がキュンキュンしてきます。
「本当に、お二人の距離感って尊いですわよね」
「尊いわぁ、尊すぎるのよぉ」
「尊すぎて声もかけられませんわ」
学友たちが言う『尊い』というのがどういう意味なのか、ピナにはよく分かりませんでした。
ただ、今ではなんとなく皆の気持ちは分かります。
だってピナも、二人を見た時に胸の中に込み上げてくる言葉にできないこの気持ちを表現するとするならば──やっぱり『尊い』なのでしょうから。
お二人のやりとりにのぼせ上がったピナは、情熱に浮かされるようにピアノを弾きました。
名付けた曲名は【尊き天使たちの戯れ】。
込み上げてくる想いをそのまま曲に仕上げたものですが、我ながら良いものが出来たと思うのです。
親友であるナディアに演奏して聴かせると、大粒の涙を流しがながら褒めてくれました。
「ピナはすごいのです! あたしもなんだか心の中から込み上げてきたのです!」
「それはねナディア、『尊い』と言うのよ」
「なるほど、この気持ちが『尊い』と言うのですね! お二人のことを想うと尊すぎて胸がキュンキュンするのです。あぁ、なんだか魔眼が疼いてきたのです!」
ナディアはいきなりキャンバスを取り出しすと、魔眼を発動させました。
誰も手を動かしていないのに──真っ白なキャンバスに、色とりどりの絵が描かれてゆきます。
最近ではナディアも《絵画の魔眼》の扱いが上手くなり、比較的思い通りに描けるようになったそうです。
ですが今描いているものは、これまでとは次元が違います。まるで子供の絵が大人の絵になったくらいの、急激な技術の上達。
「ああぁ、情熱が迸るのです! お二人の尊さが、あたしに力を与えるのです!」
恍惚とした表情を浮かべながらナディアの魔眼が描き出したのは──ユリィシアお姉様とアナスタシア様が見つめ合うような構図の見事な絵画。
「これは……素晴らしいわ。間違いなく傑作よ」
「あはは、魔眼が無自覚に傑作を描いてしまったみたいなのです! さすがはユリィシアお姉様とアナスタシア様、尊いのです!」
「ええ、尊いですわ!」
その後──ナディアが描いた絵は【尊き白百合と蒼薔薇】と名付けられ、すぐに学園生たちから高い評価を受けました。
ピナの曲と併せて『尊いセット』と呼ばれるようになり、絵画室に飾られた絵を毎日崇拝に来る人もいるくらいです。
ですけど、ユリィシアお姉様とアナスタシア様にはこの絵は秘密です。
だって……本当にお二人がこの構図の通りに『尊く』なってしまいそうなんですもの。
おかげさまでAmazon予約ではトップ10に食い込んだりしており、豪華限定版はほぼ売り切れ、通常版も残り少ないと聞いてます( ´ ▽ ` )
またコミカライズにつきましては、さかな先生の手で魅力的なユリィさんたちになってます!(ピッコマで連載中(≧∀≦))
この機会にぜひ手に取っていただけると嬉しいです!!