【番外編】ピナとナディアのアンケート
お久しぶりです!
キネティックノベル大賞受賞を記念★して
番外編を投稿します(´∀`)
時は…eps8のあと、ユリィさんが学園の2回生の頃のエピソードになります!
「ユリィシアお姉様!」
「お姉様に質問がありますの!」
私が学園のいつもの墓地で、ネビュラちゃんにお茶を淹れさせながらぼーっと雲を眺めていると、ふいに声をかけられました。ピナとナディアです。
「どうしまして? 私に質問──ですか?」
「はい、もっとお姉様のことを知りたいんですの!」
「ユリィ教の信者をもっと増やします!」
ユリィ教というのはよくわかりませんが……可愛い後輩たちが私のことを知ろうとしてくれることはとっても嬉しいことですね。
なにせ前世の私は嫌われ者の死霊術師。避けられることはあれど近寄ってくるものなどアンデッド以外いませんでしたからね。
……ああ、なんだか思い出すと悲しくなってきましたわ。
「あれ、お姉様は質問されるのはお嫌いですか?」
「え? あ、いいえ、そういうわけではないのです。えーっと、質問でしたかね。どうぞなんでも聞いてくださいませ」
私がそう答えると、二人はパッと花が咲いたかのように笑顔を浮かべます。うーん、なんて可愛いらしいんでしょう。このままアンデッドになったら最高なんですけどね。
「では最初の質問です。ユリィシアお姉様の好きな食べ物は何ですか?」
食べ物──ですか。
いきなり難易度の高い質問が来ましたね。
確か前世で読んだ「モテる会話マニュアル」という本では、異性との会話に詰まったときに最初に聞く質問が「好きな食べ物」だったと記憶しています。
だから何度も【不死の軍団】で練習したのですが……彼らはいつも「キシャー」とか「カタカタ」と答えるだけで練習にならなかった記憶が──。
「お姉様?」
「あ、ごめんなさい。ふと物思いにふけってしまいましたわ」
えーっと、好きなものでしたかね。
「骨──でしょうか」
「「骨!?」」
あ、いけません。
物思いにふけりすぎて、思わず好きなアンデッドを答えてしまいました。
実は私、アンデッドではスケルトン系が好きなんですよ。特にキンキンに乾燥して甲高い音がするくらい真っ白な骨のスケルトンは最高です。丸一日でも眺めていられますわ。
「……ぷくくっ」
私の後ろでネビュラちゃんが顔を俯かせたまま笑いを堪えています。そんなに私が答え間違えたことが愉しいんですかね? あとでお仕置きしなければいけませんね。
「ユリィシアお姉様は骨……がお好きなんですか?」
「骨を使った料理ですかね?」
「え? ああ、そうですね。私、骨を使って煮込んだ料理が好きなんですよ。故郷の郷土料理で──ネビュラちゃん、あの料理はなんて名前でしたかね?」
仕返しとばかりに私が無茶振りすると、ネビュラちゃんが口元を必死に抑えながら答えます。
「お、お嬢様、それはきっとヘルター・スケルターでございますよ」
「ヘルタースケルター?」
「それが料理名ですか?」
「ぶふっ!」
ネビュラちゃん、ぶっ込んできましたね。
真面目な表情で手持ちのメモに書き込んでいる二人を見ながら、ネビュラちゃんは涙目で必死に笑いを堪えています。
……今夜はヴァンパイアがどれくらい浄化すれば昇天するか、その限界を検証してみることにしましょうかね。ふふふ。
「ではお姉様、次の質問です。お姉様の好みのタイプはどんな感じのお相手ですか?」
「それはもちろんキンキンに乾燥した真っ白な──」
「ぶはっ!?」
ネビュラちゃんが我慢できないと言った感じで吹き出したことで、私は自分のミスに気付きます。どうやらまたしても好きなアンデッドを答えようとしていたみたいです。
「真っ白な……色白な方が好みということでしょうか?」
「え、ええまあそんな感じですかね」
「では乾燥したというのは……?」
「あー……ドライな感じの方がいいということで」
「なるほど! お姉様はツンデレな相手がタイプということですね」
「ぶーっ!!」
……ネビュラちゃん、あとで覚えてらっしゃい。存在が消えるギリギリまで癒しの力を注ぎ込んであげますからね。
「では最後の質問です。お姉様がこの学園で一番好きな場所はどこですか?」
「それはもちろん──墓地ですわね」
「なるほど、清浄で静かな場所がお好きなんですね」
どちらかというと、ドロドロに怨念の籠った呪われた場所の方が好みですけどね。もちろん、そんなことは口にしませんが。
「たくさんの回答ありがとうございます、お姉様! とっても参考になりました!」
「これでまた少し、ユリィシアお姉様のお心に近づきました! がんばってユリィ教の信者を増やしてきます!」
どうやらこれで質問は終わりのようです。
はぁー……なんだかドッと疲れました。コミュ障にアンケートはなかなかきついですね。
私が笑顔で去っていく二人を手を振りながら見送っていると、ネビュラちゃんがニヤニヤしながら話しかけてきます。
「いやぁお嬢様、下級生に慕われるというのもなかなか大変なものでございますね」
「そうですね……どうやら私には、アンデッドの限界を知る実験をしている方が向いているみたいです」
「……えっ?」
「ということでネビュラちゃん、さっそく実験してみましょうか」
「えっ? えっ?」
「まずは治癒の力10を帯びた水をかけたらヴァンパイアはどうなってしまうのか、そのあたりから検証を始めてみましょうか」
「げっ!?」
この実験を繰り返していたら、もしかしたらネビュラちゃんは聖属性を身につけるかもしれませんね。
ああ……なんてワクワクすることでしょうか。だんだんと愉快な気持ちになってきましたわ。
「お嬢様、冗談でございますよね?」
「私は嘘と冗談は得意ではなくてよ」
何も言わずに誤魔化すことはありますけどね。
さ、ネビュラちゃん。さっさと実験を始めるとしましょうか。
「フフ、ふふふ……うふふふ」
「お嬢様、やーーめーーてーーー」
〜おしまい〜
この度は皆様の応援のおかげでキネティックノベル大賞で【大賞】という素晴らしい賞を受賞することができました!
みなさま、本当にありがとうございました。゜(゜´Д`゜)゜。