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98.活動開始

お待たせしました!

ここから、エピソード13となります( ´∀`)



 師匠の転生した姿であるウルティマと私は、アイドルとしての活動を開始することになりました。

 ですがなにから始めれば良いのかわかりません。そこで私たちは宿屋の中にある食堂に降りて作戦会議をすることになりました。


「ウルティマ、それでアイドル活動というのは……具体的になにをしていけば良いのでしょうか」

「そうじゃなぁ、まずはユニット名を決めようか」

「ユニット名……ですか? なんでもいいですよ」

「いかん! そんな安易な考えは捨てるべきじゃ! ユニット名こそがアイドル活動の成否を決める最も重要なファクターなのじゃぞ!」


 なんか急にキレましたよ、この人。


「過去にはな、素材には恵まれていながらユニット名がいけてないがゆえに人気が出なかったアイドルたちもおるんじゃぞ」

「は、はぁ……」

「じゃからユニット名は真剣に考える必要があるんじゃ。あと、アイドル名もな」

「アイドル名?」

「アイドル活動を行う際に使う通称じゃよ」


 このようにアイドルのことを説明しながらも、ものすごい勢いで食事を平らげていくウルティマ。なんでも【不死の王】だったころは食事をとれなかったので、数百年分飢えているせいとのこと。

 それだけ食べていたら太りそうなものなのですが、ウルティマは10歳とはいえ素晴らしいスタイルをしています。実に不思議ですね。


「ということでおぬし、ユニット名やアイドル名に良いアイディアはないか?」

「うーん、それでは『アンデッド』はどうでしょう? あるいは『ネクロマンサーズ』などは……」

「そのまんますぎじゃな、却下じゃ」

「では『スケルトンズ』は?」

「論外じゃ。……おぬし、センスないのぅ」


 ぐ……ダメ出しされてしまいました。


「なんか良いのはないかのぅ……そういえばスミレがおぬしになにか面白いことを言っていたな。聖母神のおつげとかなんとか──」

「ああ、【原典テスタメント】のことですね」


 というかウルティマ、私たちの会話を盗み聞きしてたんですね。今更驚きませんが。


「確か『光と闇が極まりしとき、祝福を受けし癒しの乙女と、魔を極めし夢幻の乙女が相見え、天界への扉を開くだろう』だったかと……」

「……面白い。よし決めた、それで行こう」

「はい?」

「ユリィシア、おぬしは『祝福を受けし癒しの乙女』ユリじゃ! そしてわしは『魔を極めし夢幻の乙女』ウルと名乗ろう。そして二人で天界──すなわちアイドルの極みへと続く扉を開くのじゃ! これが……わしらのユニットのコンセプトじゃな」

「……聖母教会の【原典テスタメント】を勝手にパクる気ですか? さすがにそれは不味くないですかね」

「大聖女を勝手に復活させたおぬしに言われたくないわ」


 それを言われたら返す言葉もありません。


「ですが、スミレや聖母教会に怒られてしまいますよ?」

「なぁに、わしを誰だと思っておる。気にすることはないわ」


 ……こんなことで胸を張られても、ねぇ。


「そういえばウルティマはなぜスミレと共に行動をしていたのですか?」


 ふと思い出した疑問を口にします。

 私が師匠の仕掛けたトラップで飛ばされた時、目の前にいたのはスミレでした。それはつまり、ウルティマがわざわざスミレの前に誘導したということです。

 別にスミレのことなど放置しておけば良かったのに、どうしてそんな手間をかけたのでしょうか。


「ん? そんなの簡単じゃ、アイドル活動の邪魔をされたくなかったから先に用件を済ましてもらっただけじゃよ」

「ぶっ」

「あの女はしつこいのじゃろう? であれば、巻くよりも先に片付けてしまえばより安心ではないか」


 た、たったそれだけの理由でスミレを巻き込んだのですか……さすがは師匠。

 まぁ、結果的にはもう追われることはなくなったので良かったのですけどね。


「それではアイドル名は『ウル&ユリ』で決まりじゃな。異論はあるか?」

「いえ、ありません。それではユニット名はどうします? 正直私はなんでもいいです」

「愚か者っ! やる気を出さなくてどうする!」


 いや、やる気があるのはウルティマだけだと思いますが。


「……仕方ないのぅ、ではお互いの前世の名前を取って──フランケルとプロフォンドゥムで『フランドゥム』なんていうのはどうじゃ」

「ええ、とっても素敵だと思います」

「そうかそうか!」


 投げやりに回答したものの、ウルティマはとても満足そうに頷いています。どうやら気に入っていたネーミングだったようです。

 ということで、私たちのユニット名は『フランドゥム』に決定しました。


「それで、アイドル活動というのはずばりどんなことをやるのですか?」

「そうじゃな、一番は歌を歌うことじゃ」

「歌、ですか?」


 自慢じゃありませんが、私は歌などほとんど歌ったことがありません。


「とりあえずおぬし、歌ってみよ」

「え? ここでですか? 勘弁してください」

「なんじゃ、意外と恥ずかしがり屋じゃのぅ」


 さすがに食堂で歌うのは嫌でしたので、私たちは場所を変え、人気の少ない近くの森に移動します。

 本来ここは魔獣なども彷徨く危険な場所なのですが、当然なにも近寄って来ません。おそらく本能的に近寄ってはいけない相手だとわかっているのでしょう。


「さ、歌ってみよ」

「その前に、私はこの姿でその──アイドル活動を行うのですか?」


 私は今の金髪ですが、すでに冒険者たちの間で『魔法薬師シア』として認識されています。かと言って元の白銀色の髪にしても目立って仕方がありません。下手すると『癒しの聖女』を知っている人に出会ってしまうかもしれません。

 アイドル活動などというよく分からないものを行うにあたり、正体がバレるのは避けたいところですね。


「そうか、わかった。それでは髪の色を変えるかのう。せっかくじゃし黒っぽい髪にするか」

「え?」

「ほれ、ほほいのホイっとな」


 ウルティマが私の頭に手を触れながら、何か魔力を流し込んできます。やがて──私の奥底で何か大きなものがカチッと切り替わりました。

 するとどうでしょう、私の髪の色が一気に黒色に変わっていったではありませんか。

 完全には黒になはらず、濃い灰色のような色ではありますが、しかし──。


「お、おぉぉおぉ……。こ、これは……」

「あんまり真っ黒の髪でも目立たないからな、少し軽めにしておいたぞ」


 魔力を込めてみると、黒い魔力が湧き上がって来ます。

 なんと──ウルティマのおかげで、死霊術の力が復活していたのです。


「死霊術が……使える?」

「うむ? おぬし、これまで死霊術を使えなかったのか?」

「い、いえ。感情が昂ったときや特別な薬を飲んだ時は使えましたが……」

「何だかめんどくさいことをしておるのう。それよりもさっさと歌を歌えぃ」

「わかりました。それでは……『ソランの歌』を歌ってみます」


 本当は黒い魔力は復活したことが気になるのですが、元師匠には逆らえません。

 ちなみに『ソランの歌』とは、子供たちなら誰でも知っているような歌です。


「ではいきます。……ぞーらにぃぃいぃぃい、太陽がぁああぁあああぁぁぁぁぁぁあぁ、かがやいってるぅうぅぅ」

「やめやめ、やめえっぇえぇえぇいいっ! すとーーーっぷ!!」


 ですが、すぐウルティマに止められてしまいました。


「どうしました?」

「ユリィシアよ。おぬし、とんでもない音痴じゃのう」

「……だから言ったじゃないですか」

「仕方ない、踊りはどうじゃ? 魔法王国時代にも、歌は下手ながらもダンスで人気を博したメンバーもおったからな」


 とりあえず言われた通り踊ってみます。

 カクカク……カクカク……。


「……それはなにをイメージして踊っておるんじゃ?」

「酒場の踊り子、ですかね?」

「そうか、わしゃてっきり昇天寸前のゾンビがもがいている真似をしているのかと思ったぞ」


 ……人が一生懸命踊ってるのに、その例えは酷くありません?


「しっかしおぬし、踊りも歌も下手じゃのう。こんなに可愛らしいのに、もったいない」

「可愛らしい? 私が?」

「そうじゃ、気付いてないのか?」

「社交辞令的によく言われますが……」


 そう言うとウルティマははーっと大きなため息を吐きます。


「まさかおぬし、自分がとんでもない美少女だと気付いていないのか?」

「またまた、ウルティマまでなにをおっしゃいます」

「ひとつ聞くが、ワシとその辺を歩いている女の子、どちらが可愛い?」

「え? どちらも等しく女の子ではありませんか」


 私が素でそう答えると、さらに大きなため息を吐きました。


「……どうやらおぬしの中で可愛いと言う概念が狂っているようじゃな。これはいかん」


 ウルティマに狂ってると言われるとなんだか釈然としませんが……。


「おぬし、自分の顔をこの鏡でしっかりと見てみよ」


 ウルティマがどこからか取り出した鏡を見ます。

 そこにはいつもの私の顔が写っていました。


「私の顔ですが?」

「その横に数値が出ておるじゃろう?」

「偏差値──ですか? 78とありますが」

「うむ、それは鏡に映ったものの美しさを測る魔法道具でな。標準値を50とした時のおぬしのルックスの評価じゃ」

「これは……高いのですか?」

「高いなんてもんではない、人類最高クラスだ」


 なんと私は……可愛かったのですか。

 初めて知りました。

 あぁ……何ということでしょう、信じられません。

 これは、どう受け止めれば良いのでしょうか?


 戸惑う私を無視して、ウルティマは説明を続けます。


「ちなみにわしの偏差値は80じゃ。美しさでも人類の頂点を極めてしまったぞぃ、ほっほっほ」

「私が……可愛い?」

「そうじゃ、その可愛さをもっと光らせてみたくはないか?」


 ウルティマが、魅力的な提案をしてきます。

 これ以上可愛く……なんだかドキドキして来ますね。女性として生を受けた以上、興味がないといえばウソになります。


「よし、それではデビュー前に少しおぬしのパワーアップを行うとするかな。魔力よりも先に、可愛さアップじゃ!」

「可愛さアップ……そんなことができるのですか?」

「もちろんじゃ、しかもわしのコレクションの中から、秘蔵のアイドルグッズも提供するとしよう。ほっほっほ、やる気が漲ってきたぞぃ!」


 アイドルグッズ? それは魔法道具の名前でしょうか?


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― 新着の感想 ―
[一言] SSSランクはヤバい奴ばかりですね
[良い点] 話がぐいぐい進んでめっちゃ面白いです。
[一言] 冒険者編を見ていたらアイドル編になった。 (困惑中)そも人の顔は平均的なものが好まれるらしい つまり偏差値50が至高? いや顔平均値(理想値)に近いほど100点に近づく みたいな配点なら偏差…
2020/01/27 19:47 うつつちーたー
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