第9話 ぷかぷか孤島と新しい体!
今回はちょっとカッコつけてます。つけれてるかは知りません。
ディースは思ったよりも早く島に戻ってきた。体感1時間ぐらい。おい、大丈夫かよ。俺の仮初の体がマネキンみたいなのっぺらぼうとか嫌だぞ?
「まっかせてください!自信作なんですよ!これに憑依するだけで私が付与した色々なスキルを習得できます!それに体自体は鍛冶神のおじいちゃんと造形神のおばあちゃんが作ってくれましたから大丈夫です!」
『おぉー、邪神って呼ばれてるにも関わらず神の中にもディースに有効的な人はいるんだな。』
「そうなんです!特に鍛冶神さんは「お前が不憫すぎて見ていられん!」ってことある事に助けてくれてるんですよー!」
鍛冶神、めっちゃいいひとやんけ。職人とかって気難しいっていう偏見あったけど意外とそうでもないかもしれんな。
「では、早速お披露目です!私もまだ見てないのでワクワクしますよー!」
『おい、ちょっと待て。なんで見てないんだ?ディースがなんか付与とか施したんじゃねぇのか?』
「そうなんですけど私は空のコアに付与しただけなんですよ。なんか鍛冶神さんが言うには憑依するには空のコアが必要で付与はそこに施せば良いらしいんです。」
『なるほどな。わかった。』
うん、だんだん嫌な予感がしてきたぞぅ!
みんなもその雰囲気を感じているのかちょっとざわついている。だが、そんな様子を微塵も感じ取れていないディースはついにやらかす。
「いきますよー!これが陽斗さんの新しいからだでーーーす!!」
そこに現れたのは身長130から140cmぐらいの人形であった。
服は和テイストな服を着ている。巫女服みたいな。
頭からは猫の耳が生えていてどうやらお尻には尻尾も生えているみたいだ。
髪はショートでピンク色だ。
肌は透き通るような白。柔らかそうなのがこちらまで伝わってくる。
胸には大きな2つの果実が実って・・・ん?
そして顔は幼さを残した可愛らしい女の子。一言で言うなら萌顔です。
うん、これ女の子だよね。俺って生前は男だったよね?念じて喋ってる時も一貫して自分の声で喋ってるつもりだったんだけど違ったのかな?
あ、いや、違わねぇわ。大精霊が笑い転げてるし、ディースがお顔真っ青になってるし、アイネは笑いを堪えてる。ちびっ子精霊たちは何がなんやらわかってない様子だけどね。
『なぁ、ディース。ひとつ聞いていいか?』
「は、はい。なんでしょうか?」
『俺の事、女だと思ってたのか?』
「い、いえ、男性の方だと・・・」
「アハハハハハッ!ひーっひーっ!」
大精霊の笑い声がより一層大きくなる。
『じゃあ、これはなに?嫌がらせ?』
「ち、違うんです!私は鍛冶神さんと造形神さんにお友達が島を見て回れるような体を作ってくださいってちゃんと言いました!」
『勝手に俺が友達リストに加えられてるのは癪だがそれはまぁいい。なぁ、言葉足らず過ぎない?』
「は、はい。確かに私のお友達には今まで幼い女の子しかいませんでした。」
「うん、じゃあ何この胸部装甲。鍛冶神はこういうのが好みってこと?」
「い、いえ、多分それは造形神さんが・・・」
『えっ?造形神さんってもしかしてそっち系?いや、別に人の自由だけどさ・・・』
「ち、違います!実は途中でこんなことがありまして。」
ほわんほわんほわんほわん
「ねぇ、その子ってどのくらい大きいの?(胸が)」
「そうですねぇ、私の何倍も大きいですよ!」
「そ、そう・・・ディースちゃんもそのうち大きくなるわ!大丈夫よ!」
「???」
ほわんほわんほわんほわん、
『その大きいの?って絶対胸のことじゃないか!』
「はいぃぃぃ!!すみませんんん!」
「まぁいい。これは廃棄して別の作ってきて貰ってくれ。」
さすがにこれに憑依すんのは気が引ける、というより恥ずかしすぎる。女装の上位互換だぞ!ノーマルな俺に出来るわけないだろぉ!?
「そ、それが、出来ません!これ神造アーティファクトなんで廃棄することは出来ません!」
『な、なんで?』
「この神造アーティファクトには所有者の情報がインプットされていてそれを捨てるか他のホムンクルスに憑依すると死にます。」
『はい?』
「死にます。」
『その情報をインプットしたのは?』
「私です。」
てへ?じゃねぇよ!ふざけんな!なんてことしてくれたんだ!
「だって仕方ないじゃないですかぁ!陽斗さん以外に持たせたらやばいものいっぱい詰まってますしー!鍛冶神さんと造形神さんにも大事にしろって言われましたし!しょうがないじゃないですかぁぁぁぁぁあ!」
あっ、泣いちゃった。卑怯だ!女の涙は卑怯なんだ!ぐぬぬぬぬぅ。
『はぁ、分かった。もういい。今日からこれが俺の体だ。だが、ディース!これは貸しだからな!』
するとディースの顔はみるみるうちに笑顔に変わっていった。
「はっ、はい!ありがとうございます!!」
まぁ、確かに女の子としては随分可愛らしく作られている。街にこんな子が歩いていたら絶対2度見する。うん。間違いない。
笑い転げてる大精霊とアイネは無視しよう。
『よし!それじゃあ憑依するぞ!』
『憑依』
スっとおれの意識が遠のいて行くのを感じた次の瞬間俺は気づいた。
久しぶりの感覚だ。
俺は足で地面をしっかりと踏みしめている。風が頬を撫でる。
芝生と潮の匂いが鼻をくすぐる。ザザァという波の音が心地いい。
肩がなんか重いけどそこはまぁいい。
目の前には芝生が広がっていて目の前には転げ回っているまな板2人とふわふわ浮いているディースがいる。
俺は地面に触れてみる。芝生の少し硬い感触が手から伝わってくる。そして地面は少し湿っている。
「どうですか?」
「うん、最高だよ!ありが、、、とう。・・・ってえぇ?声も変わってる??」
俺が発したのはアニメとかASMRとかでよく聞く萌え声ってやつだった。
「当たり前じゃないですか!神の力を舐めないでください!」
「まぁ、この体にはこれがあってるのかな?」
「はい!もうそれはそれはぴったりです!私実は妹が欲しかったんですよー!これは私の妹にピッタリですね!」
「奇遇ね!私もなのよ!ちびっ子精霊たちも可愛いんだけどやっぱり妹みたいな存在には憧れるわよねー!」
「私も妹とか弟には興味がありますね!」
お前らその妹にある部分で負けてるけどなっていう本音は押し殺した。
まぁあれだ。なんか無茶なこと頼む時は上目遣いで「お願いっお姉ちゃん!」っていったらなんでも聞いてくれそうだからいっか。
「あっ、そうだ!陽斗さん!いえ、この格好だと陽斗という名前は似合いませんね!改名しましょう!ハルちゃん!今日からあなたの名前はハルです!」
いや、俺がこの世界に来た時の名前プカプカですし。それもあんたがつけたんじゃないの?
「いいわね!そうしましょう!」
「それがいいと思います!」
はい、拒否権はありませんでした。確認のためステータスを確認する。
あっ、本当に名前がハルになってる。神ってなんでもありかよ・・・
あっ、ヤバい。なんか異様に頭が痛い。体が熱い。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「どっ、どうしたのよ!大丈夫?顔が真っ青よ?」
慌てて大精霊が駆け寄ってくる。
あっ、ダメだ。これ耐えられんねぇ。みんなの心配する声が聞こえるなか、俺はふっと意識を手放した。
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