第7話 ディース再来 1
俺はただいまいくつかの疑問を抱いている。まず一つ目。エルフちゃんがなんで俺の言葉分かるの?俺ってたしか精霊としか会話出来ないはずなんですけども!まぁ、いいや。それはただ単に便利なだけだからいいや。
2つ目。ここどこ?いや、疑問としてはかなり遅いかもしれないよ?でもさ、疑問を持つべき最初の時間はあのドジっ子ディースに奪われたんだよ!俺が浮かんでるこの海の名前も知らないし、そもそもここが北なのか南なのか東なのか西なのかも分からない。
まぁ、いいや。これもいいよ。知ったところで何が変わるって訳でもないし。大精霊に聞いたらバカにされそうだし。
3つ目。これ一番大事。ディース。あいつ何者!?俺のことを勝手に異世界へと飛ばした挙句、こんな地図にも載らないような無人島、あっいや今はエルフが住んでるけどさ。に変えたあいつは何者だっ!!ってことで今回はそのお話です。
ディースが俺をこの地に転生させてから7日間が経った。エルフちゃんが起きてからちょうど5日かな。あれからはエルフちゃんに野菜をあげて精霊達にマナをあげて、ガラポンひいて、漂流するだけの毎日でした。
大してレベルもあがらず、スキルはもちろん増えず、設置物も水車2つと牧場1つ、養鶏場ひとつが保管庫に眠っているだけです。
「お久しぶりでーす!どうですか?異世界生活は?」
ん?こいつ誰だ?なんかロングヘアーの幼女がヤシの木に話しかけてるぞ。ゲートに間違えて入って来ちゃったのかな?てかなんでみんな本体がヤシの木だと勘違いしちゃうの?悲しくなっちゃう。
「もしもーし!私です!ディースです!」
お前か!!確かに1週間に1度くるとか言ってた気がする。
『あーあー、お久しぶりです、ディースさん。どうしたんですか?』
「どうしたの?孤島。お客さん?」
大精霊が俺の声に反応して話しかけてくる。んー、一応紹介しとくか。ディースって確か自称慈愛の神だよな。
『いや、なんかディースっていう慈愛の神が来てるんだよ。ちなみにあいつが俺をここに呼び出した張本人な。』
「えっ!ディースってあの邪神ディースのこと?」
「いや、慈愛の神だって。」
「じゃあ、間違いないわ!あんた邪神のつかいだったのね!よし!今からぶっ飛ばすわよ!」
そこに今の今まで俺達の会話を無視していたディースが入ってきた。
「ちっ!違うんです!誤解です!あの神話は誤解なんですぅ!」
お、おう?神話?この世界にも神話ってあるんだな。
「なにが誤解よ!聖なる六勇神が世界を滅ぼそうとする悪しきものと戦っている最中にあろう事か、神である貴方が悪しきものたちに神の恩恵を与えた。と!そう史実に書いてあるのよ!この邪神め!」
な、なんて野郎だ!やっぱり俺をこの世界のちっちゃな吹けば飛ぶような島にしたのもわざとだったんだな!ちくしょうめ!
「うっ、うー!ちっ、違うんですぅ!私はただみんなを応援したかっただけなんですぅーー!うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」
あーあ、泣いちゃったよ。でも、なんか裏があるみたいだし、その誤解が解ければ俺も大精霊にぶっ飛ばされずハッピーなんじゃね?よし!その方向で行こう!
『まぁまぁ、落ち着いて。そんでディース。実際はどうなの?』
「じっ、実はですね。私もその六勇神の1人だったんです。正確には七聖神なんですけど。」
「『はっ?』」
いやいやいや、それはないわー。もしかしたら悪しきものが実は慈善団体で、それを裏から支援してたみたいなのを想像してたけど。まさか、ねぇ?敵に塩を送るやつがどこにいるんですか。
「し、信じられないと思いますけどホントなんですぅ!私だって敵にバフをかけるつもりはなかったんですぅ!」
説明しよう!バフとは仲間の能力を向上させたりする能力のことである!
「で、でも、私、ドン臭くて。頑張ってバフの魔法を撃っても全部敵に取られちゃったんです!」
あー、なんか説得力出てきた。確かディースって俺のこと飛ばした時もドジったとか言ってたよな。
「それで、私のバフってシャレにならないくらい強力で、普通なら神話になるまでもない相手だったんですけど、私のバフを受け取った相手がムッキムキになっちゃって、、、」
バフでムッキムキって、、、
「ふーん?嘘はついていないみたいね。それにしてもどんだけどんくさいのよ。バフ魔法って大抵追尾効果ついてるでしょ?それに相手には見えないようになってるし。」
嘘じゃないんだ、、、
「返す言葉もないですぅ・・・」
あっ、大精霊も呆れ返って邪神への敵意が消えたな。良かった。これで俺がぶっ飛ばされることは無くなると。
『ふーん、色々大変だったんだな。』
「そうなんです!!ほんとに!あの戦いが終わったあと、他の神にずーっとぼやかれ続けて!神話では色々ねじ曲がって邪神認定されちゃいますし、踏んだり蹴ったりなんです。」
うんうん、大変だったんだな。
「あっ!あなたは!!!」
んっ?褐色エルフちゃん。どうしたんだい?もう事件は去ったんだぞ。
「あっ、あなたは!私をこんな目に合わせた邪神じゃないですか!!!」
「「えっ」」
周りの空気が凍りつく。ディースの胸ぐらを大精霊が掴んで問いただす。
「どういうことか、説明してもらいましょうか?」
うわぁ、怖ぇ!あんな冷たい視線絶対に浴びたくねぇ!
「あっ、あなたは!もしかして私の加護を受け取ったエルフさんですか!はじめまして!」
ディースが陽気にそう答える。いや、状況考えなさいよ。なんでそんな嬉しそうなの?Mなの?ドMなの?
「私!邪神に認定されてから加護を与えれたの初めてなんですよ!」
「なんでそんなにご機嫌なんですか!!私はあなたのせいでエルフの里を追い出されてこんなちっぽけな島に連れてこられたんですよ!!」
いや、本人の前で凄いいいようだな。確かにちっちゃいけど。
「確か、エルフは30歳になると神から加護を受け取るんだったわよね。その神はランダムで勝手に決められるとか。」
おっ、ナイスだ!大精霊!俺この世界の常識知らないからその情報はナイスアシストだ!
「そうなんです!実はそのランダムって抽選なんですけど、私初めてその抽選に当選しまして!晴れてあなたに加護を与えることが出来ました!」
「なんてことしてくれたんですか!!私はもう故郷に帰れないんですよ!あなたの加護を授かったせいで!」
「うっ、そ、それは本当に申し訳ないです。」
あっ、ちょっと言い過ぎじゃない?ディースさん、また涙目になっちゃってるよ。
「・・・まぁ、いいんですけどね」
うん? なんで?
「はえっ?で、でもあなたが故郷に帰れないのは事実ですし・・・」
ディースも大精霊も目を点にして驚いている。
「いいんですよ。どうせ私はホワイトエルフから生まれたダークエルフ。元々地位は低いものでした。そんな所から逃げ出せて今じゃせいせいしてるんです。
それにここには孤島さんや大精霊さん、そしてたくさんの小さな精霊さんがいます!ここでの生活はエルフの里よりも100倍楽しいんです!だから私はあなたを恨みません!
むしろお礼を言いたいくらいです!ほんとにありがとうございます!慈愛の神様!」
「エ、エルフさーん!あ、ありがとうございますぅーーー!」
エルフちゃんの言葉に涙するディース。とても感動的だ。あっ、涙でそう。孤島の涙ってどこから出るんだろ?
「うっ、うっ、よがっだわね。ディーズ!エルフちゃん!」
あっ、大精霊さんも泣いてる。意外と情に弱いのな。
「あっ、あのー、私にはアイネという名前があります。そちらで呼んでください!」
確かにエルフちゃんってのもよそよそしいもんな。これからはそう呼ぼう。
まぁ、めでたしめでたし。一応ディースに対しての誤解も溶けた。今日はお祝いかな。マナ変換で食べきれないほどの野菜を用意してあげよう。
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