第1話 孤島になっちゃった?
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あー、あー、ここはどこなんだろう。
真っ青な海、そして真っ青な空。どこを見ても青1色だ。雲ひとつなく、水平線のグラデーションが美しい。
こんなにのんびりしたのは久しぶりだなぁ。
俺は高3の頃、怠けに怠けきって第1志望どころか滑り止めにさえ受からなかった。それを受けて俺は褌を締め直した。毎日最低でも15時間は勉強。睡眠は5時間。その生活をかなりの間続けて来た。そのおかげで成績もグングンと伸びていた。
だが、俺はもう体力の限界だった。
当たり前だろう。今までゲームとかばっかりしてぐだぐだしてた奴がいきなり死にものぐるいで勉強し始めたら流石に体にガタが来る。
あぁ、思い出した。俺は死んだんだ。そうだ。あの時足取りも覚束無い中真っ暗な帰り道を歩いていた。そしたら曲がり角で急にトラックがスリップして突っ込んで来たんだ。季節は冬。うちの地域は比較的寒い地域だったから路面凍結でも起こっていたんだろうか。そういや、俺も帰り道でなんどかコケてたっけな。
うーん、でもこの状況はおかしい。死んだあとの世界が海と空で覆い尽くされてるなんて聞いたことないぞ。あっ、それともあれか? 俺の死体が海に投げ捨てられてぷかぷか浮かんでいるうちにアンデッドになっちゃったとか? ありえないな。
というか、今頃大変なことに気がついた。きっと腕も足もない。てか俺人間か?
あれ? どうなってんだ? 足や手を動かそうとしても水をかき分けてる感触を感じられない。というか、今まで出来てきた行為が何一つできねぇ。声も出せないし、深呼吸だって出来ない。でも、触覚や嗅覚、視覚はちゃんと働いているみたいだ。
・・・なんだこれ。
あーー!! やべぇ! このままじゃ野垂れ死ぬ! そう思って俺は『誰かいませんかァァァァァ!!!!』って叫びまくった。
いや、声は出てないけどね。
すると。ぴぴぴー、ががが。って音が聞こえてきた。ビックリして硬直していると。まぁ動けないんだけどね。
「あー、あーーっ! 聞こえますかぁ! 聞こえたら返事してくださぁい!」
って声が聞こえてきた。いや、返事出来ねぇよって。そんなこと考えながらイライラしてたら、また声が聞こえてきた。
「あっ、聞こえてましたかぁ。そんなイライラしないでくださいよぅ! 私だってこんなことになるなんて思ってなかったんですからぁ!」
うん、俺の心勝手に読まないで頂けますか?それにその話し方だと、あなたが俺をこんな目に合わせた張本人だって勘違いしちゃうんですけど。
「し、仕方ないじゃないですかぁ! アナタ喋れないんですもん! あ、あ、あと、その、あなたがここでぷかぷかしているのは、えっと、実は私のせいなんです。」
よし、俺の第1目標が決まった。この声の主を何とかして見つけ出して1発本気で殴ってやろう。そうでもしねぇと俺の腹の虫が収まらない。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってください! 話を聞いてください!わ、私だってあなたをこんな目に合わすつもりはなかったんですぅぅ!
本当はあんなに頑張って勉強していたあなたがあんな事故で死んでしまってかわいそうだなぁ。って思って! それで特別に記憶を残したまんま別の世界で英雄として暮らしてもらおうと思ったんですぅ!」
なるほど、この人は俺の事を気遣ってくれていたらしい。まぁ、それならしょうがない。誰にだってミスはある。このことは水に流そう。でも、俺、これからどうしたらいいの?
「いえ、でもこちらのミスであなたは孤島になってしまったのでそれの償いはさせてもらいます!」
えっ? 俺って孤島だったの? あぁ、どうりで海と空しか見えないわけだ。
「そういうことです。 あっ、あと償いというのはまず、特例として無生物であるあなたにスキルを授けます! いきますよぉ! ふぬぬぬぬぅ!えいっー!」
可愛らしい掛け声のあと、体内(島内?)に温かいなにかをが入り込んでくるのを感じた。
「ふいーー。スキル付与完了です! 後で確認してみて下さい! あとですね、1週間に1日だけ、私はあなたの元へ訪れます。その時に欲しいものとかあったらいってください! 準備出来るものはすぐに用意しますので! 」
あっ、あのー、ステータスの確認ってどうやるんですかね?
「あっ、そうでしたね。地球にはそういう概念がありませんでしたね。『ステータスオープン』って唱えればすぐに見ることができますよ。」
ありがとうございます。俺は心の中でお礼を伝える。
「いえいえ、元はと言えば私のミスのせいなんですから! 今回は声だけでしたが次はちゃんと姿も見せますんで。 では、私も用事があるので!」
あっ、ちょっと待って!あなたの名前を教えてください!
「あっ!それは失礼しました。私は慈愛の神ディースと言います! あっ、あとあなたのこの世界でのお名前は私が付けておきましたので! ではまた!」
ぴー、ががが。
最後に機械音をならしてディースとの会話は終了した。
ご覧下さりありがとうございました!