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楽園世界のヴァルキュリア―黎明の少女達―  作者: 愛崎 四葉
第六章 暗殺者と聖女編・後編
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最終話 ヴァルキュリア達の決意

 カイリとアマリアは、全てを語り終えた。

 だが、真実のほとんどを知らなかったアマリアは、絶句していたが。

 当然であろう。

 カイリの事を何一つわかっていなかったのだ。

 そんな自分が、許せなかった。

 どうしても。


「そんな事が、あったとはな……」


 二年間、カイリと行動を共にしていたヴィオレットは、うつむく。

 あまりにも、過酷で、残酷な過去だ。

 自分よりも。

 そう思うと、心が痛むのだろう。


「言い訳をするつもりはない。私は、狂っていた。皆を巻き込んでしまったのだ。許されることではないだろう」


 カイリは、知っている。

 たとえ、騙されていたとしても、許されることではない。

 盲目的に、信じていた自分が悪いと自覚しているのだ。

 そして、全てを知った時、どんな手段を使っても、帝国を滅ぼすと決意してしまい、ヴィオレットを巻き込んでしまった。

 カイリは、その事を悔いているのだ。


「すまなかった」


 カイリは、頭を深く下げて謝罪した。

 たとえ、許されることではないとわかっていても。


「クロス……クロウ……」


 ルチアは、クロスとクロウの方へと視線を向ける。

 それも、不安に駆られながら。 

 真実を知っても、二人は、カイリの事を許せないのだろうか。

 わかり合う事ができないのだろうか。

 ルチアは、それを心配しているのだろう。

 ルチアだけではない。

 ヴィオレットも、アマリアも、ヴィクトル達も、カレン達も、静かに、見守っていた。


「あんたの過去は、良くわかった。でも、許す事は……」


「……」


 クロウは、静かに語り始めた。

 やはり、まだ、受け入れられないらしい。

 わかってはいたが、カイリは、言葉を失った。

 もう、あの頃には、戻れないのだと、思い知らされて。


「確かに、ひどい話だと思う。でも、今は、まだ、俺も、クロウも許せないと思うんだ」


 クロスも、語り始める。

 カイリが、騙されていた事を知り、衝撃を受けていた。

 と言っても、罪が消えるわけではない。

 まだ、彼らは、受け入れられず、許すことができないのだ。

 「今は」。


「だが、いつかは、許せる日が来ると思う」


「え?」


 クロウが、さらに、話を続ける。 

 しかも、カイリにとっては、意外な言葉を口にしたのだ。

 カイリは、驚き、あっけにとられている。

 クロウは、今、許せる日が来ると話していた。

 予想外だ。

 まさか、クロウがそんな言葉を口にするとは、思いもよらなかったのであろう。


「俺達も、いつになるかは、わからない。時間が欲しいんだ」


 クロスも、話を続ける。

 二人は、カイリの事を受け入れ、許そうとしているのだ。

 だが、それには、時間がかかる。

 今すぐにとはできない。

 だからこそ、クロスは、懇願したのだろう。

 時間が欲しいと。


「……ありがとう」


 カイリは、涙を流した。

 感謝しているのだ。 

 こんな自分を受け入れてくれようとしているのだから。

 アマリアも、涙を流した。

 本当に良かったと思っているのだろう。

 ルチア達も、微笑んだ。

 早く、彼らが、わかり合える日が来る時を願って。



 全てを語り終えたルチア達。

 クロス達は、船から降りていく。

 だが、ルチアとヴィクトルは、彼らを見守るように、立っていた。


「うまくいって、良かったな」


「うん。本当に良かった」


 ルチアも、ヴィクトルも、安堵している。

 ヴィクトルに相談したのは、ルチアだ。

 どうしても、カレン達は、ヴィオレットの事を許せず、クロスとクロウも、カイリの事を許せていない。

 その事を心配して、相談したのだ。

 そして、ヴィクトルが、提案した。

 何があったのかを知らなければ先には進めないと。

 ルチアは、ヴィクトルの提案を受け入れたのだ。

 ヴィクトルは、カレン達を説得し、ルーニ島へと連れてきた。

 はじめは、どうなるかと、不安に駆られたルチアであったが、カレン達もヴィオレットを受け入れ、クロスとクロウは、カイリの事を受け入れようとしている。

 少しずつではあるが、変わり始めてきているのだ、確実に。


「ありがとう、ヴィクトルさん」


「俺様は、何もしてないさ」


「これから、うまくやっていけるかな?」


「当然だ。皆、過去を受け入れたはずだからな」


「うん」


 ルチアとヴィクトルは、微笑んでいた。

 穏やかな日々が続くことを。

 誰もが、過去を受け入れ、前に進み、いつの日か、昔のように笑い合える時が来る時を願って。



 時間が経ち、夜になる。

 あたりは、すっかり暗い。

 ヴィクトル達とカレン達は、ルクメア村に泊まることにした。

 フォウが、招待してくれたのだ。

 島の民の誰もが、出迎えてくれた。

 彼らの事を。

 ヴァルキュリアと騎士がこの島に来てくれたのが、うれしかったのか、いつしか、宴が始まった。

 ルチア達も、参加し、楽しんだのだ。 

 誰もが、笑みを浮かべていた。

 ヴィオレットも、カイリも。

 彼らの表情を目にしたルチアは、微笑んでいた。

 本当に、良かったと、思いながら。

 宴が終わり、ルチアとヴィオレットは、外で星を眺めていた。


「綺麗な星空だな」


「うん」


 満天の星空だ。

 ヴィオレットは、久々に見た気がする。

 こうして、星々を眺められる日が来るとは、思っていなかったのだろう。


「ルチア、ありがとう」


「何もしてないよ。私は、ヴィクトルさんに、相談しただけ。どうしたら、皆、前に進めるかなって」


「それで、私達は、前に進めたんだ。ルチアが、きっかけをくれた。本当に、ありがとう」


 ヴィオレットは、ルチアに感謝しているのだ。

 ルチアのおかげで、前に進めたのだから。

 ルチアは、何もしていないと語った。

 本当にだ。

 カレン達を説得してくれたのは、ヴィクトル達だったのだから。

 それでも、きっかけをくれたのは、ルチアだ。

 だからこそ、ヴィオレットは、ルチアに感謝していた。


「これで、前みたいに戻れるんだよね?」


「そうだな」


 ルチアは、ヴィオレットに問いかける。

 不安に駆られているのではない。

 確認しているかのように、聞いていた。

 もちろん、ヴィオレットも、わかっているからこそ、うなずいたのだ。

 確信を得ているのだろう。

 前のように戻る日が来るのだと。

 ルチアは、微笑んでいた。

 うれしくてたまらないのだろう。

 だが、その時だ。

 地面が、大きく揺れたのは。


「きゃ!?何!?」


「なんだ!?」


 ルチアが、バランスを崩し、ヴィオレットが支える。

 だが、揺れは続くばかりだ。 

 一体、何があったのだろうか。

 不安に駆られる二人。

 すると、夜空で信じられない光景が、二人の目に映った。


「え?」


「なぜ……」


 ルチアも、ヴィオレットも、目を見開き、体を震わせる。

 当然であった。

 一か月前に消滅した帝国が、空に浮かんでいたのだから。


「帝国が、復活した?」


「なぜだ?」


 クロスも、信じられないようだ。

 声を震わせて、呟く。

 クロウも、幻を見ているのではないかと、疑っていた。


「あり得ない。あり得るはずがない」


「一体、何が……」


 カイリは、首を横に振った。

 あり得るはずがないのだ。

 帝国が復活するなど。

 アマリアも、見当がつかなかった。

 何があったのか。

 カレン達も、ヴィクトル達も、信じられずに、困惑していた。

 その時であった。

 全員の目の前に、ダリアが姿を現したのは。


「っ!!」


「ダリア!?」


 ルチアは、ダリアを目にして、絶句する。

 だが、ヴィオレットは、怒りを露わにして、ダリアをにらんでいた。 

 元凶である彼女を目にして、憤りを感じているのだろう。


「久しぶりね。元気にしていたかしら?」


「魔法で、幻影を生み出しているのか……」


 ダリアは、笑みを浮かべて、語りかける。

 平然とした様子で。

 ダリアをじっと見るヴィオレット。

 彼女は、今、目の前にいるダリアが、幻だと見抜いたようだ。


「なぜ、私が生きているのって顔しているようね」


「……」


 ダリアの言う通りであった。

 幻をみせられているという事は、ダリアは、生きているのだ。

 心情を見抜かれ、ルチアも、ヴィオレットも、何も言えなかった。


「確かに、私は、死んだわ。でも、もう一度、復活したのよ?魔神の力によって」


「何?」


 衝撃的であった。

 なんと、ダリアは、一度死んだという。

 カイリの手によって。

 だが、魔神の力で復活したというのだ。

 ヴィオレットは、信じられなかった。

 魔神は、帝国と共に消滅したはずだ。

 ルチアが、手にしていた聖剣によって。

 まさか、魔神までもが、復活してしまったというのだろうか。

 ヴィオレットは、それすらも、考えたくなかった。


「でも、残念な事に、魔神は、まだ、復活していないわ。力を送る事はできるみたいだけど」


「バカな!!魔神は、消滅したはずだ!!」


 ダリア曰く、魔神は、復活していないというのだ。 

 封印されたままなのだろう。

 それでも、力を送る事はできるらしい。

 ヴィオレットは、声を荒げた。

 信じられないのだ。

 魔神は、確かに、消滅した。

 ゆえに、あり得なかった。


「魔神はまだ、消滅していないわ。だから、私は復活したのよ」


 ダリアは、ヴィオレットの疑問に答える。

 なんと、まだ、消滅していなかったというのだ。

 魔神が、消滅していなかったからこそ、ダリアは、復活したという。

 ヴィオレットは、絶句した。

 何もかもが、信じられずに。

 ルチアも、その一人であった。


「ヴァルキュリアの魂を利用するのは、やめたわ。でも、魔神は復活させる。その時まで、待っていなさい」


 ダリアは、宣言した。

 ヴァルキュリアの魂を使わずに、魔神を復活させると。

 ルチア達の魂が、元の体に戻ったからであろう。

 アライアも、いない状態では、作られた体に封じ込めるのは、不可能なのだ。

 だからこそ、ダリアは、別の方法で魔神を復活させると宣言し、消滅した。 

 ルチア達にとって、最悪の展開となってしまった。


「そんな、どうして……」


「ダリア……」


 アマリアは、愕然とする。

 ようやく、全てが終わり、ルチア達は、穏やかな暮らしができると信じていた直後だったのだ。

 カイリは、拳を握りしめていた。

 また、騙された気分になったのだろう。

 許せるはずがなかった。


「あれは、幻なんかじゃない」


「ああ、本物の帝国だ」


 クロスも、クロウも、確信を得たようだ。

 今、目の前に浮かんでいる国は、帝国だ。

 自分達と敵対していたあの帝国なのだ。

 そして、帝国を統治していた女帝・ダリアも、生きていると。


「どうすれば……」


「そんなの、決まってるよ」


 ヴィオレットは、動揺する。

 どうすればいいのか。

 迷っているのだろう。

 だが、ルチアは、すでに、決めていた。

 これから、どうするべきなのか。


「魔神は、復活させない!!私が、食い止める!!」


 ルチアは、決意を固めた。

 もう一度、帝国と戦うと。

 女帝・ダリアを殺してでも、魔神を復活させないと。

 ルチアの意思を聞いたヴィオレットは、拳を握りしめる。

 彼女も、決意を固めていた。


「私も、共に戦う」


「ヴィオレット」


「絶対にな」


「うん」


 ヴィオレットも、宣言する。

 ルチアと共に戦うと。

 全てをルチアに背負わせるつもりなど毛頭ないのだ。

 決意を固めたのは、二人だけではなかった。

 クロスも、クロウも、カイリも、アマリアも、そして、カレン達も、ヴィクトル達もだ。

 誰もが、帝国と戦う事を決めていた。


「絶対に止めてみせる!!」


 ルチアは、宣言した。 

 帝国と戦う事を。

 今度こそ、魔神を消滅させてみせると。

 こうして、最後の戦いが、始まろうとしていた。


ご愛読、ありがとうございました!!

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