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楽園世界のヴァルキュリア―黎明の少女達―  作者: 愛崎 四葉
第六章 暗殺者と聖女編・後編
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第七十五話 始まりの時が来るまで

 魔神復活計画は、失敗に終わった。

 ヴィオレットが、ルチアを殺してしまった事で。

 コーデリアは、ヴィオレットの処刑を命じたが、それすらも、不可能であった。

 なぜなら、ラストがヴィオレットを牢から逃がし、王宮エリアから脱出したからだ。

 帝国を滅ぼすために。

 コーデリアは、全ての帝国の民に、ヴィオレットが、ルチアを殺したことを語り、ヴィオレットの事を裏切りのヴァルキュリアと呼んだ。

 そして、ヴィオレットは、今も、帝国に潜んでいる事も。

 ヴァルキュリアであるカレン達には、各エリアを守るよう命じた。

 ヴィオレットを見つけ次第、殺すのではなく、捕らえるようにと。

 その直後、コーデリアは、エデニア諸島を支配し始めた。

 アライアが生きていると知ったからだ。

 アライアが、魔法で、伝えたのだろう。

 そして、負の感情を集める為に、エデニア諸島を支配したのだ。

 ルーニ島とレージオ島以外は。



 翌日、アライアは、ルーニ島で暮らしていた。

 対妖魔用の武器を開発している研究者・「アレクシア」と名を偽って。

 アレクシアは、外に出る。

 まるで、島の様子をうかがっているようだ。

 その時であった。


「アレクシア」


「フォウ」


「どうじゃ、怪我は」


「もう、治ったみたいだよ。ありがとう」


 フォウがアレクシアに語りかける。

 昨日、アレクシアは、重傷を負って、ルクメア村に入ってきたのだ。

 フォウは、アレクシアの怪我を治した。

 その直後だった。

 ルチア、クロス、クロウが、記憶を失って島に流れ着いたのは。

 可愛がっていたルチアと孫であるクロスとクロウが、記憶をなくした事にショックを受けたフォウ。

 そこで、アレクシアは、ある事を提案した。

 自分が、彼らの保護者代わりになると。

 記憶を取り戻す手掛かりがつかめるかもしれないと話したのだ。

 フォウは、アレクシアを信じ、アレクシアに託すことにした。

 何も知らないまま。


――危ないところだった。まさか、あんなことになるなんて。


 アレクシアは、昨日の事を思い出す。

 実は、カイリがまがまがしい力を発動した直後、アレクシアは、全属性の盾を発動していたのだ。

 自分の身を守るために。

 だが、完全には守れず、アレクシアは、重傷を負いつつも、魔法で、ルーニ島へと逃げ込んだ。

 本当に、間一髪だったのだ。

 カイリの力は、それほどの威力を持っていたという事なのだろう。


「本当にいいのか?」


「何がかな?」


「あの子達を、任せて」


 フォウは、アレクシアに、問いかける。

 申し訳ないと思っているようだ。

 アレクシアに、ルチア達の事を任せて。

 本当は、自分が、見守りたかった。

 だが、記憶を失っている彼らと過ごせば、傷つくであろう。

 後悔していたのだ。

 もし、クロスとクロウを騎士にしなければ、記憶を失わずに済んだのではないかと。

 フォウは、罪を償う為に、自身の事を語らずに、アレクシアに任せたのだ。

 と言っても、託してしまってよかったのかと、悩んでいるらしく、アレクシアに問いかけた。


「放っておけなくてね。それに、元ヴァルキュリアと元騎士だ。興味があるんだ」


「そうか……ありがとう」


 アレクシアは、答える。

 もちろん、偽って。

 と言っても、興味があるのは、本当なのだが。

 フォウは、アレクシアにお礼を言った。

 感謝しているのだろう。 

 アレクシアの本当の狙いに気付かないまま。


――いずれは、再び、覚醒する。その時に……。


 アレクシアは、笑みを浮かべていた。

 ルチアは、いずれ、覚醒する。

 再び、ヴァルキュリアになると、信じているのだ。

 その時に、ルチアを利用するつもりなのだろう。

 魔神を復活させるために。

 アレクシアは、その時まで、保護者代わりを演じることにした。



 コーデリアは、部屋で紅茶を飲みながら、庭を眺めている。

 キウス兵長は、コーデリアの部屋で、コーデリアの様子をうかがっていた。


「失敗したなんてね。あの小娘、余計な事を」


「いかがなさいますか?コーデリア様」


 コーデリアは、苛立っているようだ。

 当然であろう。 

 あともう少しで、魔神が復活するはずだった。

 だというのに、ヴィオレットが、ルチアを殺してしまったのだ。

 これで、計画が狂ってしまった。

 キウス兵長は、コーデリアに問いかける。

 彼も、知っていたのだ。

 魔神復活の計画を。

 知っていて、彼女達を見守っていた。


「アライアが作った宝石は、残ってるかしら?」


「ええ、そのようですが」


「なら、あれを利用しましょう」


 コーデリアは、キウス兵長に問いかける。

 実は、アライアは、宝石を開発していたのだ。

 多くのヴァルキュリアを生み出すために。

 試作品であるが、一つ、完成している。

 コーデリアは、それを利用するつもりのようだ。

 多くのヴァルキュリアを生み出し、魔神に、魂を捧げさせるために。


「新しいヴァルキュリアを誕生させるのよ。時間をかけていいから」


 コーデリアは、決めたようだ。

 時間をかけて、華のヴァルキュリアを誕生させると。

 試作品の宝石を使って。

 そうする事で、自身の野望を叶えようとしていた。



 アマリアは、部屋で待機していた。

 昨日、全てを聞かされたアマリアは、衝撃を受けていたのだ。

 姉妹のように仲が良かったというのに、ヴィオレットが、ルチアを殺したなど、信じたくなかった。

 だが、これは、事実だと聞かされる。

 そして、ヴィオレットがとらえられるまで、アマリアは、王宮で待機することとなった。

 命を狙われる可能性があるからと。


「全てが、変わってしまった……」


 アマリアは静かに呟いた。

 それも、悲し気に。

 もう、帝国には、カイリも、ルチアも、ヴィオレットもいない。

 一人、取り残されてしまったのだ。


――カイリ、今、どこにいるんですか?あの日、帝国は変わってしまいました。


 アマリアは、心の中でカイリに語りかけた。

 アマリアの言う通り、帝国は変わってしまったのだ。

 神魂の儀が、行われた日、最悪の事件が起こってしまった。

 帝国全体が、騒然となったほどに。


――ダリア様、アライア様は、殺されたそうです。あの暗殺者に。ヴィオレットも、ルチアを殺してしまいました。


 アマリアは、暗殺者の事を憎んでいた。

 それも、激しく。

 女帝のダリアと、研究者のアライアを殺したのだ。

 だが、アマリアは知らない。

 その暗殺者がカイリであり、ダリア達に騙されている事を。

 だが、一番ショックを受けたのは、ヴィオレットがルチアを殺したという話を聞いたことだ。

 あれほど、仲が良かったというのに。

 アマリアは、信じたくなかった。


――あの子は、処刑される前に、逃げてしまったようです。きっと、あの男と一緒にいるでしょう。


 ヴィオレットは、処刑されなかった。 

 暗殺者と逃げたのだ。

 それゆえに、コーデリアは、非常事態を発令。

 ヴァルキュリア達を各エリアに待機させた。 

 アマリアは、暗殺者と共に逃げたのだと推測しているようだ。

 しかも、帝国のどこかに潜んでいる。

 彼のせいで、帝国の民は、怯えながら暮らすことになった。

 アマリアは、それが、許せないのだ。

 何もかもが、暗殺者のせいだと思い込んでいるのだろう。


――貴方は、行方不明になってしまったと聞きました。どこにいるのか、誰にも、わからないと……。


 コーデリアは、カイリは死んだと告げなかったらしい。

 どういうわけか、行方不明になったと公表したようだ。


――やはり、あの時、婚約を解消しなければよかった。本当に……。


 アマリアは、後悔していた。

 もし、婚約を解消しなければと。

 別の未来になっていたのではないかと思うほどに。 

 だが、それも、思い込みだ。

 解消していても、いなくとも、同じ未来になっていたのかもしれないのだから。


――カイリ、貴方に、会いたい……。今、どこにいるんですか?


 アマリアは、カイリに会いたがっていた。

 だが、王宮から出る事を禁じられた。

 それゆえに、探しに行くこともできない。

 カイリに会えない寂しさだけが募っていった。



 ラストは、フードをかぶり、ヴィオレットと共に、走っている。

 もちろん、ヴィオレットも、フードをかぶって。

 フードをかぶった男性もいるようだ。

 帝国兵に追われているようだ。

 だが、何とかして、裏路地に逃げ込み、振り切ったようだ。

 帝国兵は、彼らを見失い、別の方向へと走り始めた。


「ふぅ、なんとか、逃げ切れたみたいだね~」


「そうだな」


 ラストは、汗をぬぐう。

 だが、わざとらしく、飄々としていた。

 カイリは、ラストを演じているのだ。

 誰にも悟られないように。

 フードをかぶった男性は、静かにうなずいた。


「助かったよ。ありがとうな、クライド」


「別に、同じ意思を抱いているなら、協力者は必要だと考えたまでだ。たとえ、正体不明の者であったとしてもな」


 フードの男は、なんと、クライドだったようだ。

 ラストは、知っていた。

 クライドが、貴族であり、脱走した事に。

 だからこそ、彼の元へと逃げ込み、共に偽りの帝国を滅ぼす事を決意したのだ。

 もちろん、真実は、全て語らず。

 クライドは、警戒していたが、ラストが、かつて、帝国に所属していた暗殺者だったと、知らされ、ヴァルキュリアであるヴィオレットの正体を聞かされたとき、彼らを受け入れたらしい。

 彼らの協力が必要だと、推測して。


「ヴィオレット?そろそろ、行こうぜ」


「……ああ」


 ラストは、ヴィオレットに問いかける。

 ヴィオレットは、冷酷な眼差しで、うなずいた。

 彼女も、変わってしまったのだ。 

 優しかった彼女は、もういない。

 帝国を滅ぼす破滅の少女へと変わった。

 ラストは、ヴィオレット、クライドを連れて、歩き始める。

 暗く、細い道の中を。


――私は、帝国を滅ぼす。まがい物の楽園はいらない。


 ラストは、決意していた。

 死人だらけの帝国など、まがい物だ。 

 だからこそ、滅ぼすべきだと。

 それが、コーデリアへの、ダリア達への復讐であった。


――たとえ、この身を滅ぼすことになっても。


 ラストは、死を覚悟していた。

 刺し違えても、復讐をやりとおすつもりのようだ。

 本物の暗殺者へと豹変してしまったカイリは、破滅の道を選んだのであった。


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