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楽園世界のヴァルキュリア―黎明の少女達―  作者: 愛崎 四葉
第五章 暗殺者と聖女編・前編
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第六十四話 封印

「あ、あの人は、一体……」


 アマリアは、思考を巡らせる。

 一体、何があったのか。

 仮面の男性は、一体、何者だったのか。

 だが、見当もつかない。

 アマリアは、恐怖で、体が震えていた。

 その時であった。


「うぅ……」


「フランクさん!!」


 フランクがうめき声を上げる。

 その声を聞いたアマリアは、はっと、我に返った。

 気付いたのだ。

 フランクが、重傷を負ったことに。

 アマリアは、フランクの元へと駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


「お、おう。しくじったぜ……」


 アマリアは、固有技・ホーリー・キュアを発動し始める。

 フランクの腕を治療し始めたのだ。

 フランクの様子を見て不安に駆られるアマリア。

 海賊の長であり、最強と言われていた彼が、右腕を切り落とされたという事は、暗殺者は、彼よりも、強いことになる。

 そう思うと、アマリアは、恐怖で、体がすくみ上りそうになっていた。

 フランクでさえも、困惑していたのだ。

 まさか、自分が、右腕を切り落とされるとは、思いもよらなかったのであろう。


「アマリア、俺の事はいい。あいつを……」


「駄目です!!じっとしていてください!!」


 フランクは、自分の事よりも、暗殺者を追う事を優先させようとした。

 だが、アマリアが、フランクを放っておくはずがない。

 重傷を負っているのだ。

 このままでは、失血死してしまう可能性があるかもしれない。

 ゆえに、アマリアは、治療を続けた。

 フランクを叱咤して。


「すまねぇ……」


 アマリアに叱咤されたフランクは、意識を失う。

 限界が来ていたのだろう。

 それほど、重傷を負ったという事だ。

 アマリアは、そう、思い知らされた。

 時間が経っても、右腕は再生しない。

 治療を続けているというのに。


「どうして、どうして、治らないの!?」


 アマリアは、混乱した。

 確かに、右腕は切り落とされてしまったが、アマリアの力ならば、いとも簡単に再生できるのだ。

 今までも、そうであった。

 手足を切り落とされた帝国兵の治療に取り掛かった時も、彼の手足は、再生したのだから。

 理由は、ただ、一つであった。

 カイリが、まがまがしい力を発動してしまったのだ。

 無意識のうちに。

 ゆえに、フランクの右腕は、消滅してしまい、二度と、再生されなかった。

 その事に気付いていないアマリアは、治療を続けていた。

 だが、その時であった。

 何者かが、部屋に入ってきたのは。


「っ!!」


 アマリアは、怯え、振り向く。

 だが、そこにいたのは、カイリであった。


「カイリ……」


 カイリを目にしたアマリアは、安堵する。

 本当は、泣きたいところだ。

 だが、今は、泣いている場合ではない。

 アマリアは、必死に涙をこらえていた。

 部屋に入ったカイリは、目を見開き、動揺しているふりをしていた。

 アマリアに、悟られないように。


「これは、何が……」


「わかりません。仮面の男が、彼らを、フランクさんを……」


「……」


 カイリは、アマリアに問いかける。 

 知らぬふりをして。

 だが、アマリアも、答えられなかった。

 部屋に入ってきた時には、すでに、このような惨劇が起こっていたのだから。

 カイリは、黙ってしまう。

 罪悪感を感じているのだろうか。

 何も知らないアマリアは、カイリの異変に気付いていた。


「カイリ、その腕は?」


「……仮面の男に斬られたんだ。剣を奪われてしまってな」


「……」


 アマリアは、気付いたのだ。

 カイリが、右腕に怪我を負っている事を。

 問いかけられたカイリは、説明する。

 仮面の男に、腕を斬られたのだと。 

 しかも、剣を奪われて。

 アマリアは、絶句した。

 まさか、カイリまでもが、暗殺者に斬られてしまったのかと。

 その時であったが。

 床が大きく揺れたのは。


「っ!!」


 カイリとアマリアは、驚愕し、動揺する。

 何が起こったのか、二人は、理解できていないのだ。


「な、何!?」


 アマリアは、あたりを見回す。

 まさか、帝国が、落ちてしまうのではないかと不安に駆られて。

 だが、その時、地水火風の力が、部屋に漂ってきた。


「これは、まさか!!大精霊が!?」


「え!?」


 カイリは、察してしまったのだ。

 地水火風の力が、漂っているという事は、大精霊の身に異変が生じている事に。

 アマリアも、驚愕しながらも、集中し始める。

 力の原因を探るために。


「暴走してる、本当に?」


 アマリアは、気付いてしまった。

 大精霊が、暴走しているのだ。

 予想外であった。

 まさか、本当に、ダリアの言う通りになるとは思いもよらなかったのだ。

 暴走しないでほしいと願っていたというのに。


――ユルサナイ。ユルサナイ。


――コロシタ。コロサレタ。


 大精霊の声がカイリの頭に響いてくる。

 まるで、怒りを露わにしているようだ。


――大精霊の声?まさか、私の事を……?


 カイリは、察してしまった。

 大精霊は、自分を憎んでいるのだ。

 シャーマンを殺したから。

 眠っていはずなのだが、気付いてしまったのだろう。

 シャーマンが、何者かに殺された事を。

 だからこそ、暴走してしまったのだ。

 つまり、大精霊の暴走を引き起こしたのは、カイリであった。


「やらなければ、やらなければ……」


 アマリアは、体を震わせながらも、歩み始める。

 まるで、自分に言い聞かせているようだ。

 大精霊を封印できるのは、自分しかいない。

 ゆえに、やるしかなかった。

 大精霊の暴走を止めるには、封印するしかないのだから。


「アマリア」


「止めないでください。これは、彼らの為です」


 カイリは、思わず、アマリアを呼び止める。

 アマリアの事を想うと、心が痛んだのだ。

 アマリアを追い詰めてしまったのは、自分だ。 

 それは、わかっていた。

 それでも、止めずにはいられなかった。

 アマリアは、声を震わせながらも、カイリを諭す。

 大精霊の為だと。

 アマリアは、力を発動した。

 アマリアの聖なる力は、大精霊の元へと向かっていく。

 そして、大精霊は、聖なる力に包まれて、結晶の中へと封じられてしまった。

 直後、揺れが収まった。


「暴走が、止んだ」


「ええ。封印は、成功しました」


 揺れが収まったという事は、大精霊の暴走が止んだという事だ。

 つまり、封印されたということになる。

 アマリアは、息を吐いた。

 心を落ち着かせるために。


「カイリ……」


 アマリアは、カイリの名を呼んだ。

 カイリは、恐る恐るアマリアの方へと視線を向けた。

 その時、カイリは、目を見開いた。

 なんと、アマリアは、泣いていたのだ。


「これで、良かったのでしょうか?」


「っ!!」


 アマリアは、カイリに問いかけた。 

 自分のしたことは、正しかったのか。

 カイリは、絶句した。 

 言葉が出てこなかったのだ。

 アマリアは、本当は、封印なんてしたくなかった。

 だが、やるしかなかったのだ。

 大精霊の為だと、自分に言い聞かせて。

 封印をさせてしまったのは、カイリだ。

 シャーマンを殺したから、大精霊は、暴走した。

 アマリアは、封印せざるおえなくなった。

 そう思うと、カイリは、拳を握りしめ、震わせた。

 自分を責めながら。


「……ああ」


 カイリは、静かに、うなずいた。 

 肯定するしかなかったのだ。

 否定すれば、アマリアを余計に傷つけてしまうのだから。

 カイリは、後悔していた。

 アマリアを巻き込んでしまった事を。


 

 その後、帝国兵が、殺されたシャーマン達を見つけ、女帝・ダリアに報告。

 もちろん、ダリアは、知っていた。

 カイリに聞かされていたから。

 シャーマンを殺したが、フランク、アマリアに見られてしまった事。

 シャーマンを殺したがために、大精霊が暴走し、アマリアが、封印した事を。

 ダリアは、帝国兵に命じ、シャーマンの葬儀を行う事となった。

 シャーマン達の葬儀は、しめやかに行われた。

 右腕を失ったフランクは、アライアにより、医学的な治療をしてもらったが、もう、腕は戻らないと、告げられる。

 フランクは、ショックを受けていた。

 当然であろう。

 もう、前線に立つのは、難しいのだから。

 それでも、受け入れるしかなかった。

 ヴィクトル達は、シャーマン達を殺した暗殺者を探す事を決意したが、ダリアが、自分達が、探すと言って、彼らを帰還させたのだ。

 追い出す形で。

 もちろん、ダリアは、探すつもりなど、毛頭なかった。

 翌日、カイリは、女帝の間へと足を運ぶ。

 女帝の間には、ダリア、コーデリアがいた。


「暗殺は成功したみたいね」


「はい」


 ダリアは、喜んでいるようだ。

 シャーマン達の暗殺に成功したのだから。

 と言っても、フランクとアマリアには、知られてしまったが、それでも、ダリアは、良しとした。

 任務は、達成されたのだから。

 カイリは、うなずくが、表情が暗い。

 素直に喜べないのだ。

 アマリアやフランク達の事を想うと。


「あの、大精霊は?」


「アライアが、管理しているわ。念のため、ね」


「そうですか……」


 カイリは、ダリアに問いかける。

 封印された大精霊は、どうなってしまったのだろうか。

 行方不明と言う事になったが。

 ダリア曰く、アライアに管理させているらしい。

 封印が解けないように、見張らせるためであろう。

 それを聞かされたカイリは、ますます、心が痛んだ。

 

「どうしたの?カイリ。何か、悩んでるの?」


「……」


 コーデリアは、カイリに問いかける。

 カイリの様子に気付いたようだ。

 だが、カイリは、答えようとしなかった。


「悩みがあるなら、言ってごらんなさい」


 ダリアは、カイリに語りかける。

 まるで、母親を演じているかのように。

 だが、カイリは、何も知らないため、重たい口を開けた。


「本当に、これでよかったのでしょうか?」


「あら、後悔しているの?」


「い、いえ……」


 カイリは、ダリアに問いかける。

 自分のしたことは、正しかったのかと。

 逆に、ダリアは、聞き返した。

 後悔しているのかと。

 カイリは、否定するが、本当は、後悔していたのだ。

 アマリアを傷つけてしまったのだから。


「貴方は、私達を、帝国を守ったのよ。正しい事をしたわ」


 ダリアは、カイリに語りかける。

 カイリのしたことは、正しかったのだと。

 自分達を守ったのだから。

 これで、妖魔は、生まれなくなる。

 そう言いたいのであろう。

 もちろん、真っ赤な嘘なのだが。


「ありがとう、カイリ」


 ダリアは、カイリに感謝の言葉を述べた。

 それは、まぎれもなく、本心だ。

 なぜなら、カイリのおかげで、邪魔者がいなくなったのだから。

 カイリが、ダリアの本性に気付くのは、まだ、先の事であった。


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