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楽園世界のヴァルキュリア―黎明の少女達―  作者: 愛崎 四葉
第五章 暗殺者と聖女編・前編
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第五十九話 シャーマン達の目的

 カイリとアマリアが、ルチア達とクロス達を支えたかいもあり、ルチア達はヴァルキュリアとして、クロス達は騎士として、活躍した。 

 そのおかげか、妖魔の出現が減少しつつあったのだ。

 ダリアも、喜んでいる。

 平和が時代が訪れるのではないかと、誰もが、期待して。

 だが、その平穏を脅かす者達もいる。 

 ゆえに、カイリの孤独な戦いは、終わらなかった。 

 今夜も、ダリアとコーデリアの命を狙う帝国兵を暗殺しようとしたのだ。

 そして、実行の時が来た。

 突如、カイリに刺された帝国兵は、後退し、遠ざかる。

 仮面をつけたカイリは、静かに、帝国兵へと迫った。


「だ、誰だ!!貴様は!!」


 帝国兵は、怯えながらも、剣を構える。

 実は、暗殺者の存在は、噂となっていたのだ。

 カイリが、暗殺者になる事を決めた時から。

 何者かが、闇に葬っているのではないかと。

 暗殺者がいるのではないかと言う噂が広まっているのだ。

 帝国兵は、ついに、自分が、狙われることとなったと悟った。

 だが、時すでに遅し。

 カイリは、帝国兵に迫り、短剣で、心臓を貫いた。


「かはっ!!」


 帝国兵は、血を吐き、仰向けになって倒れる。

 殺されたのだ。

 カイリは、静かに、帝国兵に歩み寄った。


「ただの暗殺者だ」


 殺された直後に、カイリは、答える。

 自分の正体を。

 そして、まがまがしい力を発動し、帝国兵を葬り去った。



 翌日、帝国兵を殺したことを報告する為に、カイリは、ダリアの部屋を訪れていた。


「帝国兵・マキラの暗殺に成功しました。これで、平穏無事に暮らせるでしょう」


「ええ。助かるわ」


 カイリは、帝国兵を殺したことを報告する。

 その事を聞いたダリアは、安堵しているようだ。

 これで、命を狙われずに済むと。

 もちろん、ほんの一時的ではあるが。

 カイリも、安堵していた。 

 ダリアとコーデリアを守れたのだ。

 だからであろう。

 だが、その時であった。


「あのね、カイリ」


「どうされましたか?」


 ダリアが、申し訳なさそうに、カイリの名を呼ぶ。

 一体、どうしたのだろうか。

 カイリは、ダリアに問いかけた。

 何か、問題が、起きたのではないかと、推測して。


「暗殺を引き受けていただけないかしら?」


「命を狙われているのですか?」


 ダリアは、暗殺を依頼したのだ。

 こんなことは、初めてだ。

 いつもであれば、カイリが、情報を集めて、暗殺している。

 もちろん、ダリアとコーデリアに誰が命を狙っているのか、報告して。 

 ダリアは、誰かに命を狙われた事に、気付いているのだろうか。

 問いかけるカイリであったが、ダリアは、首を横に振った。


「いいえ、違うわ。でも、帝国の平和を脅かす奴らがいるのよ」


「承知いたしました。今度は、どなたを?」


 ダリア曰く、平和を脅かす者がいるという。

 そんな奴らを見逃せるはずがない。

 カイリは、殺す事を決意し、誰を殺せばいいのかと、問いかけた。


「地水火風のシャーマンよ」


「え?」


 衝撃的であった。

 なんと、平和を脅かす者と言うのが、エデニア諸島の地水火風のシャーマンだというのだ。

 カイリは、困惑していた。


「な、なぜ、彼らが?」


 カイリは、体を震わせながら、問いかける。

 信じられないのだろう。

 シャーマンが、平和を脅かしているなどと。 

 カイリが知っているシャーマンは、島の事、帝国の事を考えているのだ。

 だからこそ、大精霊と共に、島を守ってきた。

 だというのに、なぜ、彼らを殺せと命じたのだろうか。


「信じられないでしょうけど、妖魔が、生み出されたのは、彼らのせいらしいの」


「か、彼らが?」


「ええ。アライアから報告を受けたの。間違いないと思うわ」


 ダリアは、説明する。

 なんと、妖魔を生み出しているのが、シャーマン達だというのだ。

 にわかに信じがたい話だ。

 だが、母親であるダリアの事は、信じたい。

 カイリは、葛藤していた。

 さらに、ダリアは、アライアから、情報を得たという。

 天才研究者であるアライアが、その情報を得たのだ。

 ダリアも、信じるしかないのだろう。


「ですが、どうやって……」


「どうやら、大精霊と妖魔を生み出しているようなの。禁術を使ってね」


「そんな……」


 カイリは、困惑していた。

 仮に、シャーマン達が、妖魔を生み出しているとしたら、どうやってだというのだろうか。

 ダリアは、静かに、答える。

 大精霊の力を使って、妖魔を生み出しているのだと。

 禁術と言うが、カイリは、聞いた事がない。

 ゆえに、愕然としていた。


「その禁術がこれよ」


 ダリアが、書類をカイリに見せる。

 それは、禁術の事が詳しく書かれてあった。


「なっ!!」


 書類に目を通したカイリは、衝撃を受ける。

 そして、体を震わせ始めたのだ。

 信じられないのか、それとも、怯えているのか。

 カイリ自身でさえも、不明であった。


「お互いの力を使って、命を生み出す禁忌術……」


「ええ」


 シャーマンと大精霊が、編み出した禁術とは、お互いの力を掛け合わせて命を生み出す事だ。

 人や精霊を生み出そうと実験をしていたようだ。

 だが、失敗に終わり、妖魔が生み出されてしまった。

 不完全な生命体として。

 それでも、シャーマンと大精霊は、実験を続けている。

 完全な命を生み出すために。

 たとえ、妖魔が、人や精霊の命を奪う存在だとわかっていても。

 と、アライアの報告書には、そう記載されていた。


「どうやって、この情報を入手したのですか?」


「それは言えないらしいのよ。情報漏れを防ぐためにもね」


「……」


 確かに、詳しく記載されているが、このような機密事項をどうやって手に入れたのだろうか。

 そもそも、情報が漏れる事があるのだろうか。

 カイリは、多少、違和感を覚えたようだが、ダリアは、答えない。

 シャーマン達に、知られたくないのだ。

 情報を手に入れたなどと。


「私達の命を狙っている可能性もあるってアライアが話していたわ」


「え?」


 ダリアは、さらに、真実を打ち明ける。

 先ほど、命を狙われているわけではないと、首を横に振ったダリアであったが、狙われている可能性がないとは言っていない。

 だが、それでも、カイリは、信じられなかった。

 なぜ、シャーマン達が、ダリアとコーデリアの命を狙っているのか。


「帝国を手に入れようとしているかもしれないわね」


 ダリアは、推測しているようだ。

 なぜ、シャーマン達が、自分達の命を狙っているのか。

 帝国を自分のものにしたいのかもしれないと。

 本当に、そうなのだろうか。

 カイリは、未だ、信じられずにいた。


「近々、シャーマンと大精霊を呼ぶつもりなの。緊急会議を開きたいってね」


「その日の夜に、彼らを殺せと?」


 ダリアは、話を続ける。

 シャーマンと大精霊をこの帝国に呼び寄せるつもりのようだ。

 実は、エデニア諸島では、妖魔が、出現している。

 それも、頻繁に。

 その問題を解決するための会議だと言ってしまえば、シャーマンと大精霊は、来るであろう。

 問題を利用して、シャーマンと大精霊をカイリに、殺させようとしているようだ。

 カイリは、そう察し、問いかける。


「殺すのは、シャーマンだけでいいわ」


 ダリアは、大精霊を殺す必要はないと、語る。

 なぜ、シャーマンだけなのだろうか。

 カイリは、ますます、理解できなかった。


「お願いよ、カイリ。私達を守って」


「……少し、考えさせてください」


「わかった。ゆっくり、考えてちょうだい」


「……はい」


 ダリアは、カイリに懇願する。

 自分とコーデリアを守ってほしいと。

 そう言えば、カイリは、承諾すると思っているのだろう。

 だが、カイリは、承諾することはなかった。

 少し、考えたいと懇願したのだ。

 まだ、混乱しているのだろう。

 ダリアは、承諾した。

 カイリは、うなずき、部屋を後にした。

 ダリアを残して。

 その時であった。


「おやおや、信じてもらえないようですね」


 アライアの声が聞こえる。

 誰もいないはずなのに。

 だというのに、ダリアは、驚きもせず、笑みを浮かべている。

 最初から、知っているかのようだ。

 すると、アライアが、ダリアの前に、姿を現す。

 魔法で、姿を見えなくしていたようだ。


「これも、予想通りよ。後は、任せるわ。アライア」


「かしこまりました」


 カイリは、承諾しなかった。

 真実を受け入れられず。

 だが、それすらも、ダリアにとっては、予想通りだったようだ。

 カイリの性格を知ってのことだろう。

 と言っても、このままでは、カイリが、承諾しない可能性もある。

 ゆえに、後の事は、アライアに任せることにしたダリア。

 アライアも、笑みを浮かべて、うなずいた。



 その日の夜、カイリは、部屋で思考を巡らせている。

 シャーマン達の事を考えているのだろう。


――本当に、彼らが、そんな事をしているのだろうか……。


 カイリは、信じられないようだ。

 当然であろう。

 シャーマン達も、大精霊達も、島を守るために、結界を張り、島の民を守り続けてきたのだ。

 そんな彼らが、妖魔を生み出しているとは到底思えなかった。

 だが、ダリアが、嘘をついているとも思えない。

 何が真実なのか、カイリは、理解できず、混乱していた。

 その時だ。

 ノックの音が聞こえてきたのは。


「はい」


 カイリは、警戒しながらも、扉を開ける。

 すると、アライアが、扉の前に立っていた。


「やぁ」


「アライア」


「少し、話がしたいんだ。部屋に入っていいかな?」


 アライアは、カイリに尋ねる。

 話がしたいと。

 この時、カイリは、まだ、知らなかった。

 ダリアが話したことも、アライアが部屋に来たのも、カイリを騙すための、巧妙な手口であった事に。


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