表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽園世界のヴァルキュリア―黎明の少女達―  作者: 愛崎 四葉
第二章 ヴァルキュリア編・後編
29/76

第二十九話 異変

 ルチアが、突然、倒れてしまった。

 クロウがルチアを抱きかかえ、ヴィオレットとクロスは、帝国の研究所へたどり着いた。


「ルチア!!しっかり!!」


 ヴィオレットは、ルチアへと必死に声をかける。

 だが、ルチアは、眠ったままだ。 

 研究所に入ろうとしたヴィオレット。

 だが、クロスとクロウは、止められてしまった。

 関係者と許可を得た者以外は、入る事を禁じられているのだ。

 ゆえに、ヴィオレットは、ルチアを抱きかかえ、研究所に入った。

 すると、研究者が、ルチアとヴィオレットを待っていた。

 ルチアをベットへ寝かせ、治療を始める。

 ヴィオレットは、ただ、見ているしかなかった。

 だが、その時だ。

 女研究者が、部屋に入ってきたのは。


「アライア研究室長!!」


 研究者達が、目を見開く。

 なんと、入ってきた女研究者が、アライアだったのだ。

 ヴィオレットは、初めて、アライアと対面した。

 だが、アライアは、ヴィオレットに目を向けることなく、ルチアの元へと歩み寄った。


「ルチアは?」


「眠ったままです」


「そう」


 アライアは、研究者達に状況を確認する。

 ルチアは眠ったままだと知ったアライアは、ルチアの事を研究者達に任せて、ヴィオレットの元へと歩み寄った。


「君が、ヴィオレットだね」


「はい」


「あとは、私達に任せて。君は、カレンに報告しに行ってくるといい」


「ですが……」


「いいから」


 アライアは、ヴィオレットに、カレンの元へと報告しに行くように、告げる。

 だが、ヴィオレットは、躊躇したのだ。

 ルチアの事が心配なのだろう。 

 当然だ。 

 ルチアは、家族同然なのだから。

 だが、アライアは、戻るように告げた。

 まるで、冷たく突き放すように。

 アライアは、そのまま、ヴィオレットに背を向けた。

 ヴィオレットの返事を聞くことなく。


「あの、お聞きしたいことがあるんです!!」


「何?」


 ヴィオレットは、意を決して、アライアに問いかけた。

 わかっている。

 アライアは、ルチアの治療に取り掛かろうとしていることは。

 それでも、知りたいことがあったのだ。

 ヴィオレットに呼び止められ、アライアは、苛立ったように、振り向いた。


「ルチア、最近、具合が悪かったんです。あの子、何も言ってくれなくて……」


「……」


 ヴィオレットは、語った。

 最近、ルチアの具合が悪かったことを知っていたから。

 頻繁に、研究所にも通うようになっていた事も、知っている。

 ゆえに、問いかけたのだ。

 アライアなら、知っているのではないかと。

 だが、アライアは、黙ったままであった。


「何か、あったんですか?」


「大丈夫。その件については、こちらで、調べてるから」


「え?」


 ヴィオレットは、再度、問いかける。

 だが、アライアは、詳しく答えようとしなかった。

 今、調べている最中だと。

 ヴィオレットは、あっけにとられていた。

 状況を理解できずに。

 何か、知っているのではないかと思っていたが、違っていたのだろうかと。

 ヴィオレットは、混乱し始めた。


「さあ、もういいかな?」


「あ、はい……」


 アライアは、ヴィオレットに告げる。 

 今すぐにでも、ルチアの治療に取り掛かりたいと言いたいのだろう。

 ヴィオレットは、察して、部屋から出た。

 だが、ヴィオレットは、まだ、知らなかった。 

 アライアが、不敵な笑みを浮かべていたなどと。



 ヴィオレットは、研究所を出たが、クロスとクロウの姿は見当たらなかった。

 どこかに行ってしまったのだろうか。

 ヴィオレットは、途方に暮れ、王宮の待機室へと向かった。

 王宮の待機室へ入ったヴィオレット。

 待機室には、カレンが、待っていた。

 ヴィオレットを待っていたようだ。


「カレン……その……」


 ヴィオレットは、珍しく口ごもってしまう。

 なんと話せばいいのか、わからないのだろう。

 まさか、ヴァルキュリア候補達が、妖魔になったとは、言えるはずがないのだ。

 カレンは、ヴィオレットの心情を察したのか、穏やかな表情を浮かべて、ヴィオレットの元へと歩み寄った。


「話は聞いているわ。怪我はない?」


「私は、大丈夫だ。だが、ルチアが……」


 カレンは、ヴィオレットを気遣う。

 ヴィオレットは、うなずくが、ルチアの事を想うとやるせないのだろう。

 後悔しているのだ。

 やはり、強引に問いかければよかったと。

 そうしていれば、ルチアは、倒れなかったかもしれない。

 ヴィオレットは、自分に対して、怒りを覚え、拳を握りしめた。


「辛かったわね……」


「……」


 カレンは、ルチアの事を聞かされている。

 ゆえに、ヴィオレットの気持ちが、痛いほどわかるのだ。

 カレンも、ルチアの様子に気付いていたが、それ以上は、問いかけられなかった。

 後悔しているのだろう。

 ヴィオレットは、唇を噛んだ。

 悔しくて、悔しくて。


「彼らも、辛いと思うわ。自己防衛とは言え、彼女達を殺してしまった事を、悔いていたもの」


「え?」


 カレンが、衝撃的な言葉を口にする。

 なんと、逃げ出したヴァルキュリア候補達は、クロスとクロウが、違うというのだ。

 事実とは、異なっている。

 ゆえに、ヴィオレットは、驚愕し、動揺した。


「い、今、なんて……。クロスとクロウが、あいつらを?」


「ええ、本人達からそう聞いてるわ。一緒にいたんでしょ?」


「あ、ああ」


 ヴィオレットは、戸惑いながらも、カレンに問いかける。

 実は、カレンは、研究所に来ていたのだ。

 ルチアの事を心配して。

 その時に、クロスとクロウに遭遇した。

 事情を聞かされたのだ。

 ヴァルキュリア候補達が、自分達に襲い掛かったため、殺してしまったと。

 説得を試みたが、通じなかったと。

 もちろん、それは、偽りだ。

 殺したのは、ヴィオレットとルチアなのだから。

 だが、何も知らないカレンは、違和感を覚えたのか、ヴィオレットに問いかける。

 ヴィオレットは、話を合わせる為、うなずいた。


「どうして……」


 ヴィオレットは、拳を握りしめる。

 何が起こっているのか、わからないのだろう。

 なぜ、ルチアが、倒れてしまったのか。

 クロスとクロウは、真実を隠してしまったのか。

 ヴィオレットは、混乱していた。



 その頃、ルチアは、目をきつく閉じる。

 意識を取り戻したようだ。


「ん……」


「ルチア!!」


 ルチアは、ゆっくりと目を開ける。

 だが、意識は、ぼんやりとしているようだ。

 彼女のそばにいたのは、アライアではない。

 なんと、アマリアだ。

 アマリアは、ルチアの顔を覗き込んでいた。


「アマリア様。どうして」


「貴方が、倒れたって、聞いたから……」


 ルチアは、ゆっくりと起き上がる。

 なぜ、アマリアが、ここにいるのか、状況を把握できないのだろう。

 アマリアは、説明した。

 ルチアが、倒れたと聞いて、研究所まで駆け付けたのだ。

 ルチアを心配して。


「何があったのですか?」


「私……」


 アマリアは、ルチアに問いかける。

 何が起こったのか。

 ルチアは、思い出し、説明しようとした。

 だが、その時であった。


「あれ?」


「どうしたのですか?」


「思い出せない。クロス達と、あの子達を追いかけて、その後は……」


「……」


 ルチアは、思い出そうとするが、思い出せなくなっていったのだ。

 クロスとクロウと再会を果たしたことは覚えている。

 その後、レジスタンスのアジトでヴァルキュリア候補を見かけて、追いかけた事もだ。

 だが、その後の事が、どうしても、思い出せない。

 何があったのかを。

 アマリアは、悟ってしまった。

 ショックを受けて、記憶障害が発生したのだと。


――私、何をしたんだっけ?なんで、倒れたんだっけ……。


 ルチアは、思い出そうとする。

 だが、どうしても、思い出せない。

 あの後、何があったのか。 

 なぜ、倒れていたのか。

 ヴィオレット達は、どうなってしまったのか。

 思いだそうとするが、全く、思い出せなかった。


――違う。知りたいのは、そんな事じゃない。そうだ。私……。


 何が起こったのかを、思い出す事も、大事だ。

 だが、ルチアは、他に知りたいことがあったのではないかと、推測した

 思考を巡らせるルチア。

 その時だ。

 自分の胸に手を当て、研究所を見回す。

 なぜ、自分が、ここにいるのかを悟ったのだ。

 自分の身に何か、あったのではないかと、悟って。


「あの、アマリア様、私、魂の方は、どうなって……」


 ルチアは、アマリアに問いかけた。 

 今、自分の魂は、どうなっているのか。

 気を失い、ここにいるという事は、何か、異変が起きたのではないかと悟った。

 アマリアは、うつむいてしまう。

 やはり、何かあったようだ。

 ルチアは、息を飲み、覚悟を決めた。

 どんな話を聞かされることになっても、受け入れると。


「ルチア、落ち着いて聞いてください」


「はい」


 アマリアは、静かに声をかける。

 まるで、ルチアの心を落ち着かせるかのようにだ。

 ルチアは、静かに、うなずき、アマリアの答えを待った。


「……貴方の魂は、完全に、融合しました」


「え?」


 アマリアは、重たい口を開ける。

 なんと、ルチアの魂は、神の力と完全に融合したというのだ。

 ルチアは、驚き、あっけにとられていた。


「神魂の儀をやる時が、来たんです」


 ついに、ルチアが、死を迎える時が来てしまった。

 神魂の儀によって。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ