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楽園世界のヴァルキュリア―黎明の少女達―  作者: 愛崎 四葉
第二章 ヴァルキュリア編・後編
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第二十三話 ルチアの本心

「あの、それって……」


「神魂の儀が、近いってことよ」


 ルチアは、戸惑いながら、問いかける。

 動揺しているのだ。

 女研究者は、静かに、答えた。

 申し訳なさそうに。

 神の力と融合した魂に、体が、まだ、耐えられないため、眩暈が、起きるようだ。

 ルチアは、事情を把握したのか、黙ってしまった。


「怖いわよね?死ぬってことだもの。でもね、ヴァルキュリアにとっては、名誉な事なの。だって……」


「わかっています。死ぬのは、怖くありませんから」


 女研究者は、ルチアを気遣う。

 誇り高き事とはいえ、神魂の儀を行うという事は、死ぬという事だ。

 死を受け入れられるものは、少ないだろう。

 歴代のヴァルキュリアも、そうだったのだから。

 決意を固めたものの、いざ、神魂の儀が近いと知らされると、死を恐れ始めたのだ。

 それでも、受け入れ、神魂の儀を行ってきた。

 だが、ルチアは、死を受け入れているようだ。 

 死ぬ事は、怖くなかった。

 誰かを失う方が、怖かったのだ。


「ですが、なぜ、カレン達よりも、先に……」


「そうね、本来なら、こんなにも、早く、融合化が進むのは、あり得ない事だわ」


 ルチアは、疑問を抱いていた。

 カレン達の方が、先にヴァルキュリアになったのに、なぜ、自分の方が先に、神魂の儀を行うことになったのだろうか。

 女研究者は、説明する。

 たった、一年で、融合化が進んだ前例はない。

 早くて、二年くらいだ。


「でも、貴方とヴィオレットは、強い力を持っているの。カレン達よりもね」


「そ、そうなんですか?」


「そうよ」


 女研究者曰く、ルチアとヴィオレットは、強い力を持っているという。

 それゆえに、神の力と馴染んだのだ。

 カレン達よりも、早く。

 ルチアは、驚く。

 女研究者は、静かに、うなずいた。


「だったら、神様は、復活するんですか!?」


「え?」


「知りたいんです、教えてください!!」


 ルチアは、女研究者に問いかける。 

 もし、自分が、神様に、魂を捧げれば、神様は、復活するのかと。

 知りたいのだ。

 神様が、復活すれば、誰も、命を落とす事はない。

 ヴィオレット達が、魂を捧げなくてもいいのだから。


「あのね、あと、一人の魂で、復活するらしいの」


「じゃあ、ヴィオレット達が、魂を捧げなくてもいいんですよね!?」


「え、ええ」


 女研究者は、語る。

 ルチアの魂で、神様は、復活するというのだ。 

 つまり、もう、ヴィオレット達は、魂を捧げなくてもいい事になる。

 死ぬ事はないという事だ。

 ルチアが、確認するように、問いかけると、女研究者は、うなずいた。


「妖魔達も、消滅するんですよね?」


「そ、そうよ」


 神様が、復活するという事は、妖魔が、消滅することを意味している。

 つまり、誰も、妖魔に殺されることはなくなるという事だ。

 ルチアは、その事に関しても、確認するように、問いかけると、女研究者は、戸惑いながらも、うなずいた。


「……だったら、怖くありません。神様が、復活するんだったら」


「本当に、いいの?」


 聞きたいことを聞き終えたルチアは、改めて、決意する。

 全ての者達が、助かるのであれば、死など怖くないのだ。

 自分の魂を捧げる事で、神様が、復活する。

 それは、世界を守る事になるのだから。

 女研究者は、もう一度、尋ねる。

 無理をしていないかと、不安に駆られているのだろう。


「いいんです。後悔しません」


「……」


 ルチアは、断言した。

 後悔など、するはずがない。

 ルチアは、すでに、死を受け入れているのだ。

 女研究者は、黙ってしまった。

 ルチアの魂を捧げるという事は、ルチアを犠牲にするという事だ。

 ゆえに、心が痛むのだろう。

 まだ、若い少女が、犠牲になるのだから。


「今後は、どうすれば、いいんでしょうか?」


「いつもと変わらずに過ごせばいいわ。任務があったら、出撃すればいい。変身したり、力を使うと、また、眩暈が起こるかもしれないけれど」


「そうですか……」


 ルチアは、神魂の儀まで、何をすればいいのか、問いかける。

 だが、何か、特別な事をするわけではないようだ。

 神魂の儀まで、普通に過ごせるという事であろう。

 ただし、眩暈が起こる事はあるが。

 ルチアは、不安に駆られた。 

 もし、眩暈が起こって、ヴィオレット達に迷惑をかけてしまったらと思うと。


「アライア研究室長から、これを渡されてるわ」


「これは……」


 女研究者は、ポケットから、小瓶を取り出し、ルチアに渡す。

 アライアから、言われていたのだ。

 もし、神魂の儀が近づいてきた者がいたら、渡すようにと。

 小瓶の液体は、透明な色をしていた。

 一体、何だろうか。

 ルチアは、思考を巡らせるが、見当もつかないようで、問いかけた。


「魂を安定させる薬よ」


「ありがとうございます」


 女研究者曰く、魂を安定させることができるようだ。

 これで、眩暈が起こらなくなるのだろう。

 ルチアは、お礼を言い、頭を下げた。

 安堵しているようだ。


「今後は、定期的に、ここに来て頂戴ね」


「はい!!」


 女研究者は、ルチアに告げる。

 定期的に、健診に来るようにと。

 ルチアは、うなずき、立ち上がろうとした。

 だが、その時であった。


「あ、いい忘れてたことがあったわ」


「何でしょうか?」


 女研究者が、ルチアを呼び止める。

 一体、何を言い忘れたのだろうか。


「この事は、まだ、誰にも言わないでちょうだい。指示があるまでね」


「あ、はい……」


 女研究者は、ルチアに、警告した。 

 神魂の儀が、近い事は、ヴィオレット達には話すなと、口止めされたのだ。

 ルチアは、戸惑いながらも、うなずいた。

 


 ルチアが、研究所から去った後、女研究者は、ため息をついた。


「もう、良いですよ。ルチアは、帰りました」


「そう」


 女研究者は、呆れながらも、声をかける。 

 誰かが、隠れて、ルチアと女研究者のやり取りを耳にしていたようだ。

 その者は、なんと、アライアであった。

 アライアが、隠れていたのだ。

 あまり、自分の姿を見せたくなかった。

 なぜなら、自分の野望が、見抜かれてしまうのを防ぐため。


「ついに、来たんだね……」


「はい。とうとう、この日が着てしまいましたね。アライア研究室長」


「うん、ついに、ね」


 アライアは、微笑んでいた。

 ついに、時が来たと思うと、うれしくてたまらないのだ。

 魔神が、復活することを知っているのは、アライアのみ。

 他の研究者は、神様が、復活すると思っているのだ。

 魔神ではなく。

 ゆえに、アライアが、微笑んでいる本当の理由を、女研究者は、知る由もなかった。



 ルチアは、部屋へと向かう。

 小瓶を部屋に隠すためだ。


――もし、この事を知ったら、ヴィオレットは、どう思うのかな……。


 ルチアは、不安に駆られていた。

 もし、ヴィオレットが、この事を知ってしまったら、どう思うのだろうかと。

 喜ぶとは、到底思えなかった。

 自分が死ぬのだ。

 それは、ヴィオレットにとって、辛い事だ。

 誇り高きこととはいえ。


――やっぱり、言わないほうがよさそうだね。言うなって、言われてるし。


 ルチアは、時が来るまで、隠し通す事を決意した。

 ヴィオレットの為に。



 その日の夜、アライアは、ダリアの元へと向かった。

 ルチアの事を報告する為に。

 アライアは、ダリアの部屋にたどり着き、ノックした。


「ダリア、いるかい?」


「ええ、いるわ」


「失礼するよ」


 ダリアが部屋にいるか、確認するアライア。

 ダリアの声がする。 

 ダリアは、部屋にいるようだ。

 アライアは、部屋に入った。

 それも、微笑みながら。


「どうしたの?嬉しそうね」


「ついに、時が来たよ」


「そう」


 ダリアは、アライアの笑みを見て、微笑んだ。

 何か、うれしい事があったのではないかと、悟って。

 アライアは、ダリアに報告する。

 端的に。

 それでも、ダリアは、微笑んだ。

 わかったのだ。

 アライアが、何を言いたいのか。


「なら、邪魔者は、消さなければならないわね」


「どうやって?」


 ダリアは、決意を固める。

 自分達も、動く時が来たのだと。

 魔神復活の為に、邪魔者を消さなければならないのだと。

 だが、どうやって、消すつもりなのだろうか。

 アライアは、ダリアに問いかけた。


「大丈夫よ。あの子に任せるわ。私のかわいい息子に」


「そう」


 ダリアは、自分の手を汚すつもりはない。

 ダリアの息子であるカイリにさせるつもりだ。

 皇子であり、暗殺者と言う裏の顔を持つカイリに。

 それを聞いたアライアは、微笑んでいた。

 全てがうまくいくと、推測して。


「さすがね、ルチア。貴方なら、決めてくれると思っていたわ」


 ダリアは、読み取っていたのだ。

 ルチアの心情を。

 一年前の謁見の時に、ルチアは、決意を固めていた。

 その瞳は、迷いがなかった。

 ゆえに、ダリアは、ルチアなら、死を受け入れてくれると確信を得ていたのだ。


「何も、知らずに」


 本当に、ルチアは、知らなかった。

 神に魂を捧げるという事は、何を意味しているのかを。

 ゆえに、ダリアは、微笑んでいた。

 ルチアのおかげで、野望を叶える事ができると、確信していたから。


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