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楽園世界のヴァルキュリア―黎明の少女達―  作者: 愛崎 四葉
第一章 ヴァルキュリア編・前編
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第十六話 別格

「へぇ、あっけないもんだな」


 ルチアとヴィオレットは、倒れ込んでいる。

 彼女達を目にした妖魔は、笑みを浮かべていた。

 一撃で、倒れるとは、あっけなく、弱いものだと。

 彼女達を殺す事は、可能ではないかと思うほどに。


「ルチア、ヴィオレット……」


 妖獣と戦いながら、ルチアとヴィオレットの戦いを目にしたカレンは、どうする事もできず、歯がゆい思いをしていた。

 今すぐにでも、妖獣を蹴散らしてやりたい。

 だが、それすらもできないのだ。

 妖魔は、ルチアの元へと迫る。

 容赦なく。


「うぅ……」


 妖魔は、ルチアの首をつかみ、持ち上げる。

 息をすることができず、ルチアは、苦悶の表情を浮かべた。

 妖魔の腕をつかみ、もがくが、力が思うように出せない。

 このままでは、妖魔に殺されてしまうのではないか。

 ルチアは、危機感を感じ、歯を食いしばりながらも、抵抗を試みた。


「まずは、こいつから、殺してやろうかな」


 妖魔は、ルチアを殺そうとしている。

 殺せると思い込んでいるのだ。

 妖魔は、魔法・エビル・スパークを発動しようとしていた。

 だが、その時だ。

 紫の鎌が、妖魔の首に突きつけられたのは。

 それにより、妖魔は、魔法を中断させた。

 危機感を感じて。


「ルチアから、離れろ」


「ちっ。再生能力か」


 当然、鎌を突きつけたのは、ヴィオレットだ。

 再生能力により、戦闘に復帰できたのだ。

 だが、妖魔は、舌打ちをし、苛立つ。

 ヴァルキュリアの再生能力を知っているようだ。

 彼らは、何者なのだろうか。

 妖魔は、ルチアを解放するが、その直後、ヴィオレットの鎌をつかむ。

 そして、豪快に、振り回し、ヴィオレットを吹き飛ばした。


「ぐっ!!」


 ヴィオレットは、地面にたたきつけられる。

 全身に激痛が走り、ヴィオレットは、思うように、体を動かせなかった。

 それでも、彼女は、激痛に耐えながらも、鎌をつかみ、立ち上がる。

 ルチアを守るために。


「ヴィオレット!!」


 突如、呼吸ができるようになり、咳き込むルチアであったが、ヴィオレットの危機を感じて、ヴィオレットの元へと駆け寄る。 

 ヴィオレットを守ろうとしているのだ。


「ルチア、大丈夫か?」


「う、うん」


 ヴィオレットは、ルチアの身を案じる。 

 心配しているのだろう。

 だが、ルチアにも、再生能力が備わっている為、すぐさま、回復したのだ。

 ヴィオレットも、再び、再生能力が、発動され、傷が癒えた。


「こいつ、厄介だな」


「うん。でも……」


 ルチアも、ヴィオレットも、舌を巻く。

 この妖魔は、厄介だと推測しているようだ。

 自分達だけでは、追い詰められないほどに。

 だが、カレン達は、今でも、妖獣達と戦いを繰り広げている。

 倒しても倒しても、妖獣は、増え続けるのだ。

 妖魔が、居る限り。

 ゆえに、自分達だけで、妖魔を倒すしかなかった。


「私達なら……」


「やれるよね!!」


 追い詰められているというのに、ルチアも、ヴィオレットも、笑みを浮かべている。

 まるで、自分達なら、勝てると思っているかのようだ。

 なぜ、笑みを浮かべているのだろうか。

 策があるのだろうか。

 カレン達には、全く、予想できず、困惑していた。


「何、笑ってんだよ!!」


 妖魔は、苛立ったようで、ルチアとヴィオレットに襲い掛かる。

 追い詰められているのは、間違いなく、ルチアとヴィオレットだ。

 だというのに、なぜ、笑っていられるのだろうか。

 自分に勝てるとでも、思っているのだろうか。

 そう思うと、勘違いも甚だしい。

 妖魔は、怒りに駆られ、ルチア達に向かって、魔法を放とうとした。


「はっ!!」


 ルチアは、ヴィオレットの前に出て、魔法・ブロッサム・ショットを発動する。

 だが、妖魔は、いとも簡単に、回避してしまう。

 ルチアは、魔法を発動し続けるが、妖魔を直撃する事はなかった。


「だから、甘いっての!!」


 妖魔は、ルチアに迫り、魔法・エビル・スパークを発動しようとする。

 ルチアを仕留めるつもりだ。

 だが、ルチアは、回避しようとしない。

 背後にいるカレン達や島の民を守るためなのだろうか。

 どのような理由にしても、妖魔にとっては、好都合であった。


「甘いのは、どっちだ?」


「何?」


 ヴィオレットの声が聞こえる。

 それも、妖魔の背後から。

 妖魔は、驚き、振り向く。

 なんと、ヴィオレットが、妖魔の背後に立っていたのだ。

 いつの間に、妖魔の背後に回っていたのだろうか。

 ルチアばかりに気をとられていた妖魔は、思考を巡らせても、見当もつかなかった。


「はっ!!」


「うがっ!!」


 ヴィオレットは、魔技・スパーク・ブレイドを発動する。

 さすがの妖魔も、回避する事はできず、刃と化したオーラに斬られた。

 妖魔は、血を吐き、うずくまる。

 妖魔に一矢報いた瞬間であった。


「い、今のは、囮か!?」


 妖魔は、推測した。

 ルチアは、回避しようとしなかったのは、囮となっていたからだ。

 何度も、魔法を連発していたのも、ヴィオレットが、移動した事を気付かせないため。

 全ては、二人の連携によるものだ。

 妖魔は、いつの間にか、ほんろうされていたという事に気付いていた。


「だったら!!」


 妖魔は、まがまがしい力を発し、ルチアとヴィオレットに襲い掛かる。

 二人は、そのまま、後退し、距離を取るが、今度は、妖魔が、ヴィオレットに襲い掛かった。

 魔法・エビル・スパークを発動して。

 だが、ヴィオレットは、妖魔の魔法に反応し、すぐさま、魔法・スパーク・スパイラルを発動したのだ。

 二つの魔法はぶつかり合い、妖魔の魔法が消し飛ばされる。

 ヴィオレットの魔法は、妖魔へと襲い掛かった。


「甘いな。同じ魔法だったら、私の方が上だ」


「く、くそ……」


 確かに、同じ魔法であれば、相殺されるはずだ。

 だが、ヴィオレットは、ヴァルキュリアになった事で、戦闘能力が上がっている。

 ゆえに、妖魔の魔法よりも、上回っているのだ。

 妖魔は、思わず、歯噛みをした。

 思うようにいかなくなって、苛立っているのだろう。


「それよりも、いいのか?私ばかりに気をとられていて」


「なっ!!」


 ヴィオレットは、妖魔に問いかける。

 相手は、ヴィオレットだけではないと言いたいのだろう。

 妖魔は、気付いてしまった。

 もう一人の存在を忘れてしまっていたのだ。

 危険を感じ、あたりを見回す妖魔。

 ヴィオレットは、その間に、妖魔と距離を取る。

 妖魔は、苛立ちながら、上を見上げると、なんと、ルチアが、跳躍していたのだ。

 妖魔を仕留める為に。


「しまった!!」


「やっ!!」


 妖魔は、あっけにとられていた。

 油断してしまったと。

 ルチアは、そのまま、回し蹴りを放ちながら、魔技・ブロッサム・ブレイドを発動する。 

 刃と化したオーラは、見事に、妖魔を切り裂き、妖魔は、吹き飛ばされ、地面にたたきつけられた。

 ルチアは、そのまま、地面に着地した。


「ルチア!!」


「ヴィオレット!!」


 ルチアとヴィオレットは、互いの名を呼ぶ。

 作戦を言う必要はない。

 ルチアとヴィオレットは、お互いが、何をするか、わかっているのだから。

 目を合わせるだけでわかるようだ。

 二人は、同時に地面を蹴る。

 妖魔は、起き上がるが、すでに、ルチアとヴィオレットが、妖魔の元へと迫っていた。


「「はあああああっ!!」」


 ルチアとヴィオレットは、同時に、固有技を発動する。

 ルチアのブーツが、ヴィオレットの鎌が、宝石の刃と化す。

 そして、二人は、同時に、妖魔を切り裂いた。

 二人に斬られた妖魔は、目を見開いたまま、膝をつき、光の粒となって消滅した。

 妖魔を倒したことにより、妖獣が生まれなくなった。

 今がチャンスだ。

 カレン達は、一斉に畳みかけ、妖獣達は、消滅した。


「す、すごい……」


「あの子達、強いわねぇ……」


 息を整えながらも、カレンは、ルチア達の方へと視線を向ける。

 正直、あきらめかけていたのだ。

 このまま、ルチアとヴィオレットは、負けるのではないかと。

 だが、自分達が、思っている以上に二人は強い。

 セレスティーナも、二人の強さを認めていた。

 改めて。


「へぇ、やるじゃん」


「一時は、焦ったけどね」


 ベアトリスも、感心しているようだ。

 実の所、二人の新人だけで、妖魔を倒したという話は、聞いた事がない。

 ルチアとヴィオレットが、初と言うわけだ。

 ライムは、安堵した様子で、ルチアとヴィオレットの方へと視線を移した。

 それも、嬉しそうに。


「やったね、ヴィオレット」


「ああ」


 初めて、妖魔を倒したルチアとヴィオレット。

 二人は、嬉しそうだ。

 当然だろう。 

 妖魔を倒せたのだ。

 島の民を守れたのだ。

 こんなにうれしい事はないだろう。

 ルチアとヴィオレットは、ハイタッチをした。

 笑みを浮かべながら。



 王宮では、ダリアが、目を閉じていた。

 実は、魔神の力を使って、ルチア達の様子をうかがっていたのだ。

 ルチアとヴィオレットは、妖魔を倒せるのか、見極めていたのだろう。


「ふふ、さすがね。あの子達の強さは、別格だわ」


 ダリアは、満足しているようだ。

 ルチアとヴィオレットの強さに。

 彼女達は、特別だ。 

 だからこそ、別格だと言えるのだろう。 

 なぜ、特別なのかは、不明だが。


「このままうまくいけば、魔神は、復活するわね」


 ダリアは、確信を得ていた。

 このままうまくいけば、魔神は、確実に復活すると。

 ルチアか、ヴィオレットの魂で。


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