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幸せなひととき

本日二話更新していますのでご注意ください。


※本日は書籍発売日です。イラストを担当してくださったbun150先生のあとがきイラストがあまりにも素敵だったので、つい触発されてしまいました。これだけでもSSとして読めますが、ご購入くださった方は素敵あとがきイラストと合わせて楽しんで頂ければと思います。私は二人を見守る木になりたい※



「ロイ、これ持っていっておくれ」


 家でダラダラしていると母さんにカゴを押しつけられた。

 良い匂いがして、思わずかけられた布を捲ってみると美味そうなパンが入っていた。

 焼きたてのパンだ。

 村では何でも多く作ってはお裾分けしあっている。

 いつもパンを貰っている村長の家に、今日はお礼で持っていけということだった。


「美味そう。一個食いた……」

「駄目だよ!」


 パンに手を伸ばすと、母さんに思いきり叩かれた。

 痛いんだけど!


「っていうかさ、こういうの持っていくのはねえちゃんの仕事だろ! おれは嫌だからね!」

「アリアは今ルークと休憩中なんだよ。今日は朝から畑仕事を頑張ってくれたから、今回はあんたが行きな!」

「ええ!」


 母さんはおれに命令するとどこかへ出掛けていった。

 くそっ、おれだって疲れてるのに!

 ……遊び疲れだけど。

 絶対におれは行かないからな。

 これはねえちゃんの仕事だ。

 ねえちゃんとルークが休憩するなら、裏の木のところで休んでいるはず。


「ねえちゃんにおしつける!」


 おれはすぐに二人がいるとアタリをつけた裏へと向かった。




「やっぱりいた」


 家の裏にはちょっとした草っ原があって、大きな木が生えている。

 その木の下が木陰になって寝転がると気持ちが良いのだ。

 おれもよく昼寝をする。


 今日はそこに二人の姿があった。

 寝転がってのんびりしているようだ。

 おれがおつかいをおしつけられているのに! と鼻息荒く近寄ってみると……。


「……あ」


 二人は気持ちよさそうに寝ていた。

 ……ねえちゃんがルークの腕にくっついて。


 いつもはルークに偉そうにしているねえちゃんとは違って、なんというか……甘えているというか……。

 そんな風に見えて、なんだか見てはいけないものを見てしまった気がして顔が赤くなった。

 ええ……ねえちゃんこんな感じになったりするの……。


 ルークは手ぬぐいをとっていて、いつもは飯の時にしか見えない整った顔が見えていた。

 かっこいいよな……と眺める。

 隠すのが勿体ない、絶対モテるのに。

 なんて思っているとパチッとルークの目が開いた。


「……っ」


 見ていただけで悪いことをしたわけではないのだがビクッとしてしまった。

 ルークの目がこちらを見る。

 言い訳をしようかどうか迷っていると、ルークがねえちゃんがくっついていない方の手を動かした。

 人差し指を口の前に持ってきて……。


『シー』


 声を出さずそういうと微笑み、ねえちゃんを見た。

 ねえちゃんを起こすな、ということらしい。

 それは分かったのだが……。


 ルークのその様子がなんだか凄く綺麗なものに見えて、寝ているねえちゃんを見ている表情も綺麗で、またまたなんだか見てはいけないものを見てしまった気になった。

 顔もまた熱くなる。

 おれはなんとかこくこくと頷くと、ルークは目を閉じた。

 ちょっとだけねえちゃんに更に身体を寄せて。


 気がついたらおれは村長の家に向けて出発していた。


「ああっ、もう!!!!」


 くそっ、おつかいなんて行きたくないのに!

 邪魔しちゃ悪いとか思わせるなんて卑怯だ!

 明日はおれの仕事、全部二人におしつけてやる!


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