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飽きない日々を求めて ~異世界で最強になってみた~  作者: 夢幻
8章 僕の支え(トレイル)
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一人語り

※8月1日 サブタイトルの変更をしました


話はあまり進まず、ただただ話が書かれているだけ。

何がしたいんだろうね、私…。

「〈燃焼増減メタング〉!」

「……うっ…………ふぅ…」


 王女様との約束を終え魔法の性能を感じてもらった僕は、アルスさんに魔法をかけた。急に増やすと体に負荷をかけるので、かからないぎりぎりのところで留めておいた。話すことは出来るだろう。僕は後ろを向いた。王女様がいる方だ。


「では、私が質問させていただき――」

「お願いがあります」

「………何よ」


 ジト目でこちらを見てくる。僕としては理由があるんだけどね。


「二人で話をさせてほしい」

「どうして?」

「他に聞かれたくもないようなことをあいつが訊くんだ」

「ほうほう、そう言われると余計聞きたくなるわね」


 どうやら聞く耳持たないらしい。僕としては、二人にさせることが話が進みやすそうなんだけどな。


「ちょっとした昔話をするんだとさ。詳しいことは僕もよく知らないから何とも言えないけど」

「………ますます意味が分からんのだよ」


 これだと拉致があかない。どうすれば…


「…いや、聞いてもらっても構わない」

「いいのか?」

「…もう過去の話さ。さらに今とは別人だし」

「………まあ、お前がいいなら」


 どうやら余計なお世話だったらしい。僕がでしゃばるところじゃなかったな…。

 ユウが後ろを振り返り真面目な顔で話した。


「…俺からあいつに訊いていいか?」

「………何かあるのね。いいわ、譲ってあげる」

「…感謝する」


 あっさりと譲る王女様。なんであいつは良くて僕は駄目なんだろうか…。膝をつく僕を無視してユウはアルスさんに近づく。そして、しゃがみアルスさんと同じ高さになった。ちょっとアルスさんがイラっとした、気がした。


「…久しぶりだな」

「………誰だお前?」


 王女様も含む城の人達はみんな驚いた。知り合いだとか言っていた人が実は全く縁のない人だった、ように見える。僕も彼女らの立場なら訝しんだりするだろう。

 というか、僕はアルスさんが男っぽい話し方をする人と知って驚いた。おとなしい人だと思ってたんだけど………よく見たらそんなこともないか。


「…顔が違ってるからそりゃあわかんないよな」

「あ? 一体どういうことなん――」


 アルスさんが言い終わる前に先に言った。


「…黒の光、白の雫」

「!」


 アルスさんが目を見開いた。驚いているようだ。それでもユウは止めない。


 そう、()は止めない。手の触れ合う距離で、目の前で、若干涙を流している人がいても。


「…悲しみは涙を示す。喜びは笑顔を示す。されども、逆を示す場合もある」


 悲しくても笑顔でいようとする。いや、悲しいから笑顔を振りまいてしまう。嬉しくても涙を流す時がある。安心、不安、結果、失望、感謝、嫉妬…。様々な感情が入り乱れ起こりえる。あの時、アルスが言っていた言葉。


「…何かを願うときは、その気持ちを強く持ち続けなければならない。自分を見失わないために」


 何度も見失い、探し出せず、結果自分でも自分がよくわからなかった。それでも思い続ければきっと手に入る。単に諦めの悪いだけだ。だけで、それでもかまわない。


「…何かを得たいときは、それにより起こりえる気持ちを想像し、それを見越して行動すればいい。自分が正しいと誇れればそれでいい」


 自分が何をしたいのか、何をするべきか、よくわからなくなり一人で飛び出した、そんな俺を支えてくれた。そして、紡いでくれた言葉。


「…この言葉は今まで一度も忘れたことはない。だって、君が俺のためだけに言ってくれた言葉だったから」








 アルスは男っぽいところがあったが、それでも王都では人気があった。人付き合いがしやすく、いつも場を和ませてくれていたからだろう。そんな中、城の軍部に入ったころの俺はそういうことには興味がなかったし他人との距離感が掴めなかったことから、みんなと離れて一人でいた。そんな俺に気を使ってくれたのかアルスはあまり近づこうとはしてこなかった。それでも、たまには話しかけてくれた。その優しさに少し胸が痛んだ。


 この軍に入れたのが才能のおかげだった俺は家の勧めで城に来たのは良かったのだが、何もやることはなかった。そんなんだから俺は自分が嫌になったのだろう。気づけば誰かの顔を見るのが嫌いになった。単に怖かったからだ。人の顔をうかがうのが。………今思えば昔の俺って典型的なキモヲタだな(笑)


 そんなある日、やる気がなさそうに見えたからだろう、訓練中に隊長からこんなことを言われた。


「お前は何のためにここへ来たんだ?」


 どうしてかわからなかったがその言葉は俺の心に深く突き刺さった。今でもあまりよくわからなかった。同じようなことを何度も言われてきたはずなのに、何故かあの時は、辛かった。


 何も答えられなかった俺は城の寮へ帰るよう言われた。隊長には実力を認められていたし嫌われてもいなかったのだから、きっと頭を冷やして今日は休めってことだっただろう。だが、その時の俺にはこう解釈した。


「やる気のないやつはここにはいらん! さっさと軍から外れてここから出ていけ!」


 俺は自分が情けなくなり、自分の荷物も放っておいてそのまま飛び出した。門番の人などに呼び止められたが振り向きもしなかった。ただ、一心不乱に気を紛らすように駆けて行った。


 一時間ほど走り、いつの間にか森の中へはいっていた。ここらへんは魔物が強いわけでもないので気を抜いて木の上で横になった。そこで何度も自分に問うた。「俺は何がしたいのか?」と。だが、結局のところ何もしたいとは思えなかった。辺りも暗くなり、ここに居ても仕方ないのでどうしようかと考えだした頃に、アルスがやってきた。


 そこでアルス俺に問いかけ、飛び出した理由を言った。その時に彼女は言った。


 この言葉は決して俺の話を聞いた答えになるものではない。だけど、俺の中で何かが合致するような感覚に陥った。自分を探すきっかけを見つけた気がした。


 その後、アルスに連れられ城に帰った時、軍のみんなが心配してくれていたことを知った。俺がいないのを夕方に気づき、いろんなところを探していたらしい。自分のためにしてくれたみんなに申し訳なくなったが、みんなは笑顔であった。俺はそれがとても羨ましくなった(・・・・・・・)。たぶん、俺が得たかったのはこれなのだろう。俺はこの時理解した。








「…一度死んで二度目得た命は昔のノトスとは違うだろう。顔も、種族も、スキルも…。だけど、俺は、あの時から何一つ変わっていない。それをお前には伝えたかった」


 そして、助けてもらったあの後、任務が入りアルスが遠出することになり、うやむやになって言えなかったことを言わなければならない。けじめとして、友として。


「…ありがとな。あの時言ってくれたおかげで今の俺がいる。自分のやりたいを得てこれた。本当にありがとう」


 俺の二人目(・・・)の感謝だ。

次こそは話を進ませたいです。話も脱線してるし。

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