燃焼増減
みなさん、そろそろ夏休みですか? 私は夏休みなのに毎日が忙しいです。受験というのははたしてこんなに忙しいのか…。今まで成り行きで高校まで行くことが出来た身としては初めての受験でとまどっています。これを機に時間に厳しくなれたらなって思います。
やせ細った女性――アルスさん――を見た僕は思わず驚いてしまった。ここまで細くなれるのかってくらいに細い。体重が30あるか危ういくらいだ。
そんな体系になっているのにも関わらずユウはあまり驚いていない。どうしてなんだ?
「痩せることはアルスさんにとって当たり前なのか?」
「…こいつのオリジナルだ。使うたびに自分の体脂肪を燃焼していくんだ」
「だからなのか…」
「…だがそこまで消費は激しくない。つまり、それだけ使わされる状態にまで追い込められたということだ」
「それって…」
どういうことなんだと訊こうとする前にユウはカインに問いただした。
「何があったらここまでになるんだ?」
「俺はこの状態になってからしか見ていない。だからわからないよ。二日前はこんなに細ってなかったんだけどな」
? ますますわからん。
「いつここに送られたんだ?」
「昨日の夜だ」
最近過ぎねえか?
「その時にはもうこの体型だったと」
「……ああ。倒れているのを捕獲されたと聞いている」
話の流れがいまいちわからないな…。
「暗殺はいつのことなんだ?」
「3日前ですね」
「そっから力を使ってずっと逃げてたとすると…」
「…ありえると思う」
ユウがそう答えたのならそうなのだろう。一番アルスさんの力に詳しいんだから。
「とりあえず本人の話でも聞かない? 体型を元には戻せるよ」
「そんなことが出来るのか? 聞いたことないぞ?」
「こいうつのオリジナルだよ。使い勝手がいいのは知っていたがこういうのもいけるのか…」
「ラストヒールじゃないぞ? 前にノインに頼まれて作ったやつだよ」
「…? なんだそれは?」
「見てのお楽しみだよ」
カインが話をつけてくると言って門番のところへ行き、その後その門番が何やら上の人と揉めた後に、許可が下った。条件は第一王女の前で行うこととのこと。………国王の前ではないんだな。
待つこと30分。王女殿下がやってきた。黄色の髪、青色の眼、すらりとした体。少な目に言って美人だった。
「私が第一王女 ルカ=トルス=アルバードです。早速ですが、本当にそのようなことが出来るのですか?」
どうやら王女様は疑心暗鬼でいらっしゃるようだ。仕方ない、モルモットになってもらおうか。
「じゃあ、どなたか試させてもらえませんか? 具体的にやることは体脂肪の増減なんだけど――」
「私が引き受けよう!」
「「「「!」」」」
すぐさま願い出る王女様。それに待ったをかける騎士たち。何人かは疲れた顔をしている。もしかしてこれがいつもなのか?
「どうかおやめください! 騎士の誰かにやらせます故、どうか!」
「いいではないか! 前例があるようだし私にやらせてくれ! 最近私も少し気になってきているのです…」
「なら他に試された後、個人的にお願いすればいいのです! どうしてあなたはいつも――」
しかしここで追い打ちをかけていくのが僕である。
「ちなみにこの魔法、僕の魔力量から予測して一日2回しか使えませんので」
「「「「!」」」」
そこからさらに話が激しくなる。
「アルスを回復させたらあと一人になる。ならやはり私にやらせろ!」
「駄目ですって! なんでも毒見が必要なのです! 特に知らない人族なのですから尚更です!」
「いいではないか! それにこの人をここでこれ以上待たせるのはこちらとしてもまずい。早くさせてあげるべきだ!」
「そんなこと微塵も考えてないでしょ! ちょっとはご自身の身体のことも考えて――」
「考えた結果じゃないか! 体型をよくするという――」
「そういうことを言っているのではありません!」
長い、長い。正直ここまで口論になるとは思ってなかった。てかこの王女様、好奇心なのか美の追求のためかもうわかんなくなってきた…。どっちなんだろ。
その後、なんとか説得したようで王女様が試すことになった。いや、そこは負けるなよ…。てか、どう変えるんだよ…。十分体型もいいと思うんだけどな。綺麗だし。何が問題なんだろ…。
「あくまで体の死亡を変化させるものなので、骨格などは変わりませんよ?」
「それでいいのだ!」
それでもなお止める様子はない。実験体の元がいいとあまり変化がないからわかりづらくて困るんだけどな…。まあ、断ったら処刑されそうだから遠慮するけど。
「それでどこを変えるのですか?」
「それは、私の胸じゃ!」
………えっ。
「え~っと、すみません。聞き間違えたようなのでもう一度お願いします」
「だから胸じゃ!」
どうやら聞き間違いではなかったようだ。
「私の胸は自分で言うのも悲しいが貧相だ。だが、これでももう成長はしないだろう。諦めておったがそこに現れたお主。これはせずにはいられないというわけだ!」
は、はあ…。
「だから頼むのじゃ!」
どうやら決定路線のようだ。周りの皆はため息を吐いている。もしかして、よく言ってたことなのか? てかそんなこと言って大丈夫なのか? こういうのって体外的に気にするんじゃないの? ………気にしないの? あ、はい…。
「わかりました。では、しますね」
あ、言い忘れたことがもう二つあった。
「申し上げにくいのですが、お願いしたいことがありまして…」
「何だ? 言ってみろ」
「実は、このスキルは相手の変えたい部分の肌に直接触れる必要があるのです。流石に上を全部脱いでくださいとは言えないので、すみませんが薄着になってくれないでしょうか?」
「なんだそんなことか。いいぞ」
そう言って服を脱いでいく。ちょ、ここで!?
「殿下、せめて他のところで脱いでください。困りますよ…」
「? なにか問題でもあったのか?」
「いえ。ただ、僕の首が飛びそうだったので怖かったです」
脱ぎ始めて瞬間に騎士の方々が一斉に剣を抜こうとしていたのだ。慌ててカインが止めたが、止められなかったら危なかったぞ。騎士が。
「あともう一つあるのですが…」
「まだあるのか。なんじゃ?」
「先程にも話した通りに変える部分を触ることになります。つまり申し訳にくいのですが薄着とはいえ殿下の胸を触ることになります。それでもよろしいのでしょうか?」
「ああ、それなら大丈夫だ。マッサージと思えばそれでいい」
えっ、いいんですか? 騎士さん、大丈夫なんですか?
「………王女が決めたことだ。我々からは何も言えんよ」
いや、あのですね。そんなに凄まれながら言われても説得力ないんですけど…。いや、本当ならこんなクソガキは即座に斬り落としたいんだろうね。本当にすみません。
「一分もしないうちに終わりますけど、成長の対価にもしかしたら胸が痛みます。その場合はすみません」
「よい。代償を払わずして得ようとは思ってはおらん。それより早く!」
大事なことだから言ったのに、そんなことはいいというくらいで待ち遠しいようでせかされた。
「わかりました。では始めますよ」
「どんとこい!」
どうしてこんなことになったんだか…。
「我が命に応えよ。この世は生を担ぐもの多々あり」
詠唱が全体に必要な魔法のため口に出してさする。
「如何なる時も生は綻ぶ。生の誕生へと誘われる」
イメージを重ねる。変えるイメージ。
「才たる英雄は過労で死する。強者は弱者に狭められる」
「弱者は災いにより死す。病、殺傷、歳月。望み続ける」
「我の生は創造されしもの。故に生を望み、抗い続ける」
「狂え、狂え、狂え。弱者は強者へ勝利を与えん」
「強者は凱歌を求めん。であるなら、眼前の弱者を癒したまえ」
言霊を紡ぎ完成させる。ここに現れるは女性の味方、男性の天敵。刮目せよ!
「〈燃焼増減〉!」
一面を光が覆い、そして人は後にこれをこう呼ぶ――
――光の悪魔、と。
あんなこと言っといて次の回ですでに遅れる。私はもう変わりようがないのかなw
3000くらいなのだからできそうなのにね。何でだろう…。
それより、話が進まないのはどうにかしたい。自分の時間とモチベを誰か、私、に………。




