二度目の生命
目を開けると木の天井が見えた。…何処だ?
取り敢えず身体を起こそうとした。だが、身体が起き上がらなかった。首も足も思うように動かない。
…どうなってるんだ?
すると、女性が俺の顔を覗いてきた。顔は丸くて愛くるしい感じの女性だった。
その人には何故かネコ耳が付いていた。もう一度言う、ネコ耳が付いていた!
………!?
何がどうなってるんだ!?耳は動いてるし生きているようにしか見えない!え、え、何がどうなってんの?
そんなこと考えていると、その女性に抱きかかえられた。…俺ってそんなに軽かったっけ?
すると違和感を感じた。なんとなくだが、何かを失っている。そう思い下を見た。
足が短い。
………………………マジで?
俺はどうやら異世界に転生してしまったらしい。
俺は小さな田舎町の一人っ子としてうまれた。俺の家庭は比較的裕福だった。母も父もお互いを愛している感じだった。…見ていて場が悪く感じていたことが何度もあった。
自分が得た二度目の生命。しかも、ここは異世界。記憶も持っている。………これって小説とかである俺Tueeeのパターンじゃね?そうだろ?主人公だろ?
俺は普通に嬉しかった。心は壊れてしまってるが、この世界はあの世界とは違う。やり直せる、はずだ。親不孝のまま死んだんだ。俺はこの生命、できるだけ大切にしていこう!
そう思い、優等生(風)を演じた。できるだけ親には逆らわず、悪いことをしないようにした。確実に親の負担は減っているであろう。それで安心した。
そして、剣術・体術・魔法・語学知識、様々なことを真面目に独学で学んだ。この世界では右手が動かなくなることもなくて、案外スムーズに覚えることができた。親も手伝ってくれて嬉しかったが、できる限り一人で頑張った。5歳の頃には全てのスキルレベルが7になっていた。真面目に取り組んだ証拠である。
10歳になり、町の外に一人で度々出るようにした。家族には了承も得てるし何も問題はなかった。出た理由は、世界を知るためウロウロしている、としか言えない。
この世界は自然も前より多い。人族、魔族、獣族がそれぞれ街をいくつも作り、火花を散らしあってから約千年が経過している。未だそれは拭えないが、表立って何かが起きているわけでもない。比較的平和だ。
この世界の人も支配欲・征服欲が強い人がいたりとしているが、この世界では全ての人に力がある。努力すれば対処できる。比較的住みやすい。
環境に問題を起こしているというケースは今の所聞いたことがない。そもそもこの世界には環境汚染とかオゾン層とかそういう概念がない。だからこの辺りはわからない。
ただ、これは俺が今いる場所ではそうなだけに過ぎない。他の場所ではどうかわからない。だから、俺はいろんなところを行ってみることにした。…まだ子供のため、遠くには行けなかったけど。
この世界では12歳を過ぎれば成人ということになる。親元を離れて1人で生きていくのもこの頃だという。俺はその時までおとなしくいることにした。家を飛び出して勝手にどっか行く、なんてことはしない。する必要がないから。人生、焦ってはいけない。
そうこうしていると12歳になった。親元を旅立ち、いろんなところを見て回った。…といってもまだ人族のところしか回れていないけど。
魔物しか住んでいない町、奴隷しかいない町、といったよくわからない町もあった。
村人全員が家族、という概念で生きている町もあった。
良くも悪くも人それぞれ、ということを実感した。
日本で見た世界と比べて明らかに住みやすい世界。善悪がはっきりしていて安心して暮らせる。魔物に襲われる、ていう心配もあるけど幸いながら力はある。日々怠らず鍛練はしているため、そうそう負けることはない。
俺にとって苦はない、いい世界だと思った。
俺はこの世界をそんな風に考えていた。
…それは間違いだった。




