異世界マグナ
「ようこそ、アイゼンへ。」
王冠を被った男が言った。
察するにここの王様なのだろう。
見慣れない物がたくさんあり、さっき言っていた「アイゼン」という場所を僕は知らない。剣や杖を持っていることも不思議だ。何が起こったのかは予想がつくが、正直、ここがコスプレ会場とかだと助かる。外国のどこかに本当にアイゼンという地域があったとかならまだいい。最悪の可能性にはならないでくれ。
「みなさんは召喚魔法で呼び出された。」
おいおい、まじかよ、どうすんだよ…。こんなこと言われたらもう認めるしかないじゃないか。
「この世界、マグナとは異なる世界から来られた勇者様方です。」
ここが、異世界だってことを。
「急なことで申し訳ないのですが、私たちに力を貸してほしい。」
てか、周りがやたらと静かだな。こういうのってパニックになってざわざわし出すものだと思ってたんだけど。
「え、なにここ?」
「どうなってるの?」
「これってまさか…」
「グフフ、あの女性、美人だ…。」
どうやらそうでもなかったみたいだ。てか、最後の誰だよ、気持ち悪!
…まあ、神経が太いというか図太いというか。うん、ある意味凄いよ。
「とりあえず、この世界について説明する。」
…ここらへんは同じみたいだ。話がとにかく長い。とりあえずへし折ってまとめてみた。
ここはマグナという世界にあるアイゼンという国らしい
この世界は地球とは違い世界の果てがあるみたいだ、行けた人がいないらしいけど
主にこの世界では人族、獣族、魔族の三種がいるらしく、互いに友好的ではないらしい
そして、魔帝(魔物の王)もいるみたいだ
勇者には魔帝の討伐を最終目標に頑張ってほしい
とのことだった。
何かと抜けている気がするのは僕だけなのだろうか。違和感を感じる。
「申し遅れたが、私はアイゼンの国王であるクルソンだ。以後よろしく。」
いや、名前も気になったのは事実だけどどうして重要なことを言わないの。隠していたいのだろうか。
「発言、いいだろうか。」
後ろから声が聞こえた。振り返ると、そこに相沢友がいた。
相沢友。クラスに男女1人ずついる学級委員の1人。基本真面目で、優しく、リーダーシップも持ち合わせている。洞察力にも長けていて、こういう時には頼りになる人だ。
「僕たちは決して強くありません。本当に戦えるのでしょうか。」
うん、さすがだユウ。本当は違う方をきいてほしかったがそれも大事なのでオッケーだ。
「皆さんには勇者という称号が与えられ、初期ステータスは普通の人の2倍以上とされている。あと、経験値やレベルアップ時のステータス上昇値、スキル成長速度も2倍される。スキルは自分にあったものが最初に身についていることとなっている。また、練習すれば他のスキルも覚えることができる。だから、普通の人よりは確実に強くなるだろう。」
よくある特典だな。てか、2倍多!他になかったのか?とりあえずそれならまだ安心できる。
「他にないかい?」
誰も他にはなさそうな雰囲気だな。はあ、やるしかないか。
「じゃ、僕からもいいだろうか。」
仕方がないので僕が聞くことにした。てか、周りが驚いてるよ。僕が質問するとおかしいのか?
「元の世界に帰る方法についてお聞きしたい。」
こういうのはだいたい帰る方法がわからなかったり、なかったりするのが定番だ。その時の反応によっては信用できるかどうか大きく変わってくる。
「まだ完璧には解析されてないので確証は持てんが、この召喚魔法は魔帝を倒した時に元の世界に帰れるものと思われる。実際、1度しか倒したことがなく、それも1000年もの昔のため本当かどうかわからない。ただ、召喚に成功したのなら、帰れることも間違いではないと思う。」
どうやら、何かの文献を解析してこの魔法に行き着いたということみたいだ。
…胡散くせー。百パーセント嘘とは言い切れないけれど、そういうのって大概が嘘だし。
「なんだ、帰れるのか。」
「てっきりもうずっとここで、と思ったよ。」
「安心したよ。」
え、マジ?これ信じちゃうの?僕、びっくりだよ。
一応何人かは不思議に思っているみたいだが、場の雰囲気を考えてか声には出さないみたいだ。
てか、納得してない人のほとんどが僕の友達じゃん!とりあえず少し安心した。友達があっち側だとどうしようかと思ったよ。
「というわけで、皆さんには魔帝を倒して頂きたい。」
これは多人数が承諾することで僕たちも参加させられる流れだ。どうしよう。正直、王のことはあまり信用できないし今すぐにでも出ていきたいけど…、まだこの世界のことをよく知らないわけだし、ここはしばらく世話になるべきだな。…一応、毒とかには気を付けよう。
「反対する者がいないため全員承諾してくれたものとみなす。これからよろしく頼む。」
…先が思いやられる。
「さて、まずみんなにはこの魔法でできた真珠に触れてもらう。触れることでこの世界にいるものとして扱われ、スキルが使えるようになる。この真珠を触れた後から『ステータスオープン』と唱えると自分のステータスを知ることができる。触れたら光り出すが、光が止むまで触れたままでいてほしい。そうしないと失敗するみたいだ。」
ここでいきなりステータスか。だいたいはオリジナルスキルか、単なる雑魚スキルの2択になるが僕はどっちだろう。普通に強いものとかだと逆に困るな。
何か異質なものでありますように。
ステータスは次回に持ち越しです。
まだいろいろと足りない部分(説明)がある気がしますがこれくらいにしときます。アキの頭が回らなかったということで…。