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飽きない日々を求めて ~異世界で最強になってみた~  作者: 夢幻
3章 僕のしたい方へ(アイゼン~?)
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外伝4 アキ

僕は今まで一度も何処で産まれたとかそういったことを訊いたことがなかった。訊かないことのほうがいいような気がしていたから。ただ、どうしても気になった僕は訊いてしまった。それが自分の考え方を変えてしまうことにその時の僕には気づかなかった。






僕は産まれた後、自分の親だと名乗る人に病院で引き渡され、兄と両親と僕と4人で住んでいた。家は裕福でも貧乏でもない普通の家庭で育てられた。


母は主婦としての仕事を毎日こなす日々を送っていた。いつも笑顔で優しい母だった。ただあまり言いたくないが、一人になると負の感情が表に出て、荒れることがたまにあった。少し可哀想だった。僕が赤ん坊の時に母はあまり僕のことを気にせずにしていたため、何度か見たことがあった。…過去、現在に何かあったのだと思った。


父は忙しくてあまり顔を見ることがなかったが、あまり気にはならなかった。父の仕事はシステムエンジニアだと聞いていた。実際に現場を見たことがないため本当かはわからないが、まあ、そうなのだろう。


兄は頭がいいわけでも運動がいいわけでもないが別に悪いところはない、なんというか、凡人だった。ただ、毎日をそれなりに楽しんでいたみたいなので大丈夫だろうと思った。…今後は心配だけど。


僕が3歳になると母が子供を一人産んだ。小さな女の子だった。妹に対して萌えを感じる訳ではなかったし、年齢的にもそんな事を考えていない歳なので、家族が一人増えるのか、ぐらいの感覚でしかなかった。


小学生になり、周りのことを少しずつ理解していくようになり、僕は自分の家庭のことが気になり始めた。

僕に何か隠し事をしている気がしていたのだ。ただ、何か重大なことである気がしたので踏み込みづらく、訊くことができなかった。


中学生になり、兄は大学に行き、妹は小学校に行くようになった。ある平日。代休で学校は休みで、母が偶然家にいないことをいいことにいろいろ家の中を探すことにした。何か、隠し事のヒントでも見つかればいいなという感じで軽い気分だった。


その時に、アルバムらしきものを見つけた。それには家族ではない人がよく写っていた。誰か気になったが、母とよくツーショットを撮られていたことから、母の友達だと思った。ただ、何故か懐かしく感じた。一度も会ったことはないはずなのに…


その頃からなんとなく家族との接し方が拙くなっていた。家族からも少しずつ関わりづらくなって部屋にいる時間が長くなり、気がつけば学校の時以外は基本部屋に引き篭もるようになっていた。

休日は気まずくなるので、外で時間を潰す日々となっていた。


ナオやユウ、レイ、ミキたちは特に気にするようなことはなく一緒にいてくれた。…たぶん気を遣ってくれているんだと思い、少し気が晴れた。






それでもなんとか過ごして、遂に受験の年となった中3。この時に僕は変わってしまったのだと思う。

ちょっとしたことで兄妹に言われた偽物という言葉。僕は知らず、家族の誰もが知っていた秘密。それで僕は可能性が現実となった。


僕は養子なのだと。


僕は家を飛び出してしまった。別に養子ということに関しては特に気にしてない。どうであっても、()として育ててくれたのだから感謝している。


ただ、それを家族の秘密にしていたことだ。まあ、両親や兄が知っていることに関しては気にしてない。兄もその頃はすでに幼稚園児なので、知ってて当たり前だから。


だけど、僕より下の妹までもが知っていることが堪えれなかった。知っているということは、妹には家族の誰かが教えたということになる。本人である僕には内緒で。…まあ、本人にこういうことを言うのは良くないと考える人もいるし一理あると思う。


でも、教える必要があっただろうか?知らなくてもよかったことではなかったのではないか?本当の家族のように接してくれる人がいてもよかったのではないか?


何故?


そして、家族からはいつもどんな眼で見ていたのか不安になった。同情か、落胆か、あるいは無、か。いずれにせよ負の感情であることには間違いないだろう。


何故?


わからない…


ただ、もしかしたら僕は




必要ない ()




なのではないか?











気がつけば公園にいた。ブランコなんかに乗って、なんかリストラされたサラリーマンみたいな絵だな………

どうしたらいいんだろう…

どうあるべきなんだろう…

どう接したらいいんだろう…

………?


いつの間にか目の前に一人の女性がいた。制服を着ていることから学生………いや、同じ学校、同じ学年の人だ。ただ、あまり人を覚えるのが得意ではないため誰かはわからないけど…


「…何してるの?」


声をかけられた。…逃げるが勝ちだ。


「…別に。ただ、こうしていたかっただけ。気持ちいいから。」

「寒くないの?」


素っ気なくしたのにまだ訊いてくるのか………めんどいな。


「全然…、とは言わないけど、こうしていると心が落ち着くんだ。」

「…何かあったの?」


どうやら、雰囲気を察したようだ。気になったのか訊いてきた。…遠回しに言えばいいか。


「………自分のことがよくわからなくなったんだ。」

「…話してみたら?少し楽になるよ。」


気を遣ってくれたのか………確かに人に話すと楽になることはあるが、あれはそう考えることでそういう風に感じる、一種の催眠だからな。

………乗ってみるのも一興か…


それから今日あったことを話した。兄、妹に偽物と言われたこと、母に聞いたときに嘘を言われたこと、それが事実だったこと………


「………」


女性も黙ってしまった。………あまり、いい話じゃないしな。聞かせてしまって悪かったかもな。


「俺も自分の育ての親だし、感謝してるし、わかってるんだけど…。自分は一体どうすればいいのかわかんなくなったんだ。たぶん、家に帰ったらみんなを今までとは違う目で見てしまう。そんな自分が嫌なんだ。…俺はどうすればいいんだ…。」


…そして、俺も感情が表に出てきているようだ。『俺』って言っちゃってるし…。


「確かにそうなるのかもしれない。でも、感謝はしているし、家族のことは嫌いではないんでしょ?」


それはそうだが…。


「なら、それでいいじゃない。みんなと過ごす上で慣れて行けばいい。今まで通りにいかなくても、複雑になっても、家族であることには変わらない。さっきも言ってたでしょ、育ての親って。なら、それでいいじゃない。育ての親とその家族。元の親もいるだろうけど、今はその一員。…みんなといられるだけできっといいことがあると思うよ。」


ごめんな。悩んでたところはそこじゃないんだわ………まあ、確かに少し心が軽くなった気がした。


「そっか、………そうだな。…これからも家族であることには変わらないよな。…ありがとう。」


それっぽく言って誤魔化しておくことにした。あながち嘘でもないから別に問題はないよな。


「どういたしまして。………じゃ、帰るね。…あんたも帰りなさいよ。」

「…ああ。本当にありがとう。」


世話になったし素直にお礼を言っておいた。

………じゃ、僕も帰るか。


その時に顔を上げたらさっきの女性が車に轢かれそうになっていた。動けば避けれそうだが、足がすくんで動けないようだ。


「諦めるな!」


僕は咄嗟に飛び出した。


女性を突き飛ばし衝撃を出来るだけ受け流せるように頑張った。…まあ、気休め程度にしかならんけど。



ドン!



衝撃が強く、嫌な音が頭の中に響いた。あーあ、終わったかな…。まあ、人ひとり守って死ぬんだったらそれはそれでいいかな。ただ、一つ言うことが…


誰かが目の前にいるのが見えた。意識が朦朧としててあまりわからなかったけど、たぶんあの女性だろう。


「………借りは………………返したぜ……………

………さっきの…お礼だ……………………………………………………………………………………」


ちゃんと言えたし悔いはない。


僕はここで力尽きた。






目を開けるとそこは白い天井だった。身体を起こすことが出来ず、痛い。…どうやら僕は奇跡的に生きていたようだ。嬉しいような残念なような…。


医師によると、左腕・右足などの全8か所を骨折していたらしい。…内臓破裂とかしてなくてよかった。幸い、手術に成功したため、後遺症が残ることはないようだ。


強いて言えば長いリハビリ期間と、時々古傷ではないけどそういう感じに痛むらしい。…まあ、生きてることの方が大事だしそんなことは気にしちゃ駄目だよな。


入院中、あの時助けた女性が結構な頻度でお見舞いに来てくれた。自分で怪我させてしまったと感じているのかな? 僕としては気にしてないからいいんだけど。助けるのを決めたのは僕自身なんだし。


家族も見舞いに来てくれた。あの後、僕が出て行ったことをみんなが心配してくれていたらしい。素直に嬉しかった。


妹なんか、僕が知っているもんだと思っていたらしい。…だからって妹よ。そういうことを言ってはいけないと思うんだよ。




これで万事解決、で済めばそれで良かったのだが、僕の中に僅かながら違和感を感じた。




人の心が簡単に読み取れるようになっていたのだ。


昔から、他人のことを最優先にしていた節があったので、いつの間にかその人が今、どんな気分なのかがわかるようになっていた。


しかし、それはあくまで身近な人とか、接点のある人とかが対象である。赤の他人の感情までは読み取れなかったのだ。


それが、簡単にほぼ誰でもわかるようになっていたのだ。しかも、それはテレビの人であろうともわかるのだ。…まあ、雑誌とかの写真や絵の人の感情は読み取れなかった。あくまで動く人の感情限定らしい。


それでも十分凄いと素直に思ったが、それは、人付き合いを悪くさせる素でもある。感情が丸わかりなので、したくない事、人の好き嫌いなどがわかってしまうのだ。そんなのを何度も見てしまうとやる気もなくなるし、気分も良くない。


これが原因で、感情が若干腐ってしまったのかもしれない。自分がしたい事、したくない事を明確にし、したい事しかしなくなった。また、周りの世界を客観的に()()ようになってしまった。


これが今の僕である。()()()から僕は何も変わっていない。




超能力は人が人であることを辞めさせ、人を蝕む。(自作…たぶん)


自分が最も他人に伝えたい言葉である。

アキが死んでいた場合


目を開けると木の天井が見えた。…何処だ?

取り敢えず身体を起こそうとした。だが、身体が起き上がらなかった。首も足も思うように動かない。

…どうなってるんだ?

すると、女性が僕の顔を覗いてきた。顔は丸くて愛くるしい感じの女性だった。

その人には何故かネコ耳が付いていた。もう一度言う、ネコ耳が付いていた!


………!?

何がどうなってるんだ!?耳は動いてるし生きているようにしか見えない!え、え、何がどうなってんの?


そんなこと考えていると、その女性に抱きかかえられた。…()ってそんなに軽かったっけ?


すると違和感を感じた。なんとなくだが、何かを失っている。そう思い下を見た。


足が短い。


………………………マジで?


僕はどうやら異世界に来てしまったらしい。


-・-・-

こういうもしもシリーズは書くと楽しいわ(笑) …オチなくてすみません


外伝、なんとか書けたので一安心です。

たぶん、次回は本編です。

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