外伝3 ノイン
今回はちゃんと出せました!なんとかなってよかったです!
私は元々人間だった。ただ、亡くなってしまった。その時に出会った、明人さんと。
人間としての名は篠原乃惟。私はごく普通の家に生まれて、ごく普通な生活を送っていた。
何か変わったこともなく、何かをしたいと心から思うことが特になく、ただ時間の流れるままに過ごしてきた。
今までもそうであったようにこれからもそうである、はずだった。
中学三年のある寒い日、受験を控え勉強しているのが当たり前のこの時期に、とある人と出会った。帰り道にある公園のブランコに座って、ただ空を眺めていた。ただそれだけなのに、妙に気になった。
理由はわからなかった。ただ、目が引き寄せられた。…私と同じ中三っぽいのに家で勉強しないで大丈夫なのだろうか。
気になったので声をかけてみることにした。…何故こんな行動ができるかは訊かないでほしい。そうすべきだと思ったのだ。
「…何してるの?」
その人は私の方を一度見たが、すぐに視線を元に戻し、
「…別に。ただ、こうしていたかっただけ。気持ちいいから。」
…なんで気になったのかやっとわかった。この人何故か半袖・半ズボンだからだ!わたしなんてコート着ているのに…。大丈夫なのだろうか。
「寒くないの?」
「全然…、とは言わないけど、こうしていると心が落ち着くんだ。」
何かあったのだろうか。
「何かあったの?」
「………自分のことがよくわからなくなったんだ。」
一瞬迷惑がられる、と思ったのだが、どうやらこの人はそれどころではないらしい。
「話してみたら?少し楽になるよ。」
ここまで聞いて帰るのはなんだか引けたので、横のブランコに座り訊いた。
「…そうだな。………数日前に兄貴と妹が喧嘩してたんだよ。それで、俺が割って入ったら二人から怒られた。その時に言われた一言がな…少しきてしまって…」
「なんて言われたの?」
「…『偽物が口出しするんじゃない!』、と。」
なんか、よくわからなかった。
「その言葉が気になって母さんに訊いたんだ、『俺は誰なんだ?』と。そしたら、普通に私たちの子って言われた。」
なら、問題ないじゃない。
「ただ、その時の顔に若干の焦りがあったような気がしてさ、訊いてしまったんだ。俺の本当の家族は今どこにいる、と。その時の顔を見たときに咄嗟に家を飛び出しちまった。俺の本当の家族はいない、て思ってさ。」
なんか、凄い重い話だった。
「俺も自分の育ての親だし、感謝してるし、わかってるんだけど…。自分は一体どうすればいいのかわかんなくなったんだ。たぶん、家に帰ったらみんなを今までとは違う目で見てしまう。そんな自分が嫌なんだ。…俺はどうすればいいんだ…。」
…これは、なんて言うのが正解なんだろうか。全く見当がつかない。ただ、何か言わないと流石に悪い。…ええい、もう成るように成れ!
「確かにそうなるのかもしれない。でも、感謝はしているし、家族のことは嫌いではないんでしょ?」
「それはそうだが…。」
「なら、それでいいじゃない。みんなと過ごす上で慣れて行けばいい。今まで通りにいかなくても、複雑になっても、家族であることには変わらない。さっきも言ってたでしょ、育ての親って。なら、それでいいじゃない。育ての親とその家族。元の親もいるだろうけど、今はその一員。…みんなといられるだけできっといいことがあると思うよ。」
…なんか、文章として大丈夫か?論理的になってないと思うんだが…。こんなんでいいんだろうか…。
「そっか、………そうだな。…これからも家族であることには変わらないよな。…ありがとう。」
少し寂しい笑顔だったけど………まあ、少しはマシになってくれると嬉しいな。
「どういたしまして。」
さて、帰るか。
「じゃ、帰るね。…あんたも帰りなさいよ。」
「…ああ。本当にありがとう。」
私は公園を出た。その時に事件が起きた。
後ろからすごい音がした。振り返ると車が突っ込んできているのが見えた。どうやら居眠り運転をして気がついたのだろう。スピードが出すぎているため、ブレーキを踏んでいるようだが間に合いそうにない。足が竦み、動けなかった。
………私の人生、………終わり?
「諦めるな!」
その声の直後、私は宙を浮いていた。正確には横に突き飛ばされた。
…え?
それに気づいたころに「ドン!」という音と共に車が横を通り過ぎた。身体が地面に触れた。身体が横移動を止め、静止した。
一体、何が…。
そう思い、私はさっきいた方向を向いた。
「あ、ああ…」
私の声が聞こえた。直ぐに駆け寄った。
「………さっきの………お礼だ…………………
………借りは………………返したぜ…………………
…………………………………………………………………」
最後の捨て台詞のように言い、その人は力がなくなった。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
その人は奇跡的に生きていたが、左腕など全8か所を骨折した。幸い、手術に成功したため、後遺症が残ることはないらしい。強いて言えば長いリハビリ期間と、時々古傷ではないけどそういう感じに痛むらしい。正直安心した。私を庇って怪我してしまったのだから、死なれたら罪悪感で一杯になってトラウマになってしまう。
2、3日に一回はお見舞いに行った。そこでは笑顔だったが、結局家族から心配されて自分から言えなかったらしい。一応蟠りは、完璧にはなくなっていないが、正常運行らしい。
彼からもらった命を大事にして勉強して誇れるようになろうと想い、頑張ろうと決めた。毎日努力して一生懸命に、ただひたすらになった。
だが、それを為す前に私は死んでしまった。事故とかではなく、病気だった。昔から持っていた持病で落ち着いていたが、今になって急に活性化したらしい。
ほんとに悪いことをした。助けてもらった命をすぐに散らしてしまった。自分が嫌になった。ただ、もう会うことはないんだと思い悲しくなった。折角、名前も知れたし、自分の気持ちにも気づけたのに。ごめんなさい、翼明人さん。
気がつくと私は誰かに握られていた。どうやら、私は剣になったようだ。勇者の剣らしい。…転生としてはなんと悲しいことか。自分では動けず、ただ生き物を殺す道具として肉の感触、骨の感触に触れていく。流石に嫌になった。これが、私への罰、か…。
ただ、次第に慣れていった。その中でメアちゃんとも出会った。死闘を繰り広げたが、どちらも倒されることはなかった。どうやらお預けらしい。その後、魔王を滅ぼした。私という剣で。
それから私は英雄の剣〈ペルセウスソード〉と呼ばれることとなった。…流石に適当すぎないか?ペルセウスは確かに英雄だけど、試練をクリアはしたけど、………いや、案外適切かもしれないな。
勇者が死んだあと、何故か私は霧散した。そして、何もない世界にいた。
そこからは世界を見ることができるようだ。…だからなんだというのか。これでは何もできないではないか。神は私に何をさせたいの!どうしたらいいの!
長い年月をかけて知ったがここは神の部屋らしい。…私が神様?………まさか、ね。確かに英雄の剣とまで言われたけどだからって、ねえ………。
調べたが、本当の神様ではないがまあ、神みたいな扱いだそうだ。厄介なことになったなあ…。何でこんなことがわかるかって?それは疑問に思ったことを深く念じれば答えが頭の中に降ってくることに気づいたからだ。………いや、突っ込まないでくれ。あきらかにおかしな現象だが、ここでは普通なのだ、きっと。
ここに来ても長い年月が経った。だいたい800年くらい、だろうか…。(もう、よくわからなくなってきていた…)その時に空間の歪みを感じてそのポイントを見ることにした。すると、41人の勇者がいた。…勇者、多いね。真っ先に思いついた感想である。
そんなことを呑気に考えていた時に私は驚いてしまった。固まってしまった。だって、そこには彼がいたんだもん、明人さんが。時間の流れが違うせいか、あちらはまだ高校生のようだった。よかった、ちゃんと高校にかよえているようだった。ってか、そんな場合じゃない!どうしよう!とても心配だ!また、誰かを助けるとか言って、その時は死んでしまったら…。
そう考えると冷静でいられなくなった。どうにかして助けてあげたい。ただ、自分から干渉することはできない。なんとかならないの!?
この時になってやっと、私は本気でこの何もない世界から抜け出す方法を試行錯誤した。そして見つけた。契約して剣となればここから出られるらしい。…無理じゃん!どうやって契約するの!こっちから出られないのに!あっちから来ることもできないのに!
そうやって思ったが諦めずに頑張った。彼に助けられたときに言われた通り、諦めなかった。そんな時に、彼はメアちゃんのダンジョンとされる家に行っていた。そして、落ちた。メアちゃんによって助けられたっぽいことに気になったがそれでも助かった。
なのに、最深部に彼が行ったときには彼を殺しかけた。彼女も触発されて興奮してたみたいだったし、オロオロしているのでわざとではないとはいえ、殺そうとしたのだ。流石に腹が立った。そして、彼を救わないと正直危ない。そう思った私は私に世界へ呼ぶことにした。気絶している間は魂が空中を徘徊しているらしく、魂だけだとこの世界に呼べるようだったので試させてもらった。
結果的に契約できたものの、冷や汗搔いたよ,まったく…。でも、一応メアちゃんには感謝かな。
これで、明人さんの特別になれたのだから。
明日、報告があります!