旅は道連れ世は情け
なんとか、話を繋げようとしてミスったかも…。
「さて、とりあえずここを出ますか!」
「はい!」
………
「ちょっと待ってください!」
「「!?」」
まさか後ろから声を掛けられると思ってなかったので驚いてしまった。
「………なんだ、あんたか。」
「なんだとは何ですか!何いい感じの雰囲気を作ってるんですか!」
そこには契約者がいた。正確には、事情を知らずに無理やりさせられた契約の相手だ。
「そういや、あんた、名前は何なんだ?」
「言ってませんでしたね。私はノインです。」
そういうとノインはメアさんの方を見た。全く見た目を気にしてなかったため少し見ることにした。短い水色の髪。その一部が黒いのは気になった。眼も水色で基本的な顔のパーツが小さいが、かわいかった。…うん、マスコットだな。
「…何ですかこっちをジロジロ見て。」
「わ、悪い、少しボーっとしてた。」
咄嗟に誤魔化した。馬鹿正直に言うとハズイわ(笑)ってそんなことはいいんだよ。それよりも2人の関係が気になる!
「お久しぶりです、メアちゃん!!」
「ええ…、お久しぶり。」
何だろう…。なんか、ノインの方が一方的に負のオーラを醸し出してる。メアさんはどうしたらいいのかわからず困っている感じだ。…普通ではない関係でないのはわかった。しかも、あんまりよろしくない方の。
「ふたりはどういう関係で?」
「それはですね、」「それは、」
メ「友達です。」
ノ「敵です!」
…そこは揃えろよ。いや、予想してたけどさ。
「何ですか、一度会っただけで馴れ馴れしいですよ!」
「そうでもありませんよ。よく言うじゃないですか、昨日の敵は今日の友って。」
「…それは違うんじゃないか?」
…2人が言い合い、僕がつっこむのが何回か続いた。そろそろ面倒くさくなってきた時不意にきた。
「で、明人さん。この人と何処へ行こうとしてるんですか?決着は?」
「ああ、それはどうでもよくなった。今は大事な仲間さ。」
「…あっさりと考えを変えられる柔軟性は凄いと思いますけど、それでは私が契約した意味がないじゃないですか!」
「うん、ないね。」
「即答ですか!まさかの即答ですか!私の存在価値っていったい…。」
「おーい、ノインさんやい。大丈夫かー。」
「…」
駄目だこりゃ。完全に塞ぎ込んじゃってる。もういいや。
「メアさん、行きましょう。」
「…」
あれ?こっちもスルーですか。…てか、なんか肩がプルプルしてないか。嫌な予感…。
「ボソッ)ノインはタメなのに私は『さん』ですか…。」
うん、ボソッと言えてないよ、聞こえてるし。…これが乙女心の片鱗だろうか。こんなこと気にするっていうのは正直わからん。距離感とか嫉妬とかそういうもんなんだろうか。
「わかったよ、メア。…これでいいか?」
まさか聞こえてるとは思ってなかったようだ。顔が超赤い(笑)
「え、ええ、ありがとう。」
気分が良くなったようでよかった。
「さて、じゃあ、そろそろ行くか!」
「はい!」
「ちょっと待ってください!」
「…2度目だぞ。」
もういいよ、ループは…。
「なんで、あれでスルーなんですか!?普通あそこは労わるところでしょ!かまってちゃんだったでしょ!ちょっとはわかってよ!」
「イラッ)…で、何なんだ、用は。」
「さっきの契約はまだ仮なんですよ。だから本格的にしようと思ったのよ。」
なんで、仮契約で勝負挑ませようとしたんだ?契約に値するかの試練だったのですか!?
「早くこちらにきてください。」
「…いや、いいよ。別にいらない。」
驚くノイン。無視する僕。はっきりダルそうだもん。付き合うのがメンドイし。
「どうして!?」
「だって別になくてもいいもん。仲間もできたし。仮契約はそのままにしておいてあげるから。」
「えっ…。」
なんでそんな絶望そうな顔すんだよ。…横のメアの視線が辛い!なんか、刺さる!
「…もしかして、契約してほしいのか?」
「そ、そ、そんな訳ないじゃないですか。」
「そうか。じゃあな。」
「すみません!私が悪かったです!契約させてください!」
やべえ、こういうの超楽しい!最近鬼畜に目覚めつつあるアキだった。
「オーケー。今、そっち行くから。」
「いえ、そちらに行かせてください!」
どうやら、相当効いてしまったようだ。…セーブした方が良さそうだな。
「では、始めます。」
仮契約の時と同じようだ。奇妙な感覚に見舞われている最中、不思議な言葉が聞こえた。
「己の力は夢幻なり
己の体は有限なり
何時見ぬ理を求めて我は己を糧とする
いつの日か、双剣の覇者<デュアル>と呼ばれるその日まで我は汝と共にあり」
まさしく、スキル〈厨二乙w〉の詠唱と同じだった。少しアレンジが入ってるけど。…このスキルってまさか………まさかな。
「これで契約完了です。ではよろしくお願いします、明人さん。」
そう言うと急に光り出した。眩しくて目を隠す。光っている間に妙に重い感覚が背中を襲った。
目を開けると目の前にいたはずのノインがいなかった。…あれ?
「おい、何処いった?」
「後ろにいますよ。」
後ろから、正確には背中から聞こえた。振り返るとそこには剣が一本あった。
「お前か?」
「はい!」
ノインは剣になった。
「剣と剣士で一心同体ってか…。」
「まあ、そんなところです。」
少しため息が漏れる。…まあ、武器としては強そうだし使わせて貰うか。
「剣のままでいいのか?人の姿の方が楽しいと思うけど。」
「これは、契約時に強制的になるんですよ。元に戻りますね…。」
なるほど、つまり、自由に形を変えられるって訳か。
「これから、よろしくお願いします。」
「…わかったよ、よろしくな。」
そう言った後、ノインはメアの方を見て、何やら火花を散らしているようだった。
「これからもよろしくね、いろいろと。」
「はい、よろしくね、いろいろと。」
…2人ともニコニコしているが、決して目が笑っていない。何なんだ、全く…。
先が思いやられる…。まあ、暇しなさそうだからいいけど。
次は外伝を出すつもりです。