そこから
今更ですけど、小説家って大変そうですね。とても理解できました。
水の音で目が覚めた。
頭が上手く回ってないがどうやら床に横たわっているようだ。床は高さ1、2センチほど水の膜が張っていた。何故か水は澄んだ緑色だった。
倒れた状態で上を見ると暗闇だった。相当高さがあるみたいだ。100メートルは優にありそうだ。
…そういえば、僕はここで何してたんだっけ?
少しずつ頭が回転し出した身体を起こそうとした。すると左手が動かないことに気がついた。
…どういうことだ?
左腕の方を見た。うん、ちゃんとある。何も変わらない。ただ、動かない。
仕方ないので右手と足を使って立った。
…なんとなく、体を揺すってみた。
ぶるんぶるん(体を揺らす音)
ぶらんぶらん(左腕が揺れる音)…痛っ!
肩と腕の関節から痛みを感じた。少しずつ血の気が引いてきた。嫌な予感を胸に上着を脱いだ。すると、赤く腫れた左腕があった。尋常じゃないほどに膨れ上がり、内出血も酷そうだ。
ようやく思いだしてきた。確か、みんなと一緒にダークネスに入って、隠し階段を発見して、下に降りて、そして…
落ちた
事態がようやく理解できた。てことは、この腕は…、
折れてる。
顔が真っ青になるのが自覚できた。今、人生で一番動揺している!ヤバイ、どうしよ!どれから驚くべきかもわかんねえ!結構な高さから落ちた!生きてることが奇跡だ!けど超痛え!そしてどうやって帰ろう!?マジわかんねえ!魔物とかに遭遇したら確実に片手だと勝てねえ!だいぶ落ちたから魔物のレベルも高いはず!絶対勝てねえ!俺、詰んだ!
ようやく落ち着いてきた。とりあえず、ダンジョンを出よう。ここは危険すぎる。武器は近くに散らばっていた。二刀流をまだ主流にしてなくてほんと良かった。片手で二刀流は不可能だもん。
今更だけどこの水って何なんだろう?なんか、不思議な成分でも入っているのか?興味本位で舐めてみた。端から見たら死の道真っしぐらな行為をしている。どうやら、落ちた衝撃でバカになったのかもしれない。…もちろん、自虐ね。
味はしない。無だった。水でも味はするのに。不思議な液体だった。身体に違和感はなかった。ただ、何故か身体の活力が少しながら出てきた気がする。ポーションだったりするのかな?取り敢えず、壊れずに持っていた水筒の水を全部この液体に変えた。もしもの時に役立つかもしれないしな。
やっと出口を探す準備が出来たが、気になることがあった。扉が一つしかない。落ちる前の部屋は階段と扉が一つずつあったのに、この部屋はない。どういう構造してるんだこのダンジョン?わかんねえこと考えても仕方ないか。取り敢えず、扉を開けた。
扉の先は階段だった、下りの。
…
上に上がれない、だと…。降りろと、ここを降りろと申されますか!敵と戦えと、そう申されますか!…上等だ、やってやる!!
投げやりだが、そうしてないと、辛い。
もう、かえりたい…。
降りた先はなんかの屋敷みたいなところだった。柱があり扉があり、灯火がある。別れ道がやたらと多そうに見える。絶対迷うわ…。
ふと横を見ると石碑があった。何て書かれているかはわからないが、D○MJシリーズで出てくるやつに似ている。てか、そっくりだ。ルー○とかくれないかな。
取り敢えず触れてみた。中から光が漏れ出している。前が見えなくなり思わず手で隠す。…なんか、最近こんなんばっかだな。光が止んで石碑の方を見ると、こう書かれていた。
汝に力を授ける。最深部まで来てみよ!
空中に文字が浮かんでいる。
びっくりして瞬きしてみたら無くなっていた。
…なんか、もう凄いわ。驚いたら負けな気がした。疲れたとも汲み取れる。
本当は日本語で書かれていたことに驚きを感じるところだったが、そんなことを考える余裕がなかったみたいだ。
今ここに誰かいるのだろうか?まさか、ダークネス・メア!?…1000年も前の魔族が生きてるのかな。魔族の生態とか聞いときゃよかった。
そもそも力ってなんなんだろう?何をくれたんだ?気になるから調べてみた。
…そういや、ステータス見るのって食堂の時以来だな。
〈ステータスオープン〉
name 翼明人
age 16
male
level 5
体力 30
筋力 25
耐久 18
敏捷 40
魔法 27
称号
勇者
新米剣士
新米魔術師
新米鍛冶師
錬金術師
〈オリジナル〉
スキル
〈転位魔法〉 レベル1
片手剣 レベル2
短剣 レベル2
投剣 レベル1
??? レベル0
風魔法 レベル2
錬成 レベル1
錬金 レベル1
鑑定 Max
レベルが5まで上がっていた。ステータスはだいぶ上がっている。称号〈勇者〉が効いているのかもしれない。…称号増えたね。
それよりも、知らないスキルが増えている。いつの間に錬金なんてもん覚えたんだ?なんで鑑定は取ってなかったのにレベル10なんだ?あと「???」ってなんだ?石碑から一体何をくれたんだ?
たぶんスキルの上がりようが尋常じゃない鑑定を貰ったのかな。ってことは錬金と???は独学で手に入れたってこと?僕、やべえ。
気になるしスキルの確認をしてみた。
錬成
物質の形を変化させる。
錬金
魔力を原材料として物を生成する。
レベル1:鉄までしか作ることができない。
鑑定
物事の理を暴くことができる。
随分大雑把な説明だった。錬成は自分で取ったものだから流石にわかる。錬金はイメージ通りだった。ただ、錬金だけ、スキルのレベルに合わせてできる範囲のことが書かれていた。理由はわからないが別に問題ないだろう。
今更だがこの世界では魔素を使用して魔法を生成するが、その時に魔素の塊を作ってそれを魔法に変換するらしい。この魔素の塊を魔力というみたいだ。…僕も思ったよ。随分と無理やり感があるよね。
鑑定が一番ふわっとした内容だからだ。理を暴くってどういう意味かあまりピンとこない。物の名前がわかるとか、相手のステータスを見ることが出来るとか、そんなところだろうと踏んでいる。
「???」に関しては全くわからない。レベル0だし。説明を見ようとしても弾かれて見れなかった。これは後日わかるようになるのかな。まあ、いいや。
とりあえず最深部まで行くことにした。行くことで手がかりが掴めるかもしれないから。ただ、道がわかんないどうしよう…。
ーマップの解析を開始しますー
なんだいきなり!
ー解析中
解析完了
データを移しますー
…ゲームとかでよくあるマップ機能だ。しかも3Dバージョンの。これって鑑定スキルか?それしかないな。これで地形がまるわかりだ。色識別がされているからトラップの場所や何かが落ちている場所、さらには魔物がどこにいるかまでっきりとわかる。マジでチートだ。これで安全にいける。
いくぜ、最深部!
そろそろ先に進みたい…




