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処刑19 侍の意地

 陽が傾き始めた頃、マイケルが門の前に辿り着くと自動で門が開く、緊張しながらも中に進むと、1人の男が上空からマイケルの前に舞い降りる


 姿からして軽装、口元を布で隠し紺色の忍装束、目元以外は布で覆っている、更に鉄製の額当てを付けている、忍者だ


「何奴!」


「マイケル殿だな、早く渡してもらおうか」


「何?」


 忍者はマイケルを睨みあげるが、マイケルも動じない


「御主の刀、それを渡す為に来たのだろう?」


「何を言っているでござる? 御主等も覚悟できているのであろうな」


「交渉決裂、か」


 危機を察知したマイケルが距離を取ったが、男が投げつけた鎌がマイケルの肩を斬りつける


「くぬぅ!?」

 唐突な痛みに肩を抑えると血が滲んでいる

 男が持っていたのは鎖鎌、手元に鎌を戻しマイケルを睨む


「形はどうであれ、我々にはその刀が必要だ、恨むなよ」


「侮られたら困るでござるなぁ!......なんとぉ!?」


 マイケルが急接近して強烈な蹴りをかますが、男の姿が丸太に変わる


「後ろだ阿呆」


「ぬ!?」


 忍刀で背後からマイケルを斬りつけるが、マイケルは鞘でそれを受ける


「流石の反応だ」


「くぬぬ、いつの間に」


「我々を処刑するか?」


「その為に来たでござる!」


「愚直な男よ」


 男は忍刀の力を抜き、前のめりにバランスを崩したマイケルの背中を踏みつけ後方に移動した


「なんという身のこなし、只者では無いでござるな」


「御主が手練れなのは把握済み、そして1人身でここに来たのも把握済みだ、刀を渡せばそれで済むが、それとも逃げ帰るか」


「儂はそこまで甘く無いでござる、会長殿の命令では御主等諜報部を処刑しなければならない、それに何故この刀を狙う?」


「ちょうどいい、我々も力付くでもその刀を奪う、意地のぶつかり合いとしよう」


 男が地面に球を投げつけ煙と共に姿を消した、そして城の扉が開かれる


「面妖な」


 慎重に扉の中に進んでいく、入り口から細い廊下が一本あり、奥には階段が見えた


「上を目指せば良いのでござろうかぁ!?」


 木製の廊下で木の張り一枚を踏み抜き、テコの原理でめくり上がった木の板がマイケルの顔に直撃した


「つぅ〜痛いでござるぅ」


 鼻をさすりながら進むとまた踏み抜く感触を感じたが一歩下がるとまた踏み抜き、今度は後頭部を直撃


「くぬぬぅ! もう怒ったでござるよぉ!」


 歩幅を広げ大股で歩くと足に何か刺さった


「痛ぁぁ!? 今度は何でござるかぁ!」


 廊下に散りばめられた撒菱、そのエリアをマイケルは踏んでしまった


 廊下の壁に背を当て、ゆっくりと撒菱を回避しながら進む


「うぬぉあ!?」


 壁が反転して部屋に移動させられた、その際後頭部を強打


 薄暗い部屋には台に乗った蝋燭で微かな明かりが灯っている、戻ろうとしても先程の壁はびくともしない為、仕方なく蝋燭に近づくと、小さな蛙がそこにはいた


「蛙?」


 蛙はマイケルを見上げ喉を鳴らすと床に空いていた小さな穴に飛び込んだ、その瞬間地面が揺れる


「地震でござるか?」


 暫くしても揺れは治らない、天井を見上げ違和感を覚えたマイケルは蝋燭を持ち上げて確認


「そういう事でござるかぁ!?」


 天井が落ちて来ている、この部屋はスペースはあるが逃げ道がない、時間が迫ってくる


「とんだカラクリ屋敷でござるなぁ!」


 考えても策が浮かばない、天井は完全に下がりマイケル姿は消えてしまった、暫くして天井が上がり、3人の忍者が確認に来た、蝋燭が潰れ部屋は暗闇


「流石のマイケルもこの落とし天井には叶うまい」


「くくく、亡骸は捨てて刀を回収で任務は終わり」


「馬鹿な!?」


 1人が大声をあげる、残り2人も確認して驚愕する、マイケルの姿がないのだ、本来なら潰れて息絶えている筈なのに、1人が部屋の異変を見つける、床に人1人入れそうな穴が空いている


「くくく、考えたな、だがこれで終わり」


 穴めがけ焙烙玉を投げ入れる、相当深いようだが破裂音がして煙が上がる、3人は刀の捜索を始めるが、1人が悲鳴を上げた


「ぬぁぁ!?」


 手元の蝋燭の火が消えて1人が倒れた


「どうした!? うぁぁ!?」


 また1人倒れる


「何だよ! お前等返事しろ!」


 最後の1人が慌てながら倒れた2人の元へ向かう、その時彼の蝋燭も火が消えた


「おいおい! どうなってやがる!」


 蝋燭に火をつけると、薄明かりの中、目の前に侍が現れた、マイケルは生きていた


「ひぃっ!?」


「小癪な」


 マイケルが忍者の顔を掴み、握力だけで持ち上げる、流石の忍でもこれでは逃げられない


「何故生きている! どこに消えていた!?」


「簡単な話でござる、蛙が教えてくれたでござる、下になら逃げられると」


 マイケルは掛けたのだ、諜報部の狙いは刀、ならばここで刀ごと潰さない筈、桜花流抜刀術の衝撃派で床を抉り一時的に身を入れるスペースを作りヘリに捕まっていたのだ、もし刀ごと潰すつもりなら、マイケルの手も原型を留めていなかっただろう


 天井が上がるのを確認して蝋燭の火を踏み消し、いかにも潰れたように見せかけ暗闇を作り、この広い部屋の隅に息を潜めていたのだ


「くそ! 離せ!」


「誰の指示でござるか」


「そんな事言える......!?」


 強烈な峰打ちを溝にめり込ませると忍者は気を失った、マイケルは投げ捨てるように忍者を床に置き、刀を抜いて壁を破壊し廊下に戻った


「今日は疲れる一日になりそうでござるな」


 首をコキコキ鳴らしながら階段を登っていくが階段が途中で消えた、斜めの板状になり滑りながら一階に戻されてしまった、マイケルがコントの様に一階にもどると階段はまた姿を現した


「小馬鹿にしおってぇ!」


 廊下を戻り助走を付けて階段を一段飛ばしで登る、階段が消える前に登る作戦だがこれは失敗、同じように一階に戻された


「ぐぬぬぬ」


 もう一度同じように助走を付けて登るが、また階段が消える感覚を察知した瞬間マイケルは飛んだ、人並みならぬ反射神経がなせる技である


「届いたでござる!」


 二階部分のヘリに左手が届き、そのまま両手で体を持ち上げると目の前は壁、振り向くと大きな襖があった


「嫌な予感しかしないでござる」


 襖を開くとまた大広間に出た、先程より大きな部屋、二階の面積はこの部屋だけで作られているのだろう、内装は煌びやかで、灯篭の様な照明が何個もぶら下がり明るい、そして静かだ


 慎重に部屋を進むと、真ん中程まで進んだ時、部屋の壁が一斉にひっくり返り大量の忍者が現れた


「袋の鼠でござるな」


 マイケルが固唾を飲み込むと、忍者は一斉にマイケル目掛け飛びかかる


 その頃ギルドでは、4人が集合していた


「ごめん会長ー! やっちゃったよー!」


 楓が茜の腕の中で抱かれている


「無理をさせた様だな、美遊もご苦労だった」


「でもこっちの作戦は失敗したわ、新聞部に認めさせる所か、あの女に調子に乗られた」


「岡部、資料だ」


「かしこまりました」


 岡部が書類を机に広げる、まずは真島豊の資料だ


 新聞部現部長、少ない人数の新聞部を纏める編集リーダーでもある、成績も優秀で温厚な性格から交友関係も広い、今まで被処刑経験は無く、学園の情報発信口として尽力している、趣味はボランティア活動


「めっちゃいい奴!?」


「岡部? これ間違ってない? 楓達が見た真島豊はそんな人物じゃなかったよー!」


 2人は資料の内容を疑う、先程見た女は挑発をして揚げ足を取る様な女だったからだ、それを聞いて岡部は首を横に振る


「間違いなく最新の情報を纏めています、先週には通学路のごみ拾い活動に参加しているすがたの目撃情報が多数あります」


「うっわ、絵に描いた模範生ね」


美遊は夏休み中にわざわざボランティアなど想像もできない


「御二人の話す真島豊は違和感がありますが本人でしょう、ですが危険視するべきは新聞部より諜報部です、次の資料に御進みください」


 資料を捲ると美遊は吹き出した


「ぷふっ! 何よこれ!? この学園は侍以外に忍者が居るの!? 」


 美遊が指差したのは諜報部の資料、写真が二枚載っている、一枚は最初にマイケルと会った男、目元以外は隠れている、まさに忍者


 もう1人は茶髪を一つに結った女、格好から忍者のコスプレ衣装の様に見える、男の忍び装束に比べて露出が多いが一目でくノ一だと解る、そしてスタイルもいい、高身長で出るところはしっかりと出ている、どうしてくノ一というのは網目の衣装を着たがるのか


「こいつ等は諜報部、学園で暗躍する侵入のプロ、迂闊に手を出せない相手だ、男は副部長、女は部長だ」


「ふざけてるのかって話よ! こんな変な奴等が敵?」


「相手を見くびるな美遊、この岡部が探してもその写真しか得られなかった」


「逆になんで写真があるのよ、2人ともノリノリで写ってるし」


 茜が資料をめくる


「去年の部勧誘の広告だ」


 おいでよ! 忍同好会!明日から君も忍! 楽しく忍術をマスターしよう!


 そして先程の2人の写真


「何よこれ、忍ぶ気が全く感じられないんだけど」


 美遊は呆れた様に呟くと茜が眼前に手を組み話し始める


「諜報部は元々忍同好会、だがな部員数は多かったものの行動が危険すぎたため廃部にした」


「あんたが?」


「そうだ、反抗したから処刑した」


「楓もそれは知らないよー?」


 楓も疑問の声を上げるが茜は続ける


「楓が来る前だったからな、あの時は一方的に殲滅した、私と岡部、そしてマイケルも勝手が解らなくてな」


「酷い話ね、反抗したから一方的に処刑したなんて」


 美遊は資料を眺めながらぼやいた、当時の状況を知らないから


「そうでもしなければ、学園の生徒に重傷者が出そうだったからな、やむを得なかった」


「諜報部は我々を憎んでいます、今回の件は首謀者で間違いないでしょう」


「あぁ、だが引っかかるんだ、何故新聞部とグルになってまで刀を求める? 一般人にとって日本刀など無用だろう?」


 2人の会話を聞いて美遊が発言する


「高く売れるからじゃないの? 日本刀ってかなりの価値があるんでしょ?」


「だとしてもだ、奴等の狙いが我々の解散より、刀の強奪を優先しているように私は感じている」

(どうも解らない、奴等の本当の目的は何だ? 我々の地位か? 何故あの刀に執着する?)


 考えても解らない、茜を持ってしても見通せない諜報部と新聞部の目的、時間は無情にも過ぎて行く、その間にもマイケルは処刑を続けていた


「桜花螺旋風!!」


 居合で旋回する様に刀を抜くとマイケルを中心に円形に衝撃波が発生し、大量の忍者が壁に叩きつけられた


 最初は刀を抜かずに応戦しいたが余りにも数が多かった為抜刀するしかなかったのだ、しかしこれが最後の一撃となり忍者は全滅、マイケルは苦しそうな表情を見せながら刀を鞘に収め大きく一息つき部屋の奥へと進んだ


 大きな襖を開くとまた階段があり、登るにつれ辺りが薄暗くなってくる、今回は板状になる事がない様だ


 ギシギシと階段が軋み、不穏な空気を漂わせているがマイケルは三階に到達した


「趣味が悪いでござるな」


 三階も大部屋だった、大部屋というよりかは御堂に近い、蝋燭が等間隔で開かれている、目を引くのは部屋の中心を見つめる様に巨大な仏像が六体並んでいる


「やはり来たか、流石生徒会と言わせてもらおう」


 上から1人の忍者が降りて来た、外で会った男だ、鎖鎌を構えている


「御主が最後の関門でござるか? 1人で儂の相手をすると?」


「二階を突破するとは、かなりの腕前、噂以上だな」


「話を聞くでござる」


 2人の距離は10メートル程離れている、男は近づくそぶりが無い


「その刀を渡せ、そうすれば帰してやる」


「何度言えば解る、こちらの話を聞くでござる」


「交渉決裂か」


 男は呟くと姿を消した、一瞬でマイケルの間合いに入り鎌を振るう


「だから話を聞くでござるぅ!」

(美遊殿も普段こういう気持ちでござるか)


 後方に下がりマイケルは回避


「くく......はは! ははは! この日をどれ程待ち望んだ物か!」


「気が触れたでござるか......」


「死ねぇい! マイケル!」


 また姿を消しマイケルの背面に回り忍刀で攻撃して来たが、振り返りマイケルは鞘で受け止める


「二度も同じ手は効かぬでござる!」


「我々は、いや、俺は貴様が憎い!」


 男は力を緩めることなく叫んだ


「御主! 本当の狙いは何でござる!」


「生徒会に忍同好会を潰されてから俺は貴様へ対する憎悪だけで学園生活を送って来た!」


「忍同好会?」


 キンと高い音がして忍刀を弾き距離を取るとマイケルの腕に分銅が飛んで来て鎖が絡みついた


「忘れたとは言わせぬ、一方的に生徒会が処刑した集団の事を! あれは処刑なんて物じゃなかった! 一方的な殲滅だった」


 男が鎖を引きジリジリと近づいてくる、マイケルは腕を動かそうにも動かせない


「そうか......御主はあの時の」


 一年前、生徒会は忍同好会の処刑を行なった、理由は最近忍術伝授の過激化


屋上から叩き落としたり、薬物を混ぜ毒薬を作ったり、本人達はそれが修行だと言い張りやめなかった、怪我人及び重傷者は後を絶たない、当時3人だった生徒会はそれを良く思わず最初は口頭注意していたがそれでも危険行為を辞めない忍同好会に処刑を執行した


 しかしそれは処刑と言えるものでは無く、一方的な武力行使、実力は明白、たった三人で50は居た忍者を殲滅、マイケルもその中にいた、刀を抜き生徒を傷つけ、生徒会の為に働いていた


 今思えばやり過ぎた行為だったが、忍同好会はその翌日多くの負傷者を担いながら強制廃部という処理が行われたのだ


「何故あそこまでする必要があった!」


 男が鎌を握りながらマイケルに飛びかかる


「御主等には悪いと思っているがあれも会長殿の意でござる!」


 自由な左手で男の顔面を殴り飛ばすと男は空中で一回転して着地した


「生徒会のせいで行き場を無くした忍がどれ程いた事が解っているのか?」


「御主こそ、あの様な事を続けていたら死人が出てた事を解っているでござるか? むしろ止めてもらい感謝してほしいでござる」


 忍装束からでも解る、男の逆鱗に触れた様だ、目は充血し見開いている、頭巾の中では青筋が立っている事だろう


「殺す!」


 鎖を引き戻しながら上昇、首元目掛け一瞬で鎌を振るう


「ぬぅぅぅ」


 致命傷は流れたものの首を切りつけられ鮮血が飛び散る、そのまま鎖を引き戻しマイケルは転倒


「何故抵抗せぬ」


 男の攻撃が止まる、マイケルは起き上がる気配も無い


「御主は何故とどめを刺さないでござる?」


「すぐ楽にしてやる」


「迷っているでござるな」


「貴様が言えた事か」


「何?」


 マイケルが仰向けのまま腕から鎖を外す


「その刀を抜かない理由、我々は知っている」


「何を言っているでござる?」


「貴様の過去を知っている、刀の正体も」


「御主......デタラメも程々にするでござる」


 ゆっくりと立ち上がり男を見る、お互い睨み合いが続く


「デタラメではない、確実な情報だ」


「御主、刀が必要と言っていたでござるな」


「何が言いたい」


「誰の指示でござる?」


「誰の指示でもない、俺の願望だ」


「誰の指示だと聞いているのだ!!」


 マイケルの喝が堂内に響く、空間が揺れる程の喝に男は怯んだ、気迫に押されたか、正確にはマイケルの魂に怯んだのだ


「誰の指示でも無い」


「それが御主の答えでござるな、いや、覚悟でござるか……悪いが容赦はできなくなってしまったでござる」


 マイケルが刀を抜いた、両手でしっかりと握り、肘を曲げ刀身を横向きに傾け眼前に構える、膝を曲げながら股を開き重心を低くくする独特な構え


「貴様だけでは無い、我々は調査の結果田原楓、並びに東西美遊の本性も知る事ができた、生徒会とは良く言えたものだな」


 マイケルの怒りが頂点に達した、一振りしたかと思うと男の頭巾が斬られ素顔が露わになる


「なんだ、諜報部の頭と聞いてきたからどんな猛者かと思えば、年端もいかない一般生徒でござるな」


「な!? 何をした貴様!」


 男は10代の男子生徒、黒髪の細身、特に特徴が無いが、目つきだけは悪かった


「獣の様な瞳でござる」


「うるせぇ、見てんじゃねぇぞ!」


 男の姿が消えるとマイケルは振り返り峰打ちを繰り出すが、男の姿が丸太に変わる


 変わり身の術、忍術の中でも有名な術だがマイケルはそれを見越してまた反対方向に蹴りを食らわせると、それもまた丸太に変わる


「上だ阿呆!!」


 上空から両手を組み、全身の体重を乗せマイケルの頭部を殴りつける、まともに食らったマイケルは鈍い音と共に床に倒れ前頭部を叩きつけられた


 男は息を漏らしながら牙を剥き出しにしている、獣の様な威嚇だ


 視界が霞む、脳が揺れ意識が朦朧としてくる、目を閉じ楽になりたい、首も止血しないとこのままでは重症に繋がる、しかし体が言うことをきかない


「儂は......」


「痛い目合わなければ解らないとは......!?」


 男が刀を拾い上げると、電流のような衝撃が走り床に落としてしまった


「儂は、あの時......」


 朦朧とする意識の中、ある言葉を思い出していた、脳の奥から呼びかける声は、余りにも聴きなれた声


 お前......お前は...か、ら


 ノイズが入ったように脳に響く声が聞き取れないが必死に思い出す、あの日の記憶を


 お前は今日から......わた、の


 思い出せ、あの日希望をくれた言葉を

 思い出せ、あの日呪縛を解いてくれた恩人を


『お前は今日から私の部下だ、安心しろ、私がお前の居場所になってやる』


 思い出した、あの日! 希望を与えてくれた命の恩人を!


「この程度......この程度ぉ!」


 首をの傷を抑えながらマイケルはゆっくりと立ち上がる、再び刀を拾い上げ男に向かう


「な、何故だ! 何故立ち上がる! 何故その刀を握れる!」


「儂は......倒れる訳には行かぬ、彼の方が卒業するその日まで!」


「化け物が、体力だけは並外れという情報は正しいようだな」


「儂の大切な後輩にも手を出したこと、悔いることになるぞ、閻魔は簡単に人を許さぬ」


「何を言って......!?」


 一瞬で胴体が切りつけられた男は痛みが遅れてきた、気づけば腹に激痛が走る


「桜花ぁぁ裂傷!」


空間が裂けて巨大な衝撃波が発生し、男目掛け飛んで行く


「馬鹿なぁぁぁ! 俺は、俺はぁぁぁ!」


 マイケルの放った衝撃派に吹き飛ばされ男は壁にめり込んだ


 ゆっくりと歩み寄り、刀を男の首に当てる


「御主は取り返しのつかない事をしたでござる」


「止めろ」


「会長殿!?」


 マイケルの腕を掴み止めたのは桐谷茜だ、後を追いかけて来たのだろう


「処刑、完了でござる」


「ご苦労、帰ろうか」


「そうでござるな......御主を倒してからな」


「何?」


時が止まった様な張り詰めた静寂が空間を支配する

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