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処刑18 新聞部交渉作戦

 東西美遊と田原楓は新聞部の部室へと向かっていた


「この新聞何なのよ、全部デタラメじゃない」


 美遊が手に持っているのは例の新聞、書かれている記事は全て捏造されたものだった、各メンバーの見出しが乗っている、更にいつ撮られたか解らない写真まで各記事に貼られている


 生徒会一年生東西美遊は桐谷茜と大人の関係か! 昨日我々新聞部は衝撃の現場に遭遇した、生徒会の桐谷茜会長が一年生東西美遊を首輪をつけ、全校生徒に見せつける様に校内を散歩しているではないか!


 我々の見解ではこの行動はお互いの趣味の一致から成り立った物だと思われる、桐谷茜がサディストなのは皆が理解できるだろう、今後は東西美遊の真実を突き止めていきたい


「あの時の写真撮られてたんだー」


 ニコニコ笑いながら隣を歩くのは二年生の田原楓、モーニングスターを引きづりながら歩いている


「だから外せって言ったのよ、なのに中々外してくれないし、楓先輩はライトな記事で良かったわね」


「良くないよー! 楓もよく解らないキャラ付けされてるよー!」


 生徒会二年生田原楓、ライバル意識とプライドの塊! 夏休み中に大きな夏祭りが行われていた、そんな中生徒会が悪事を働き、風紀委員会によって裁かれようとしていたが、結果祭り会場を巻き込む大掛かりな喧嘩に発展、我々新聞部は真実を突き止める為現場に向かった


 その中で目を引いたのは田原楓の出場した競技、ヨーヨーすくいだ、田原楓に挑んだのは風紀委員二年生のれーちゃん、学園天下アイドルのれーちゃんだ!


 れーちゃんには多くのファンが居る、ファンの生徒達は勿論現場に向かい激励を送っていたが、それに対し田原楓は腹を立てファンの生徒を凶器で殴りつける事案が発生! 殴り終えた後彼女は満面の笑みを浮かべていた


 田原楓も学園内にファンが多く存在するが祭り会場には誰1人来ていなかったのだ、これに田原楓はライバル意識を燃やし八つ当たりをしたのだ、ファンの生徒達はこの後迅速なれーちゃんの対応により全員軽傷ですんだ


「落ち着いて楓先輩、このままでは終わらせない、その為に交渉に向かうんでしょ?」


「なんであんな奴にライバル意識持たなきゃいけないのさー!」


 笑顔だが楓が声を荒げるなんて珍しい


「まぁまぁ、私なんか女好きのマゾ扱いよ? あぁ、イライラして来た」


「久々に暴れられそうだよー」


「ダメよ、あのバ会長の作戦だと私達は新聞部に認めさせる事が目的なんだから」


「そうだねー、殴りでもしたら明日に何書かれるか解ったものじゃないよ」


 2人は程なくして新聞部の部室に到着、お互い目を合わせうなづいてから扉を開いた


「お邪魔するわよ」


「おやおや? 貴方は」


 美遊に声をかけてきたのは三つ編み眼鏡の女生徒、黒髪で表情もおっとりとした、落ち着いた雰囲気が受け取れる


「貴方達新聞部に私達は交渉に来たの」


「まぁまぁ、立ち話もなんですから、どうぞ?」


 女は美遊と楓を部室の中に通す、簡易的に三つの机を向かい合わせにして席を作って座らせた、部室は質素なものだ、ごく普通の部室に少ない部員たちがそれぞれ作業にあたっている


「何を考えてるか解らないよー」


 楓が美遊にこっそり耳打ちすると美遊もうなづき小声で答える


「とにかく話を聞いてみましょ、そうしなければ動けない」


「どうされたのですか?」


「い、いえ! 何でもないわ!」


 女に美遊が慌てて答えると、女が丁寧に名刺を渡して来た


「申し遅れました、真島ましま ゆたかと申します、生徒会の美遊さんと楓さんですね、ごめんなさいね、お茶とか出せればいいのですが、うちにはこの通り紙とペンくらいしかなくて」


 豊は手元を口に持って行きクスクス笑っている、彼女流のジョークなのだろうか


「お気遣いなく、私達が来た理由は解っている筈よ?」


「はて? 何の事でしょう?」


「これに覚えが無いとは言えないよねー!」


 楓が新聞を机に叩きつける、豊は眼鏡をかけ直し新聞を手に取る


「私達は真実を報道しただけですよ」


 豊は真剣な表情で新聞から目を離す


「真実? 貴方達はこれが真実だと言うの?」


 美遊は一気に不機嫌になったようだが、豊は怯まないで続けた


「貴方達生徒会、いえ、生徒会処刑執行部はこの学園の主導権を持ち、更には学園生徒の恐怖の象徴です、それには理由がしっかりとあり、流血沙汰も少なくない恒例の処刑、処刑を受けた物はどんな人物だろうと忽ち生徒会に降伏してしまう」


「私達の処刑は怪我人はあまりでないよー! それに処刑対象は理由があって処刑対象.....」


「自業自得、と言いたいのですね」


 楓の言葉を豊が遮る、この女口論では隙がない、すかさず美遊がフォローに入る


「そうよ、やり方は多少手荒でも生徒達を正しているのは違いないわ、それに楓先輩と貴方の言う通り、処刑対象は正式な理由があり対象になっているの」


「では私達新聞部も今回悪さをしたと受けられ処刑をしにここに貴方達は来たのですね?」


「処刑まではしないよー! 今すぐにこのくだらない新聞を廃止して、この記事を配った生徒全てに訂正と詫びの新聞を配布すればそれで終わりだよー?」


 楓の言葉は交渉の合図だった、生徒会はそれ以上の行動を求めない、更に今回は処刑の対象にしない、これが生徒会の求める対応だったのだが


「できませんね」


「え?」


 豊が一言で断った


「私達は知って欲しいのです、生徒会の真実を、許しがたい集団だと思っている人達は少なくないのですよ? 強気に出させていただきますが、私達にはバックが付いてます、例え私が処刑されてもそれ以上の損害を生徒会には与えると断言します」


「バック? 例えば?」


 美遊は解りきっていたが質問する


「そうですねー、例えば風紀委員とかですね」


 豊が顎に人差し指を当てて発言すると、反応したのは楓


「やはりそうなんだねー! 何故あんな所に手を貸したのー?」


「私達は生徒会のやり方に疑問がありました、そして風紀委員のやり方はまともだと思いましてね、それにまだ処刑を受けた事のない生徒ですら貴方達に怯えているのは事実、この際はっきりさせた方がいいと思います」


「そう、でも捏造はいただけないわね、私はマゾでもないし、あのバ会長とそんな関係ではないわ」


「捏造? 何を言っているのですか? 私達は確実なソースを元に新聞を発行しています」


 豊が笑みを浮かべる、余裕というより新聞の内容を真実だと言い切っている、こう堂々とされると逆に突っかかりにくい


「確実なソースねぇ、諜報部の存在は我々も把握しているわ、だけどこの記事は全て捏造、明らかに生徒会を敵に回す為だけに作られているわね」


 豊が目を丸くして美遊を見つめる、信じられないと顔に書いている様だ


「驚きました、美遊さん変わられましたね、最初は嫌々生徒会に居たはずなのに」


「なっ......!」


「やはり夏休み中に会長さんとランデブーだったんですか?」


「馬鹿言ってんじゃないわ!」


 豊が攻撃に入り始めた、会話の内容を自然に変えたのだ


「そうなんですか? そんなに声を荒げないでくださいよ、それとも私を処刑します? 元荒くれ者らしく私を殴りますか?」


「このっ......!」


「あぁ怖い怖い、まさかこの様な生徒がこの学園のトップの集団にいるとは」


 露骨な挑発、美遊は焦ってしまったのだ、豊がどこまで知っているか解らない、下手に口を出せば足元をすくわれる、予想以上の難敵である


「美遊ちゃん落ち着いてー! ダメだよ堪えて!」


「くっうぅ!」


 楓が宥めると少し美遊は落ち着いた様だがまだ肩を震わせていると豊が話を始める


「美遊さんは学園に入る前、それこそ暴力沙汰で有名だったそうですね、さらに柄の悪い集団と寝食を共にし多くの男性とも交友があったと、典型的な糞ビッ.....」


「黙りなさい!」


 美遊が声を荒げて机を叩く、橘とその部下の事を侮辱されて美遊は黙って居られなかった


「美遊ちゃんはそんな子じゃないよー! あまり楓の後輩を悪く言わないでよー!」


「楓さんも、私は恐ろしいのですよ?」


「え?」


 豊が新聞を机に置いて楓を見つめる


「そのモーニングスターでどれだけの重傷者を出してきましたか? それは凶器という自覚は無いのですか?」


「スターは凶器じゃない、楓の一部で大切な物なの!」


「ですが、それで一般生徒を殴ってはいけないです、大怪我しますからね、それともアクセサリーとでも思っているのですか?」


「くぬぬ......腹立つー!」


「どうしました楓さん? 貴方らしく無いですね、一般生徒のように私を処刑しますか? それとも」


 豊がニヤリと笑い、楓は嫌な予感がした、この女何かを知っている


「な、何さー!」


「虫のように私を殺しますか?」


 その瞬間楓のモーニングスターが飛び豊の目の前で机を粉砕する、慌てたのは美遊、豊は微動だにしない


 美遊には何が起きたか解らない、先程まで机だったものが真っ二つに砕かれ木片を撒き散らしながら原型を留めていないのだから


「ちょっと楓先輩!? 手は出しちゃだめ!」


「ごめん美遊ちゃん、楓耐えられない......」


 楓の目は本気だった、笑顔の欠片も無い普段では見られない、薄眼を開けた冷酷な表情に美遊が寒気を覚えるほどだ、こんな楓は初めて見る


「ストップストップ! 仕方ないわね! 覚えてなさいよー!」


 美遊が立ち上がり楓を羽交い締めして無理やり新聞部から出る


「また遊びに来てくださいね」


「二度と来るかー!」


 生徒会が居なくなり、新聞部に静寂が訪れた


「ふぅ、緊張しました、明日の見出しは田原楓の真の顔ってところですかね、写真撮れてます?」


 部員に言いわたすと周りで作業していた部員の1人が親指を立てる


「よしよし、これで良かった......のですよね?」


 一方その頃、美遊と楓は中庭のベンチに並んで腰をかけていた


「ごめんね美遊ちゃん」


 先に謝ったのは楓だ、落ち着きを取り戻し、いつもの楓だが元気がない


「何で楓先輩が謝るのよ、悪いのはあの豊って人でしょ? はい」


 美遊が楓にリンゴジュースを渡す、隣で美遊はブラックの缶コーヒーを開ける


「ありがとー、でも先に耐えられなくなったのは楓だよー、美遊ちゃんは耐えたのに」


「私だって限界ギリギリだったわ」


「やっぱり楓はダメな先輩だねー、示しがつかないよ」


「何があったかは知らないし聞く気もないわよ、とりあえずこの状況を何とかしないと」


「ふにぃ!?」


 美遊が両手で楓の頬を引っ張る、柔らかい頬はよく伸びる


「笑って? じゃないと楓先輩らしくないわ」


 そう言って手を離す、美遊は元気づける様に笑っていた


「いきなり何するのさー!」


「はは、ごめんごめん」


「もー!」


 そう言いながらも徐々に楓も元気を取り戻して来た様だ、周りを見渡すと放課後の中庭にいる数少ない生徒達がヒソヒソと話ながらこちらを見ている姿があった


「本当に居心地悪いわね、早く何とかしないと」


「そうだね、会長と岡部は風紀委員の所行ったんだよねー、大丈夫かな」


「あの2人なら大丈夫よ」


 その頃、風紀委員室の扉を蹴破り茜と岡部が入室してきた、風紀委員会は皆戦闘体制に入り2人を警戒、しかし風紀委員長の篠田紅葉が対応してきた


「随分と手荒な入場じゃない? 会長さん」


 茜が胸ぐらを掴み紅葉を睨みあげる、一般生徒が見たら失禁レベルの緊張感だ


「貴様、よくも手の込んだ嫌がらせをしてくれたな」


「落ち着きなさいよ、とにかく離してもらえないかしら」


「何だと? 立場をわきまえろよ」


「いいわ、私も聞きたいことあったし、入りなさい、犬も来なさいな」


 紅葉の様子がいつもと違う事に違和感を覚えながらも、風紀委員室の奥へ進む、向かい合わせの机に偉そうに茜が座り、隣に岡部が立っている、茜が話を切り出した


「貴様、新聞部と諜報部を傘下にしたそうだな、そこまではいい、この手紙はどういう事だ?」


 くしゃくしゃの皺だらけの紙を机の上に広げる、紙の内容はこうだ


 桐谷茜生徒会長へ、まず初めに風紀委員会は我々の味方になった、この事から我々だけを潰した所で意味がないのは聡明な貴方なら解るだろう


 我々諜報部の目的は生徒会の解散と二年生のマイケル、彼の刀の要求だ、要求を飲めない場合それ相応の覚悟をしていただこう、これが我々ができる復讐だ


 我々は生徒会の秘密を知っている、このまま平穏に生活したければ、我々の要求を飲むことが賢いだろう、刀の受け渡しはマイケル本人が我々の元へ下る様に、一つでも要求が飲めない場合、我々は強行手段を用いて、全ての秘密を一般生徒へ公開する


「何よこれ」


「貴様が手回ししたのであろう!」


「何の事かしら?」


「しらを切るつもりか!その様な態度はいつまで続けられるかな?」


 茜は携帯を取り出し、少し操作してから画面を紅葉にみせた


「ちょっ!? 何よそれ!」


「会長!? これは......」


 画面の中には岡部と紅葉が向かい合わせで眠っている写真、春にこっそり撮影した物だ、この時2人は気絶している、岡部もこの事実を知らない


「貴様は岡部と添い寝をしたようだな、なぁに事実はどうであれ、書き方しだいで真実は変わる、我々は今回よく教えていただいた」


「待ちなさい! 私と犬が!? はぁ!? うわ、鳥肌立って来た」


「会長、流石に私も覚えがありません!」


 岡部の必死の論議も気にせず茜は続ける


「どうだ? 吐かないと私も強行手段にでる」


「知らないの」


「は?」


 紅葉の言葉に茜が首を傾げる


「だから知らないのよ、諜報部も新聞部も、私達風紀委員会は一切この件に触れていないわ」


「それは事実か?」


「何も知らないわ、勝手に諜報部が行動して、新聞部がデマを流した、そして私達を巻き込む事で会長さんを別行動させたと私は推測するわ」


「なんでそんな」


「初めから狙いは猿、諜報部の処刑に向かわせたのでしょう? この時点で相手の策略に嵌っているのよ」


「ふふっ、ふはは!」


「会長?」


 突如笑い出した茜に岡部も意図がわからない


「成る程な、我々が団体行動を取り処刑に向かう事を恐れ別行動を取らせるために風紀委員の名までだしたか、確かにそうだ文書で脅しても従わなければ意味がない」


「そうね、猿は諜報部の元へ? だとしたらかなり危険よ、この様子だと刀の為なら何をされるか解らないわ、下手したら怪我だけでは済まないわ、だから言ったのよ、貴方達は多くの敵を作るってね」


「面白い! 我々をここまで手玉に取るとは、だが相手が悪かった様だな」


「諜報部は先鋭ばかり、それに人数だって多いわ、流石の猿でも苦戦するわよ?」


「侮るな、我々の用心棒は平成一の侍だ」


「平成に猿以外に侍はいないと思うのだけれど」


 茜の笑いが響く中、マイケルは獣道を掻き分け進む、茜から事前に渡された地図を何度も見直しながら進む


「まさか学園の裏側にこの様な林があるとは......どれ程規模でござるか」


 マイケルが居るのは学園の裏山、存在は知っていたが学園の私有地だとは知らなかった、手元の地図を確認すると目的地の諜報部部室はもう少しで到着する筈だが


「こ、これは!?」


 マイケルの辿り着いた先には、これまた現代に似つかわしく無い建物がそびえ立っている


「なんと立派な......」


 城だ、白塗りの城壁に黒い瓦、外見で解るのは3階建であるという事と、囲う様に城壁が有り、中心に大きな門がそびえている


「いざ参ろうか、処刑執行でござる」


 マイケルは城へ向け歩みを進めた

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