表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

処刑12 生徒会VS風紀委員ー夏の陣ー 次鋒、中堅

 祭り会場から離れた山、見晴らしの良い木に登り太い枝に腰掛けて祭り会場を見下ろす男


 和服にヘッドホンとミスマッチのこの男はたこ焼きを頬張りながら生徒会を見つめていた


「やっと、見つけたよ」


 男はマイケルの腰から下げている刀を見つけニタリと口端を釣り上げる、二個目のたこ焼きを口に運び考える


(しかしなんだ? あれは侍か? まぁいいあいつが現在のあれの持ち主で間違いない......!?)


 刀を見ているとマイケルがこちらを向いている、遠くに居ながら目が合ってしまった


「一旦引くか......くくっ、それで変装のつもりかい? くははっ!」


 男は木から飛び降り姿を消した、マイケルは風紀委員との勝負の最中で苦戦を強いられている


 相手は風紀委員の頼れる副委員長こと千歳と呼ばれる女だ、見た目からして規律正しそうな女で肩にかかる事のない黒髪、制服は皺1つない、スカートも膝より下で靴下は汚れのない白、校則の模範生の様な女だ


「タイムだ! タイム!」


 茜が声を上げ勝負を停止させマイケルに歩み寄る、マイケルは茜の声で我に帰り目を合わせてハッとする


「会長殿......」


「どうしたと言うのだマイケル、先程から集中力が散漫だぞ」


「いや、なんでもござらん......」


 マイケルが水槽を覗くと大量の金魚が狭い水中を泳ぎ回っている、第二試合は金魚すくい


「お前らしくないな」


「あの? いきなりの作戦会議でいつまで待たせるつもりですか?」


 千歳が不満そうに声をかけてきた、現在作戦会議をしていると思われたらしい


 今回のルールは単純、時間制限は無く支給されたポイ三つを使いより多く金魚をすくい上げた者の勝利とされる


 生徒会の状況は最悪、マイケルは先ほど2枚目のポイを破いてしまった、比べて千歳はまだ1枚しか破れていない、この1枚の差は大きい、金魚の数もマイケルが劣っている、この状況で作戦会議を開かれたと思われても不思議ではない


「すまないでござる、ささ! 今から逆転するでござるよ!」


「マイケル......」

(明らかに様子がおかしい)


 茜はマイケルの見つめていた山を眺める


「正義が負けるわけにはいかないでござるよ」


「そうか......頑張れ」


 茜はその場を離れていき、マイケルは腕まくりをして最後のポイを握りしめる、試合が再開されるとマイケルは調子を取り戻し次々と金魚をすくうが千歳も負けてはいない、数が追いつかないのだ、この時点でマイケルの敗北がほぼ確定的だ


「流石よー! 千歳ー! 愛してるわー!......何処へいくのかしら? 負け試合は見たくないの?」


 紅葉の隣をすれ違う際、紅葉から挑発を受ける


「私に構うな、それと私の部下を馬鹿にしたら処刑する」


「あらら、拗ねちゃって」


 紅葉を無視して試合会場を離れていく


「岡部」


「ここに」


 茜が呼ぶと岡部が音もなく背後に立っていた、茜は振り返り話し始める


「マイケルの様子がおかしい、第二試合は負けだな、今すぐ美遊と千夏を探してくれ」


「会長はどうなされますか」


「私は野暮用だ、すぐに戻るさ、急げ!」


「御意」


 岡部の姿が再び消え茜は歩みを進める、目指すはマイケルが見つめていた山、視線の先に何かあるに違いない


 林に歩みを進めるが、浴衣のせいで身動きが取りづらい


「山登りには向かないな」


 裾を破ろうとしたが、流石うちの学園の手芸部、布が思ったより頑丈だ、溜息をついて歩き始める、暫く歩いて手がかりを探す


(恐らくこの辺りだが、あれは?)


 茜が拾い上げたのはポイ捨てされたゴミだ、拾い上げるとまだ暖かい、恐らく祭りで購入した食べ物の容器だ、中にはソースと爪楊枝、所々に青海苔が付着している


「手がかりはこれだけか、マナーのなってない奴だな、おい! いるのだろう! どこの誰かは知らぬが! 私の部下に手出ししてみろ! 全力で処刑してやる!」


 そう叫び茜は山を下った、その後ろ姿を木の陰から見つめる男は口端をまたニタリと釣り上げる


「肝に銘じるよ」


 その頃マイケルの最後のポイが破れてしまった、生徒会の敗北である


「ぬぁぁぁぁぁぁ!? 破れたでござるぅ!」


「あらー! 大丈夫だよー! まだ皆がいるからー!」


 第二試合を敗北した生徒会、マイケルを楓がなだめている


「面目無いでござるぅ!」


 マイケルが地面に額を擦り付け楓が背中を摩る


「侍! 次は私だから! 頑張るよ!」


 既に岡部によって収集されていた千夏が前に出ると紅葉が千歳を撫でながら声をかけてきた


「あらあら次は千夏ちゃん? 今にでも風紀委員側に来てもいいのよ?」


「私は言ったはずだよ? 美遊っちのいるチームに行くって」


「あらあら、解ったわよ、でも手加減できないわよ?」


「望むところ!」


 美遊が気づいていた異変を岡部に近づき問う、茜がいない、場合によってはまた何かを企んでいそうで怖かった


「ねぇ、バ会長は?」


「わかりません」


「は? 副会長にも何も言ってないの?」


「野暮用だそうです、すぐに戻ると」


「そう、また変な事考えてなければいいけど」


 そして第三試合が始まろうとしていた


 種目は型抜き、昔ながらの屋台にある出店だが問題は千夏が型抜きに挑戦するという事だ


「あらー、怪力女が型抜きは無理だろうねー」


「そうね、千夏が型抜きは集中力が2秒持つかどうかね」


 楓と美遊が落胆しているが、対戦相手の様子がおかしい


「どどどうしよぉ、私が安堂さんの相手......」


「やっほー、谷川さん!」


 隣で千夏手を振る、慌てて谷川も振り返す


「貴方の良いところ見せてあげなさい! ルーキー谷川!」


「は、はい!」


 一年生の風紀委員ルーキー谷川、黒髪ショートのボーイッシュな女生徒、常識があり礼儀正しくそのさっぱりとした持ち前の性格からクラス内では男女共に人気の高いが、千夏が絡むと緊張してうまく話せない、ちなみに好きな食べ物はハンバーグである


 紅葉へ向けオドオドしながら返事をするルーキー谷川、それを見て美遊がジト目で口を開く


「谷川さん、風紀委員だったのね」


「ご存知の方ですか?」


 岡部が意外そうに聞くと美遊が答えた


「えぇ、同じクラスの谷川さんよ、普通の人だと思っていたけど、まさか風紀委員だったとはね」


「クラスメイト、にしては嫌われてます?」


 谷川が美遊を明らかに睨んでいる


「私は覚えないけどね」


 美遊は溜息をついて両手を広げるが谷川の荒んだ睨みが刺さる


「谷川さん?」


「へぇあ!?」

(かわいい、かわいいっすよ安堂さん、その無垢な笑顔がかわいいですよ安堂さん、私は貴方の隣に座れる事を至福の極みっす!)


「谷川さん?」


「い、いえ何でもないっす」

(許さない東西美遊、貴方はこの人類の宝安堂さんを独占している、それは罪、大罪でありいずれ制裁を受けるでしょう)


「じゃあそろそろ始めよっ!」


 千夏がもう待ちきれない様で手元で画鋲を弄っている


「そう……すね」

(画鋲になりたい! 画鋲になりたぃですぅ!)


 一方茜は、暗い森の中祭りの灯りを目指し歩いていたが、不意に声をかけらる


「やぁやぁお嬢さんお一人?」


「こんな所で何やってんの?」


 男が5人、茜を取り囲むが動揺一つ見せないで茜は黙り込む


「わかる、わかるよ、祭り会場のトイレ混んでるもんね」


「兄さん達怖くないからさ、ね?」


 茜は面倒くさそうに袖から木箱を取り出す


「今の私は気が立っている触れない方が身の為だぞ?」

(護身用とは言え持ってきて正解だったな)


「いいねいいね、強がってお嬢さんみたいなかわいい子は大好きだよお兄さん達はね」


 不快だ、下衆な笑みを浮かべる男達に茜は苛立ちを覚える


「聞こえないか? 今の私とは関わるな、部下の元に戻らねばならん」


「部下? 変わった嬢ちゃんだな、部下がいるとしても同じクラスのガキ共だろう? それでこの大人達をどうするつもりだ? 非力なガキが集まったとしても意味ねぇよ」


 怒りが振り切った、茜が最も嫌うのが部下の侮辱行為だ、今回は見ず知らずの輩に部下を、生徒会のメンバーを非力なガキ呼ばわりだ、一瞬にして茜の闘志が燃える


「処刑執行だ」


「あ? 何て?」


「貴様ら全員公開処刑だ、この処刑執行鋼鉄淑女しょけいしっこうアイアンメイデンの前に屈することになるぞ!」


 茜が勢いよく木箱から何かを取り出す、それを木の陰から見つめる男が一人、ヘッドホンに和服の男だ


「おいおい、あの嬢ちゃん大丈夫か?」

(知らない女だがあの刀の関係者だ、仕方ない助けてやるか)


 腰に下げた刀に手をかけるが、すぐに聞こえてきたのは男の断末魔


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」


「いてぇ! いてぇよ!」


「血が止まらねぇ!?」


 ヘッドホンの男は目を疑った、薄暗い森の中で全貌は確認できないが微かな月明かりに照らされた茜は人ではない


(あれは、爪?)


 茜の右手の指先から無数の指が異様に伸びて不可思議な動きを見せている、まるで触手の様に伸びた指先は曲線を描き振るわれ、その爪に触れた者から痛みを訴え倒れていく


(あれは......なんだ?)


 また一人男が倒れた、右腕から大量の血を流し傷口を抑えながら腰を抜かしている


「な、何なんだよ嬢ちゃん!」


「どうした? もう終わりか?」


 茜が振り回していたのは異形の手などではなかった、鞭である


 持ち手から伸びている九本の鞭、その全てに鉤爪がついている


「くぅぬ!?」


 まずは男の腹部に鞭を食らわせる、無数の鞭の打撃が強烈な痛みを与え激痛で意識が眩む


「これが、拷問だ」


 茜はそのまま鞭を引くと鉤爪が男の肉を割く、皮膚が割かれて血が流れる、肉が露わになり男は苦痛に顔を歪ませる


 茜は男の意識を奪い去るまで繰り返す、その度に爪痕が刻まれていく


 気がつくと男共は全滅、立っているのは茜1人だった、空を見上げると月が茜を照らしている


「お月様が見ている、それに死人を出すのは趣味じゃないしな、いるのだろう?」


 茜が一つの木を指差す、その陰にはヘッドホンの男がいる


(気づかれている......!?)


 男は刀に手をかけるが茜の声が先に響く


「別に姿を出さなくていい、何処のどいつか知らないがこいつ等を早く治療してやってくれ、今なら間に合うから、急がないと出血多量でお陀仏だ、私はいくからな」


 茜の姿が消えた後、男は姿を見せて倒れている連中を見下す


「うわぁ、随分と酷くやられたねあんたら、気持ち悪」


 微かに意識を保っている男に声をかけると、掠れ声で助けを求められた


「ごめんね、介抱は苦手なんだよ、介錯なら得意だけど......凄いな、この暗闇で人体急所は外している、殺す気は無かった......か」


 一方祭り会場では谷川が地味な作業を行っている、型抜きである、画鋲でカリカリと割らない様に慎重に作業を進める


 ルールは、枚数無制限で先に型抜き作業を成功したら勝利、なのだが同じ長机で作業するのが谷川を苦しめる


 谷川の手法は削り取り、型に合わせ画鋲を軽く擦り、断面を薄くしていく一般的戦術だが1番着実な戦術、型抜きに近道などないのだから、誤算は隣の千夏が机を揺らしてくる事だ


 千夏の作業、それは力技、画鋲を力の限り振りかざす、案の定すぐに割れてしまう


(机が揺れて作業できない、安堂さん力み過ぎです)


「難しいなぁ、型抜き」


「そ、そうっすね」

(困惑してる安堂さん、最高っす)


 谷川がラスト一欠片まで作業を進めていた、最後の神経をすり減らし挑む、画鋲の針を当てた瞬間に机がまた激しく揺れた、揺れた影響でずれた画鋲が無常にも型を粉砕してしまった


「ぅ〜〜〜〜〜!?」


 谷川に言葉にできない絶望が襲う、今までの苦労が全て無駄になり、形はどうあれ己の手で割ってしまった為尚悔しい


 千夏は作業を続ける、ガンガンと画鋲を叩きつける、谷川は半泣きで次の型を受け取り、作業を再開したその時


「できたぁぁぁぁ!」


 千夏の声が響き谷川の思考が止まる、しかしこれからが本当の勝負、店主による審判が下される


「どれどれ、嬢ちゃんのやり方じゃ到底無理だと思うけどね」


 店主のおっちゃんが千夏の型を確認、首を横に降る


「何で!?」


「嬢ちゃんの型は原型留めてないよ、これじゃあとてもとても」


 千夏が作った型はお題のチューリップからかけ離れている、遠目で見れば見えなくは無いが、合格点は貰えない


「そんなぁ!」


 千夏が机を叩きつける、谷川の型がまた割れる、しかしおっちゃんはこの瞬間を見逃さなかった


 驚きの表情を見せた後千夏に声をかける


「ツインテールの嬢ちゃんの勝ちだ」


「え? いいの?」


「はぁ!? なんでっすか! 確かに安堂さんはかわいい! ですが!」


「これを見なよ」


 納得いかないのは谷川だ、おっちゃんに抗議をかますが、おっちゃんが机を指差す


「完璧な型抜きだ、どう見てもチューリップだな」


「これは......!?」


 千夏の手元にチューリップ型の穴が空いている、恐ろしき腕力で千夏は着実に机にダメージを与えていた、何度も何度もチューリップ型になる様に画鋲を叩きつけ机は限界に近づいていた


 最後の机を叩きつけたのが決め手になった、チューリップ型にミシン目をつけられた机は最後の衝撃でチューリップ型の木片を吐き出したのだ


 おっちゃんが落ちている木片を拾い上げた


「ここまでやる型抜き師がまだいるとはな、日本も捨てたものじゃないな」


「そんなぁ、ま、まぁ安堂さんなら仕方ないっすね」


 谷川が恐る恐る手を差し伸べ千夏に握手を求めたが、千夏の姿は既に無い


 勝者は千夏に決まった、歓声に包まれながら千夏が美遊の元へ戻る


「なんか解んないけど勝てたみたいだよ!」


「まぁいいけど、有りなの? あの勝ち方」


「いいんじゃない? おっちゃんが良いって言ったし」


 谷川は力なく紅葉の元に歩いていく


「委員長〜、もう、私、挫けそうっす」


「大丈夫よルーキー谷川、手に汗握る勝負だったわ」


「そうっすか?」


「そうよ! 自信を持ちなさい、千夏ちゃんもしっかり貴方のこと意識してたわ」


「そうですか? そうっすよね!」


 谷川の表情が緩んでいく、解りやすい、紅葉は谷川のこういう仕草が好きだった


 一方生徒会は茜が戻らない事に不安が残るが岡部の姿も消えている


「岡部殿? 岡部殿は何処でござるか?」


「岡部ー? どこー?」


「なんで生徒会トップ2人が不在なのよ、仕方ないか、次は私の番ね」


 美遊が首をコキコキ鳴らしながら前に出る、浴衣姿じゃなければ格好がついたのだが


「会長、見つけましたよ」


 岡部は1人で森に入り茜を見つけていた、茜は倒れた木の幹に座り込み月を見上げている


「岡部か」


「なぜ戻られないのですか」


「最初は戻ろうとしたさ、だが、後に私は感情に任せて取り返しのつかない事をしてしまった、お月様が見ている下で」


「月、ですか」


 岡部も月を見上げる、雲ひとつ無い空には満点の星と存在感のある月が佇んでいる


「岡部、生徒会に敵が近づいている」


「敵ですか?」


「あぁ、私も殺意を向けられた、殺意だけだが」


「無事で良かった、会長に何かあれば......!」


 風で木々が揺れ、月の光が差し込む、月明かりに照らされた茜の頬には赤黒い血痕が付着している


「気づいたか? 拭き取ったんだがな」


「お怪我を!?」


 岡部がハンカチを取り出し血を拭う、その際茜の手に握られた異形の鞭に気づく


「返り血だ、子供扱いするな」


 そう言いながらも茜は抵抗しない、されるがまま岡部に血を拭ってもらっている


「そういう台詞は楓さんの特権ですよ、衣服の方は目立ちませんね、黒地に救われましたね」


「なぁ、聞かないのか、何があったか」


「九尾の猫鞭、残虐極まりない拷問器具ですね、これでは錆びてしまいます、手入れしておきますので私に預けておいてください」


「本当によくできた部下だな」


「私は会長に着いて行くと決めましたからね、あの時に」


 茜が目を逸らし頬を気恥ずかしそうに人差し指でかいている


「お前よく恥ずかしげも無くそういう事言えるよな」


「恥ずかしい何てとんでもありません、私は私の意思で貴方に着いて行くと決めたのです」


「優秀すぎるよ、岡部は」


 茜が腰を上げ、岡部は体制を低めたまま見上げる


「会長?」


「ならそろそろ行くか、まだまだ手のかかる部下達の元にな」


「御意!」


 2人は暗い林の中、祭の会場目指して歩き出す

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ