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処刑11 生徒会VS風紀委員ー夏の陣ー 開幕

 暖かな湯気が夜空に浮かび、祭りのたこ焼きは独特の尊さがある、その球体は外側をカリカリで東西美遊を魅了していた


 息を吹きかけて、少し熱を冷ましいざ実食


「はむ、ん〜! おいひぃ!」


 たこ焼きに食らいつき、口の中で旨味がジュワッと広がる


「はっはっは! そうだろそうだろ!」


 橘はその反応に満足していた、2人がいるのは出店通りから少し離れた一角


「これは人気出ますよ」


「あんまりがっつくと火傷するぞ?」


 賑やかな通りに目をやると、大勢の大人達が美遊を探して彷徨っている


「おぉ! これはこれは橘殿!」


 声がする方へ視線をやるとマイケルがこちらに近づいてきた


「侍じゃねぇか、楽しんでるか?」


「それどころじゃないないでござる! 美遊殿を探して大人達が動いているでござる」


 口に含んだたこ焼きを飲み込み美遊が会話に加わる


「んぐ......それで? 原因は?」


「うむぅ、原因は不明でござるが、浴衣組とか制服組とか言っていたでござる」


「訳わからないわね、橘さんごちそうさまでした」


「おう!」


 ゴミを設置されているゴミ箱へ捨てて美遊は首を捻り音を鳴らす


「どっちにしろ行けば解るわよ、マイケル」


「護衛は任せるでござるよ」


「よし、じゃああの我儘バ会長の暴走を止めるわよ」


 その頃、茜は的確に指示を出し探索範囲を広げていた


「岡部は北の方角に再度迎え! 決して美遊には逃げられるな! 楓は私と共に周囲の聞き込みと散策!」


「「了解!」」


 一方風紀委員も負けていない、紅葉が携帯に向けて叫んでいる


「周囲に応援要請よ! 報酬は一年生の安堂千夏ちゃんよ! 目標ターゲットは一年生の東西美遊ちゃん! 生きたままこの場に連れてきて! 脱がしても構わないわ!」


 共にいた2人は既に散策に出かけている


「おっちゃん、綿あめちょーだい!」


 争いの原因である安堂千夏は状況について行けず綿あめを頬張っている始末


「あ、千夏じゃん」


 美遊達と千夏が合流した


「美遊っち! 人気者の美遊っちだ!」


「何よそれ」


「千夏殿、久しぶりでござるな」


「うおー! 侍だ......うぇぇぇぇえ!? 橘さんじゃないですかー!」


「よ!」


 橘は気さくに右手を上げた


「春に一回あっただけですよねぇ!」


「「見つけたぁぁぁぁぁぁ!!」」


 紅葉と楓の手を引いた茜が物凄い剣幕で接近してくる


「え、ちょ!?」


 そのまま美遊目掛け3人はダイブ、美遊はそれを回避、茜はそれを見越し着地したが紅葉は顔面ダイブを地面に決め眼前にモーニングスターが落下


「危な!?」


 これを見てギャラリーも集まってくる


「はっはっは! 中々の動きだ、流石は私の部下だな永遠咆哮エターナル・ロア!」


「流石だー!」


 茜と楓は納得したように頷く、瞬時に紅葉が立ち上がり抱きつく


「だから今度は何なのよぉ!」


「逃さない逃さない逃さない逃さない......ふふ、うふふふふふ」


「怖いよこの人!? 久しぶりに見たけど!」


 これが茜の癪に触ったようだ


「人の部下に手を出すな!」


「今夜は風紀委員の気分かも知れないじゃない!」


「だぁぁぁもううるせぇぇ!」


 話を聞かないで暴走を続ける二人に美遊がキレた、叫びの後一瞬の静寂が流れる


 茜が恐る恐る口を開いた


「えっと、美遊さん?」

(久々に怒らせてしまったな......これは殴られるかも知れない)


「あんた達何やってんのよ、こんな大勢の人巻き込んで」


 阿修羅の如く形相で二人を見下す、周りのギャラリーもどよめきを隠せない


「これは風紀委員が我々を追い出そうとしたから」


「詳しく話しなさい」


「だって風紀委員が」


 美遊の睨みに逆らえなかった茜は全て白状した、それを聞いた美遊は溜息をついて頭をかく


「まったくくだらないわね、遊びたいならそう言いなさいよ」


「そんなんじゃないわ! 私は生徒会を追放するのよ」


「だったら周りに迷惑かけないようにしなさい、千夏もこいつらに関わっちゃだめよ、危険だから」


「ははーん、成る程祭りらしく勝負しろと」


 茜が腕を組み鼻を鳴らすが、美遊は嫌な予感しかしない


「生徒会なんかに負けないわよ」


「侮るなよ紅葉、我々には千夏と乳女がいるのだぞ?」


「そんな! ずるいわ!」


「貴様に勝ち目はないぞ?」


「くぬぬぬ」


 橘が手を振りながら背を向けてしまった


「解決したならいいや、私は店戻るぜ」


「まておい! 貴様は重要な戦力なのだぞ?」


 茜の叫びに橘が振り返る


「せっかくの祭りだガキンチョはガキンチョと楽しく遊んでろ、あー忙しい忙しい」


 煙草を咥えて橘の姿が消えた


「くそ! 乳女がいなくなるとあとは我々6人か」


「あらあら? 統率が取れてないわね、流石生徒会」


「あ? 我々6人で事足りるさ、むしろ私一人で平気だが」


「へぇ?」


「お?」


 また二人は睨み合い、すぐにも喧嘩が始まりそうだ


「あんたらいい加減にしなさいよ」


「案ずるな美遊、周りに迷惑をかけるな、だろ?」


 そしてついに生徒会VS風紀委員の試合が始まる


「何よこれ」


 美遊はついていけなかった、水槽の中を水の流れに乗って回転している小さな水風船


 ヨーヨー釣りだ、それを真剣な表情で挑む楓と風紀委員、風紀委員も小柄な女生徒だ、小柄と言っても楓程ではないが


「やってしまえ楓!」


「生徒会なんてのしてしまいなさい! れーちゃん! 」


 各自代表の茜と紅葉が声援を送る、周りの観戦している大人達も声援を送る、それに答えるようにれーちゃんは立ち上がり周りに手を振る、一部学園の男子生徒が集団で歓声をあげている


「何者だ? あの男共は」


 茜の疑問に紅葉が答える


「あれはれーちゃんのファンよ、男共から人気高いからね、誰にも譲らないけど」


 れーちゃんが笑顔で手を振ると、大きな歓声が上がる


「みんなありがとう! 私頑張るよ!」


「オーディエンスにも無理に作った笑顔振りまいて、風紀委員も大変だねー? 楓にはわからないよ」


「私はファンを大事にするんだよ、何処かの生徒会と違って」


「それよりさ、あのうるさいの消しちゃっていいよねー?」


 楓が振り向きながらモーニングスターを飛ばす


「げぶるぅ!?」


 棘鉄球が直撃して男子生徒が数人吹き飛んだ


「あははー! スッキリしたー!」


 楓は無邪気な笑みでモーニングスターを右手でゆっくりと揺らしている、即座に動いたのはれーちゃんだった


「なんて酷い事を! 大丈夫? 痛い所無い? 」


「れ、れーちゃん......」


 吹き飛ばされた男子生徒に手を差し伸べ介抱する、前かがみになりれーちゃんは男子生徒から魅力的に見える角度で屈む、それを見た茜が声を荒げた


「あざとい!? あざといぞあの娘ぇ!?」


「会長、情報を得ました」


 岡部が耳打ちしてきた、どうやられーちゃんの情報を集めてきたらしい


「ご苦労、あの娘上手く味方を作ってやがる、これでは吹き飛ばした楓より介抱しているれーちゃんの方が好感度が高い」


「仕方ありません、彼女はあざとさのれーちゃん、と呼ばれています、その振る舞いで傘下にする恐ろしい女生徒です、今や大規模なファンクラブが学園で存在するレベルです」


「問題は楓だな、どこまで耐えられるかだな、私もイライラしてきた」


「会長落ち着いてください、ちくわありますから」


「すまないな」


 岡部からちくわを受け取り頬張りながら茜は勝負を見守ることしかできなかった


「どうでもいいよー、やるならさっさと始めよー?」


 楓の笑顔に陰りが見え始める


「そうね、こんな暴力する悪い人は私がやっつけてあげる!」


「へぇー? 楓に勝つつもり?」


「それじゃあ、始めよっか!」


 れーちゃんが楓に手を差し伸べ握手を求める

 、敵にも礼儀を持つことを周りに見せつけるれーちゃんの作戦


「まぁいいよー」


「お互い頑張ろうね!」

 

 楓が手を取るとれーちゃんが微笑んできた、徐々に楓のイライラが溜まっていく


 第一試合、ヨーヨー釣りの幕開けだ


 先に動いたのがれーちゃん、手持ちの切れそうな糸で繋がれたフックを水槽に入れてヨーヨーを釣り上げようとするが上手く吊り上げられない


「えい! あれれ?」


 これもれーちゃんの作戦である、わざとらしく不器用を演技している、恐ろしい娘である


 何度も釣り上げを失敗して少し剥れるれーちゃんは次の作戦に出る、男子生徒達も復活して、れーちゃんにエールを送る、応援団顔負けの熱いエールが飛ぶ


 楓のイライラが溜まり続けている、手元が震えてうまくつれない中、れーちゃんの標的がヨーヨーから店主のオヤジさんに変わる、オヤジさんは絵に描いたような頑固親父で腕を組みながら二人の試合を見届けている


「おじさーん、これコツとかあります?」


 れーちゃんが大きな瞳でオヤジさんを見上げる、露骨な上目遣いがオヤジさんを襲う! あざとい! あざといぞれーちゃん!


「あ?......あぁ! これはだな」


 オヤジさんが器用に一個ヨーヨーを釣り上げる


「うわー! すごーい!」


 れーちゃんが両手を合わせてわざとらしく喜ぶ、着実に楓のイライラが溜まっていく


「ほらよ」


「ありがとうございます!」


 オヤジさんがれーちゃんに釣り上げたヨーヨーを渡してしまった


 楓はその光景を見ても笑顔だが若干引きつっている、そして楓が動いた


 ヨーヨーにフックを引っ掛け、釣り上げるように見せたが楓は攻撃を仕掛けた、ゴムを遠心力で伸ばし、糸が切れない絶妙なタイミングでゴムを外すと水風船がれーちゃんの顔に直撃した、日頃からモーニングスターを使っている楓にとってヨーヨーは扱いやすく、自由自在に操る事が出来るのだ


 水風船は衝撃で割れ、中の水がれーちゃんを襲う、腰を抜かしれーちゃんは尻餅をつく


「冷たっ!? 酷いなぁ」


 れーちゃんは制服姿で少量の水を浴びてしまった、あざといのだ、あざとさが増してしまったのだ、これにより男共から歓喜の声が上がる


「ごめんねー? 手元狂ったよー!」


 楓はまんざらでも無さそうだ、確信犯だ


「いいよいいよ、事故だしね!」


「それより君さー、恥ずかしくないのー?」


 それを聞いたれーちゃんは慌てて腕で透けた部位を隠す


「......見ないで!」


「あれー? おかしいなー? 君は注目を浴びるのが好きなんだよねー?」


 楓はれーちゃんの動きを封じた、ここまで計算して攻撃を仕掛けた、ただの嫌がらせでは終わらないのだ、これが生徒会クオリティ


「そんな事ないよ!」


 れーちゃんが持ち場に戻る、恥じらいなど既に捨てたのだ、しかし遅かった楓のヨーヨー裁きは常人ではなかった


「よっとー!」


 一振りで3つのヨーヨーを釣り上げる、何故か糸は切れない


「負けないよ!」


 れーちゃんも不器用アピールを辞めて次々に一個づつ釣り上げる


 時間をかけて一気に釣り上げる楓に比べてれーちゃんはスピード勝負


 お互い同着で試合が終了間近、勢いよく二個楓が釣り上げたが、その際糸が切れてしまいヨーヨーが上空に飛んでしまった


「私の勝ちだよ!」


 れーちゃんが最後の一個、勝負の決め手を釣り上げてしまった、楓の敗北が決まった


「そこまで!」


 オヤジさんが勝負を止めた、これにてゲーム終了だが、楓は笑っていた


「まだだよ」


 楓は背面に左手を伸ばし、右手を自分の真横に構える


「まさか!? そんな!?」


 れーちゃんの勘は当たってしまった、先程上空高く飛んだヨーヨーが落ちてきて両手でそのままキャッチ、楓の逆転勝利だ


 静寂が流れる、オヤジさんも固まってしまった


「いよっしゃぁぁぁ!」


 茜の雄叫びが止まった時間を動かした


「私の、負け?」


 れーちゃんは状況を理解できない、解るのが男共が落胆している事だけ


「よくやった楓ぇ! さすが私の部下だそぉ!」


 茜が楓を抱きしめ頭を撫でる、生徒会一同は歓喜に包まれた、しかし美遊と千夏姿がない


「会長ー! 楓勝ったんだよー!」


「そうだ! お前は勝ったんだ!」


 そんな二人を見つめてれーちゃんは途方に暮れるが、紅葉が歩み寄り屈んでれーちゃんと目線を合わせる


「ごめん......なさい、委員長私、私ぃ!」


 泣き出しそうなれーちゃんを紅葉が優しく抱き寄せる


「もういいの、れーちゃんはよく頑張ったわ、だから泣かないで? ね?」


「委員長!」


 第一試合の結果は生徒会の勝利で終わった


「りんご飴って舐めるか齧るか解らないわよね」


「私は齧るよ?」


 一方美遊と千夏は普通に祭りを楽しんでいた、美遊は呆れて思考を放棄し、千夏はそれについてきたのだが、ここで二人に近づく男が一人、一度美遊と肩がぶつかった男だ


「やぁ、また会ったね」


「え、えぇ」

(何この人、相変わらず嫌なオーラ発してるわね)


「美遊っちの知り合い? 変な人多いね!」


「変な人とは酷いなぁ」


 男は千夏に笑いかけるが、嫌な感じがする、細い目は何かを見据えているようだ


「私達に何の用?」


「んー? やっぱり知ってるよね? お嬢さん」


「何がよ」


「美遊っちこの人変だよ、行こう?」


 千夏が手を引き美遊とその場を去った、取り残された男は空を見上げ笑う


「ははっ! ははははっ! 近い! 近いぃ!」


 周りの視線を気にした男は我に帰り、たこ焼きやに並んだ


「お前、あの子達に何の用だ? あと500円な」


 橘が男にたこ焼きを渡しながら睨む、男は500円玉を手渡したこ焼きを受け取る


「さてね、探し物をしていてね、何か知らないか聞いただけ」


「あの子達に手を出したらタダじゃおかねぇからな」


「そう、肝に命じて置くよ」


 男は手を振りながら背を向けて去っていってしまった

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