07町までの道程と童貞喪失
「すまなかったねぇ、本気と信じてやれなくて」
歩き出してからも、時おり振り返りながら声をかけてくるセーフの、心配そうな顔に逆に心がえぐられる。
「いや女性に心配される内容としては、多分最低な部類ですからそろそろ止めてください」
「そうかい。じゃあ索敵メインにシフトするよ」
にっこりと爽やかな笑みを浮かべたセーフが目を閉じ周囲に意識を向け始めた。
うん、そうしてくれた方がありがたいっす。
早いところ思い出にしなければ!!
ふぅ…
「鑑定で見てると意識を外に飛ばす様子がわかるね」
そう口に出した途端に電子音が響く。
ポーン。スキル取得【範囲観測初級】
「おう。セーフと同じスキルが手に入った。使ってみよう」
目を閉じて意識を外へ、目を閉じてるはずなのに周りが見える。
そのまま視点を上に移動すると自分の姿が見えた。
「瑞木、近くにオークとゴブリンが来てるよ。数はそれぞれ2頭」
声を聞いて意識を索敵のために視点を高速で移動させてみた。
「20メートル道なりに進むといるみたいだね。こちらに歩いてくる」
「あぁそうだよ。瑞木は範囲観測を解いて戦闘準備しな。アンタの力なら十分に殲滅可能さ。でも四対一は初陣にはキツイ。まず槍を投擲して仕留めるんだよ。さぁ気張りな!!」
出来れば最初にしとめるのはオークといきたいところだね。
「了解っ!!」
収納から槍を取り出すと、先に歩いてくるオークに狙いをつける。
距離はもう15メートルってところか。
「ん?こちらに気付いた…」
走り出したオークは2頭のゴブリンと距離が開き始めた。
そこへ、投げた槍が心臓目掛けて飛んでいく。
真っ直ぐに先行していたオークの心臓を貫いた槍は、そのまま体内を突き抜けると、柄をオークの体内に残したままで、真後ろについてきていたゴブリンのうちの1頭の頭蓋骨を割って突き刺さり、止まった。
「ふぅ、後2頭」
つぶやきながら収納から追加で剣を取り出す。
「ガァアアア」
叫びながら走ってくるオークに向かって、走り寄りながら斬りつけることにする。
走りながら剣を担いで上から振り下ろそうとするオークの右手の剣が、振り下ろされるより早く左下から斬りつけた僕の剣は、右脇の下から左の肩口へスパッとキレイに抜け、心臓を半分に切り裂いた。
そして、オークはというと、自身が振るった右手の剣の遠心力で引っ張られ、切り離された上半身がそのまま僕から見て左上方へ飛んでいく。
「ゴブリン」
オークの後ろから走ってくるゴブリン目掛けて、オークを切るために振り上げていた剣をひるがえして下げ落とした。
切っ先辺りから打撃音が聞こえ、先ほどの切り裂いた感触とは全く別の手応えを感じる。
振り下ろした時に角度が悪くて剣の腹で殴った形になったらしい。
ゴブリンは、頭を砕かれて絶命していた。
「剣で切るって難しいんだな、叩き潰しちまった」
こうして初陣は殺しの童貞の喪失と共に実に無難に終了した。
そして、命を奪った感触に剣を取り落としかけて、強く握る。
「もう、この世界で強く生きると決めた。しかも僕の進むのはイバラの道。ビビってる暇なんか無いんだ」
誓いを再度口にした時、気合いが入った気がした。
ポーン。スキル取得【叱咤激励】【槍レベル1】【剣レベル1】【投擲レベル1】【打撃レベル1】
「うーん。少し趣がない。そう言えばレベルは?」
確認すると2つ上がっている。
「レベルアップのコールが無いのは何故なのかな?」
「それは設定を変更してないからだよ」
セーフの声が聞こえた。
顔をあげると、すぐ近くに佇みつつ辺りの警戒に余念がない
「そんな項目あったっけ?」
「レストでは理解出来る事は真理を与えられるのさ。逆に知らない事は知覚出来ない。でも瑞木は今知ったろ?だからステータス欄に表示が出たはずさ」
そういうもんか。
じゃあ開いてみよう。
瑞木美孝18才
レベル3(1)
体力値102(1)=102
魔力値102(1)=102
力202(1)=202
知力102(1)=102
俊敏さ102(1)=102
器用さ102(1)=102
幸運値103(1)=103
魅力72(1)=72
称号
貧乳好き、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失
スキル
鑑定、他種族言語理解、スキル取得補正、レベルリセット、緊急避難、スキルリセット、収納ポケット、レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正、範囲観測初級、叱咤激励、槍レベル1、剣レベル1、投擲レベル1、打撃レベル1
相性
なし
奴隷
なし
設定
一部非表示
「おおっ堅実に上がってるよ。スゲー嬉しいな」
設定の項目を呼び出して、と…
中身を見るとものすごい細かい設定まで設定切り替え項目が着いてる。
中には呼吸や脈拍なんてのまである…
全て表示なんてしたら…
多分、気が狂いますわ!!
レベルアップの項目を表示して一部読み上げに変更。
他には、隠しパラメーターの記載もあったのでこちらも一部読み上げに変更しとこう。
まだ敵地だからね。
また、時間のある時にいじくり倒すことを心に誓ってステータス表示を閉じた。
「さて、次の敵が来る前に剥ぎ取りしとくんだよ!!ほら急いで!」
セーフの声に、オークとゴブリンの死体に目を向けると結構良さげな装備だ。
「まずは槍を拾ってと、オークは剣を2本、鎧は無いが鋭い牙と毛皮が特徴か。ゴブリンは短剣と皮よろいと盾が2組だ」
収納しておこう。
でも、オークの毛皮剥ぎ取りと牙の抜き取りは結構時間かかったな。
毛皮を収納した途端に、また例の音が鳴り響いた。
ポーン。スキル取得【解体初級】
「後は討伐証明かな?耳位が一般的か…とりあえず両耳を切りとっておこう」
と言いつつ収納。
「一段落だね」
「そうだねぇ。だけど次の客がお出ましになったようさね」
視線で促されると今度はコボルトが4頭だった。
「息つく暇も無いわけですね」
「こんなに血の匂いをブチ撒けてれば犬は寄ってくるに決まってるよ」
あぁ…
確かに仰る通りですね。
「解体に時間かけすぎだったね。次は頑張るよ」
「そうしなっ!先ずは短剣と槍で数を減らそう」
的確なアドバイスがありがたい。
まずは、走ってくる先頭目掛けて槍を投擲。
その後は、ゴブリン謹製の短剣を残りに投擲した。
結果として、槍で2頭が串刺しになった。
短剣もハズレ無し。
3頭は心臓を貫いていたので絶命していたが、槍に串刺しになった内の1頭は、腹を貫かれてもがいていた。
その最後の1頭の首を、引き抜いた槍で素早く突き刺して止めを刺す。
その直後、ポーン。スキル取得【短剣レベル1】【投擲レベル2】
ピーン。レベルアップ。
おぉ、もう投擲レベルが上がった。
スキル取得補正が仕事してるわけか。
「さてと、剥ぎ取りにうつりますか」
言いながらコボルトの持つ計8本の短剣を収納。
毛皮を4つ。
解体スキルのおかげでオーク2体分の時間で完了。
解体後に、ポーン。スキル取得【解体中級】
これで更に時間短縮が可能になりそうだ。
結果的にその後、町までの街道にたどり着くまでに、オーク1体とゴブリン5体とコボルト20体を弑した。
レベルも二つ上がり6に、スキルも槍レベルが2つ、投擲と短剣レベルは3つ上がった。
戦闘は全てセーフの索敵で見つけて、近付かれる前に投擲で倒す簡単なお仕事でした。
ありがとうございます。
街道は綺麗な石畳で結構しっかりしていた。
何かしらの結界でも張られているのか、それとも別の理由か。
敵に遭遇する機会が半分以下になり、出現も1体ずつになった。
町の門扉までには6体のコボルトを狩ることで、剣スキルが1つ上がった。
短剣は12本で毛皮は6つ、街道にたどり着くまでに狩った獲物と合わせて短剣と毛皮だらけだ。
「しかし、モンスターが多かったよね」
「おうよ。この近辺は騎士団がしっかり駆除を定期的にしてるはずだから、比較的少ないはずなんだけどねぇ」
いやいや、町に着くまでのわずかな道のりで40体は、どう考えても多いでしょう。
「騎士団に何かあったのかなぁ」
そして…
僕のその呟きは最悪の形で肯定された。
瑞木美孝18才
レベル6(1)
体力値105(1)=105
魔力値105(1)=105
力206(1)=206
知力105(1)=105
俊敏さ105(1)=105
器用さ105(1)=105
幸運値107(1)=107
魅力105(1)=105
称号
貧乳好き、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失、狩人
スキル
鑑定、他種族言語理解、スキル取得補正、レベルリセット、緊急避難、スキルリセット、収納ポケット、レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正、範囲観測初級、叱咤激励、槍レベル3、剣レベル2、投擲レベル5、打撃レベル1、解体中級、短剣レベル4
相性
なし
奴隷
なし
設定
一部非表示
今日はエビス片手に書いたら興が乗りました。なので勝手に一時間に一回投稿祭りを開催します。
期日は私の意識が持つまで、では皆様乞うご期待っ!!