68朱音の嘆きと戦略的思考の構築
「朱音さん、気持ちはわかるけど、絶対に間違いなく現段階では却下です。大事なことなので二回言いました。理由も聞きたいですよね?」
「どうしてか是非聞きたいです!私の気持ちは伝えましたよね!!汲んでは頂けないのですか?」
汲んでますよ。
この上なくね。
「では、答える前にまず聞きましょう。僕の言う本題とは何でしたか?」
「えっ!!ええと…討伐…のた…めの…情報を、リーフ様から聞くことです」
うん、正解ではないな…
「不正解とは言いませんが、ちょっと遠過ぎますね。まず、一番ズレているのが目的です。僕達は討伐ではなく、ラードを救う事こそが目的です。討伐は必要だからするに過ぎません。だから、正解はラードを救うための討伐に必要な情報を確認する事。ですよ?」
「一体どうしたってんだい。瑞木、アンタらしくもない。そんな言い方したこたぁ…今までなかったろう」
黙ってて、セーフ。
「必要な事なんだよ。燈佳さんを早く復活させたいならね!!今までどおりラードを救う事を第一にするなら、今までどおり場当たり的に魔物を狩ってもいいんだから」
「ふん。何ぞ考えとるようじゃのう」
そうさ。
「続けますよ。具体的に言うと、リーフの話は罪の告白までで終わっています。なぜ、全ての魔物を討伐するとレベルが200まで上がるのか。理由と経緯が全くわかりません」
「あっ。そうでしたね。ごめんなさい」
反省は大事だよね。
「気にしてませんよ。リーフ。あの時は、懺悔で精一杯だったでしょう」
「ありがとうございます」
うん、良い返事だ。
「リーフの話から推測すると…自然に考えれば、おそらく出てくる魔物が変化するのでしょうか?もし、そうならその構成は?弱点や特徴は?減らした時に、次回はどう増える?増やし続けた場合に起きる事態は?縁辺部にはどう広がる?まだまだあるでしょう。知らない事だって、たくさん!!」
「そんな事が姉ちゃんの復活にどうして関係があるのさ!!どうでも良いじゃない。そんな事より王をどうやって説得するかの方が私には大切なのよ!!」
わかっては…
くれなかったね。
残念だよ。
「朱音さん。もう一度考えて下さい。僕は王の説得をするために今の話をしたんですよ?」
「わからないわ。貴方には、美孝さんにはわからない。姉ちゃんに、姉ちゃんの、あの掌に焦がれる私の気持ちなんかわからないのよ!!そん…」
バッシィィン。
かなり思い切りの良い音が室内に響き渡った。
朱音さんの前で仁王立ちしたリーフが、右手を振り抜いている。
物凄く痛そうな平手打ちが通り抜けた、朱音さんの左の頬が赤みを帯びてきた。
「いい加減になさい!!朱音!!どれだけ美孝さんに甘えれば気が済むと言うのです!!貴女の今の言葉が、どれだけ美孝さんを傷付けるか!!それを考える事も出来なくなったと言うのなら、ここには貴女の居場所は無いのですよ!!」
リーフの顔は涙でクシャクシャだ。
叩いた右手のせいで心こそが痛いのだろう。
「何も考えずに叫ぶのは子供のする事です!!何故、貴女の目的に最短距離の道筋を示してくれている美孝さんを責めるのですか!?喚いていないで、真剣に美孝さんの言葉と向き合いなさい。そうすればわかります!!」
リーフ。
ありがとう。
「あっ!!美孝さんは…元の世界で亡くなってここに来たんですものね…わ、私なんかとは…比べ…物にな…らな…い位の…ぐすっ…沢山の…何かを無…ふう…くしてこ…こに…ずずっ…いるんで…すよ…ね。ごべんだざび。ゆずじでぐだざあ」
朱音さんの瞳からボロボロと涙が落ちて、声もどんどん濁音が侵食していく。
居たたまれないってば!!
「まぁ、確かに、その通りではあるんですけどね。だからこそ、僕はセーフにリーフ、朱音さんのアーサー、榊家の面子や葛城の面々に会えたことは間違いないんです。だから、あまり気にしてないですよ?泣き止んで欲しいな」
「はび」
うん、同意はしてくれたね。
「その事よりも、さっきの質問を朱音さんに理解してもらうことの方が、僕にとっては重要なんですよ。もちろん、燈佳さんにとってもね!!」
「姉ぢゃんにどっでも?」
「そうです。燈佳さんはラードを守る騎士だったんですから!!…朱音さん。もう一度考えて下さい。僕は王の説得をするために今の話をしたんですよ?」
「うー。わから…ないよ…何故。王?説得に…」
「では、王は何を望んでいると思いますか?」
「街道の…安全確…保?」
「確かに、それも必要でしょう。でも本質的な処が別にありますよね?」
「本質的…?みんなの笑顔?」
うん。
良い答えだ!!
僕的には満点で良い!!
「そうです!!王は国民皆の笑顔のために勇者を招くんですよ。あくまで皆の…です。そして、条件がついてましたよね?」
「魔物を総て排除したら、その後に復活させて欲しいという話でしょ?」
はい。
「そうです。では、その意図はどこにあるでしょう?」
「魔物がいる…と交易が出来ないわ。復活させても食べさせるものが…無いんだわ!!結局餓死してしまう。その復活は無意味なのね」
と言うことは?
「そう考えているているであろう王の元に、具体的な案もなく、今すぐに燈佳副長を甦らせたいと僕らが行ったらどんな対応をされると思います?」
「門前払いも良いとこだわ。下手をすれば、叱責をうけて処罰されるかも!」
特に貴女とリーフはね。
「では、どうすれば良いでしょう?方法はルートは違えど、結局1つな気がしますけどね」
「王を殺す!!」
待て!!
「それは、僕が許さない!!っていうか本気か!?燈佳さんを甦らせることが絶対に出来なくなりますよ?」
「えへへっ…いやぁ」
あっ。
目がマジだ。
この人、マジで王様を殺っちゃう覚悟固めているわ……
追い詰めすぎたか?
「穏便に行きましょうよ。答えを言います。一刻も早くマザー以外の魔物を狩り尽くすか。王を納得させられるだけの計画を立て、かつ、実行してから行くかのどちらかですよ。どちらにしろ魔物の情報を分析し、最大の戦果をあげられる努力こそが一番最初に必要です」
「もしも、もしもよ。謁見を一時間後に組めたとして…王がどう返答するか。予測が立つのかな」
納得したくないんだね。
試してみたいと…
それが無理なら、具体的な例が知りたいのか。
「多分、言われると思う内容は再現出来ますけど…辛いこと言われるってわかりますよね?さっき自分で叱責されると言ったんですよ?どうしても聞きたいんですか?」
「是非。聞かないと納得出来そうに無いの。頭ではなく心での話よ」
真面目だよね。
「わかりました。泣いてしまうのは仕方ありませんが、怒り出さないで下さいよ。敢えて言うであろう言葉をそのまま伝えますからね?誰も恨んじゃダメですよ?約束できますか?」
「…します」
この行動をすることには損ばかりで益はないと思うけどね。
朱音さんが望むなら仕方ない。
「わかりました。いきますよ。リーフ!!お前がついていながら、なんと嘆かわしい。国民が餓死している中で、無意味に食い扶持を増やせと申すのか?国民を守ってきた騎士の言葉とは思えぬ。この男とお前達がどれだけ強かろうと、結局狩れたのは最下級のコボルト400頭ではないか。そこに、副長が甦ったところでいか程のことか。今、勇者と交渉中じゃ。勇者が街道の片付けを終わらせた後に、お前の姉も戻ってくるのだ。それを待て。我が国民総てとお前の姉1人とを天秤にかければ、我が出す答えは自ずと知れよう!!去れ!!二度は言わん」
「一番穏便に言われてこれ位かな?」
「わ、私には国民なんかよりも姉ちゃんが大事だもん!!」
涙が滲んでいる。
気持ちはわからんではない。
「で、納得できましたか?」
「うん。スッキリした。王城で聞いてたら、その場で王を撲殺してたけど」
うん、目が恐い。
「絶対ダメですからね!!」
「約束したから勿論よ!!」
してなかったら!?
ま、そこの部分には突っ込みません。
「じゃあリーフ。お願いします」
「待って、取り敢えず狩らなきゃいけない数は1日何頭?」
やっと朱音さんが前向きの発言をしたね。
「王を納得させるためには、最低二千頭でしょうね」
「通常の四倍か…わかったわ」
僕一人で最下級の魔物を狩るなら楽勝だけど…
状況を知らないとわからないよね。
「じゃあ始めますよ」
宜しくね。
「頼むよ。リーフ」
「一言で申しますと、ご名答です美孝さん。予想通りに発生する魔物が段々強くなります。このデータは二百年程前に、研究熱心な騎士団長が、懇意にしていた勇者とともに6ヶ月程かけて集めたもので、信憑性は高いのです。ただし、研究をしていたので、今回と状況が違う点があります。1つはオークのみで検証しています。町には肉の供給が必要不可欠ですから。2つ目は、増え方を確認するために合計で千頭程狩っています。だから、このデータの最大頭数は三千なのです」
一気に話しすぎて息が切れている。
緊張して話してるなあ。
少しでも早く伝えたいんだね。
「うん、ありがとう。緊張しすぎないでね」
「はい。では、詳細に移りましょう。オークで説明しますね。三千の内訳から、まず一番多いのは普通のオークで千頭です。この千頭は、間引かれれば上位種よりも率先して召喚されます」
率先…か。
「例えば、普通のオーク千頭を含む二千頭のグループが居た時に、普通のオークのみを五百頭狩れば?」
「普通のオークが千頭になるまでは、普通のオークのみが召喚されますね」
ほう。
「それは素晴らしい情報だ!!弱い奴だけ減らしていっても、安全マージンを増やせるって事だ」
「そうか。強い奴が足されなくなるから、強い奴が追加で召喚されるまでの猶予が伸びるってこったね」
そうだよ、セーフ。
「オークのみで千頭に達している時に上位種が現れます。数は五百頭上限で、二種類です。種類の名前はラージオークとオークヘビーです」
コボルトへビーは聞いたことあるな。
「特徴は読んで時の如しで、デカイのと重いの?」
「ヘビーの方は重い訳ではなく、守備力が高いのです」
ふーん。
重装備か…
「これで二千頭」
「はい。次の千頭についてです。特異種ですね。上限数は百頭です数は十種です。合計で千頭になる計算ですね。この括りの魔物がたまに最下層とともに、ランダムで召喚されるので、特異種と呼んでいます。あと、燈佳の命を奪ったジャイアントオークメイジはこの括りより上のオークです」
まだ上が居るのか。
「ということは、リーフの足を奪った奴は更に上なのか!?」
「わかりません。でも、ジャイアントオークメイジとも格が違ったので、恐らくはそうでしょう」
「つまりは、今の現状は更に千頭が足されているから、手強い奴等が千頭増えてるのか」
「そう予測するのが妥当だねえ」「弱くなる要素がありゃせんのう」
年の功2人も同意見ですか。
「なお、この十種は、ソルジャー、メイジ、ナイト、ヒーラー、アーマー、シーフ、アサシン、アーチャー、ポイズン、パラライズの名を冠しています」
毒と麻痺は厳しそうな相手だな。
「ジャイアントオークメイジの例を考えると、複合型がその上にいそうだね。混合上位種と呼称しようか」
「そうですね。わかりやすいですし」
わかり易さは大事だよね。
「因みに奴等の分布はどうなってるの?僕は昨日まで最下級の奴等としか戦ってないんだけど…」
「それについては、マザーの居る塔から見て、同心円状に内側は強い個体で、外に行く程、弱くなる分布である事がわかっています」
とすると。
「つまり、マザーの側近ほど偉くて近い位置にいるわけか…」
「どんな感じで縄張りを決めてんだろね?」
さてね。
「それならわかります。新しく塔の周りに強い個体が召喚されると、そこを縄張りにしていた弱い個体が、外に向かって歩き出すようです」
ホントの意味での縄張りかよ。
「なんか良いイメージを持ち様の無い話だなぁ。まぁ何にせよ方向は決まったね。皆でレベル上げしながら、食料を大量に取っ捕まえるという基本思想に変更無しだな」
「協力者である奴隷のみんなが、加わってくれれば、スムーズに事が運びそうだよ。ありがたいじゃないか」
そうだね。
セーフ。
「それは厳しいかもしれません」
あれ?
なぜだい?
リーフ。
瑞木美孝18才
レベル28(15)
体力値215(140)=30100
魔力値219(140)=30660
力339(140)=47460
知力231(140)=32340
俊敏さ214(140)=29960
器用さ220(140)=30800
幸運値250(140)=35000
魅力437(140)=61180
風10(140)=1400
水10(140)=1400
火10(140)=1400
土10(140)=1400
光10(140)=1400
称号
貧乳も好き、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失、狩人、精霊の親友、コボルトの天敵、難病の克服者
スキル
超鑑定
他種族言語理解
スキル取得補正
緊急避難
レベル・スキルリセット
収納ポケット
レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正
叱咤激励
大声
降霊術
精霊魔法信頼級
交渉・召喚魔法上級
解体・身体強化・範囲観測中級
回復・催眠・風魔法・馬術・火魔法初級
武装レベル:槍13、剣8、投擲19、打撃1、短剣20
妻
リーフ
相性
綱芳(340)さやか(653)恵美(595)武司(95)玲子(55)朱音(1397)メルー(72)道緒(83)直(101)メアリー(87)燕(89)レモン(83)流々(88)里乃(81)リーフ(1290)奈美枝(203)天河(53)春臣(63)君里(71)秋虎(72)アーサー(159)太陽(79)七海(71)
精霊:風(11,7)水(9,3)火(9,1)土(8,7)光(7,9)闇(10,8)
奴隷
朱音・メルー・道緒・直・メアリー・燕・レモン・流々・里乃・リーフ・天河・春臣・君里・秋虎
設定
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遅くなりましたが、いかがでしたか?
また、明日はいつもの時間にお会いできれば幸いです。