63震える勇者と王の真意
ちょっとストップ、状況を整理しよう。
降霊術で勇者の霊を喚ぼうとしたのに、召喚魔法で生きてる勇者を召喚しちまったんだよな…
とそこまで考えて、勇者の肩が軽く震えるのが見えた。
不安そうな顔だ。
あぁ、この人は普通の人なんだ…
そう確信した。
リーフさんと朱音さんに普通の人だよと告げた後、声をかける。
「すみません。こんなもので申し訳ありませんが、まずは羽織って下さい」
震える勇者から顔を背けて、収納から取り出した毛布を渡す。
因みに、この毛布は野宿が必要になった時の為に買ったものだから未使用だ。
「…うん」
おずおずと受け取られた
「僕の名前は瑞木美孝です。此方は妻のリーフと協力者の朱音さん。ここはラード王国の首都、ラードの下町です。勇者の霊を喚ぼうと色々手を尽くしてたんですが…召喚魔法が発動したらしくて、貴女をいきなり喚んでしまったみたいです。想定外の出来事ですが、ご迷惑をお掛けしてしまって…ごめんなさい。良かったらこれも使って下さい」
毛布を羽織ったことを確認してから、顔を見ながら話す。
渡したのは、魔法使いが使うローブだ。
魔法に浮かれて買ったものの、自分が、基本前衛主体だと気付いて愕然とした品だ。
試着以外袖を通していない。
「…ローブなのね。毛布もなのだけど…何で私にこれを?」
受け取りながら訊ねられた。
だが、質問の意味がわからない。
着古しは嫌ってことかな?
「僕の私物には、当然、女物がないので、貴女が着られる服を考えたら、お渡ししたローブになっただけですよ?因みに両方とも新品ですから、安心してください。趣味に合わないと言う話なら、申し訳ありませんとしか言いようがありませんが…」
「…貴方は…瑞木さんと言ったのかしら?…私を勇者だと知っているのよね?」
そう説明したはずだけど…
解りにくかったかな?
「はい、勿論です。勇者の霊に頼み事をしたくて、降霊術を使っていたつもりで、召喚魔法を発動させてしまったみたいでして、偶然とはいえ、勇者にお越し頂けるのは有り難いな、と思っていますよ?もしかして、全く関係無い方でしたか?」
鑑定で知ってるけどね…
「…勇者なの。葛城奈美枝なの」
うん、知ってますよ。
「間違いでなくて良かった。葛城さんとお呼びしても良いですか?」
「…下の名前で呼んで欲しいの…旦那達と同じになっちゃうの」
旦那…達か、そうなるよね。
「わかりました。奈美枝さん。ご迷惑をかけている所で重ね重ね申し訳ないのですが、もし、許して頂けるなら…勇者魔法について教えて貰うわけにはいきませんか?」
「…ここはラード王国だったのね。普段なら…時間外料金で1分間で千ラード頂くって言うところなの…でも瑞木さんなら無料でいいの」
何かイメージと違う発言だな…
お金に執着無さそうなのに…
って無料か。
「ありがたい話ですが…特別扱いの理由だけ、伺っても良いですか?」
「…瑞木さんも、そちらの二人も勇者だからって偏見の目で見てないからなの。さっきの料金は慰謝料として貰ってるだけなの」
当たり前…
でもないか。
アリエスの話を聞いてなければ、二人には無理だっただろうな。
「という事は…五時間労働も世間の目から逃れる為の方便ですか?」
「…それは買い被り過ぎなの。…それを知ってるなら、知ってるはずなの。…性行為至上主義者っていうのは真実なの。…家族の団欒を邪魔されるのは好きじゃないの」
仲良くするんだから…
確かに団欒だね。
「では、何故…その団欒を邪魔した僕の質問に答えようと考えてくれたんですか?」
「…まぁなんとなくなの…いい人そうだからなの。色々話して人柄を知りたいと…思ったの」
まぁそれなら良いか。
「ありがたい話ですね。実は、肉体の欠損を治したいと思いまして、勇者魔法を使ってみたんです。魔法そのものは、発動したのですが、結局、効果を得られなかったんですよ。何が悪かったんでしょう?」
「…ホ、ホントなの?…勇者魔法を発動出来るの?…どうやって詠唱を知ったの?」
うん、当然の疑問だろうね。
「昔、別の勇者が使っていた詠唱を、書き留めていた人に教えて貰えましてね。使ってみたという事なんです」
嘘ではない。
セーフが調べあたったという事は、つまりそういう事だから。
「…嘘は言ってないみたいなの、でも情報源は何となく…まぁ、それは当たり前なの。…しかし、普通は魔力が全然足りなくて発動なんて無理なの。…瑞木さん凄いの」
うーん。
真実を言った方がいいね。
「それには…理由がありまして、僕は今、13人と奴隷契約を結んでいます。そして、妻とは性奴隷契約を…だから、能力値が随分補正されてますので、発動出来たんですよ」
「…意味がわからないけど嘘をついてないのはわかるの。でも、性奴隷がいるのに、何故、そんな基本的な事を聞くのかはわからないの。謎かけなの?」
やはり、世界の秘密まではたどり着いてないのか。
「性奴隷契約と言いましたが、まだ、リーフとは…してないんです。そして、ちゃんと仲良くなるまで、する気もありません。だから、それまでは勇者にはならないんです」
「…してないってエッチを?」
ど直球だ。
「はい、そうですね」
「…変わってるの。まぁ別に人の趣味に口出ししないの。勇者魔法は勇者になった時に、自然にマニュアルが脳裏に浮かぶの。だから、今の話に嘘は無いのね。…結論から言うの。今の瑞木さんには使えないの。勇者魔法は、性奴隷とともにしか使えないの。だから、無理なの」
ふぅマジか。
「具体的な方法を教えてもらっても構いませんか?」
「…いいけど、実演した方が早いの。ここに私の家族を喚んで欲しいの。いきなり私が消えたから、きっと心配してるの」
そうだよな、多分。
「喚ぶことは吝かではないんですが、人を喚んだのは、初めてだったんで、何が起こるかわかりません。素っ裸が基本仕様の可能性もあります」
「…そうね。でも、リーフさんの足を治してあげれば、代金に服位貰っても良いでしょ?」
それは勿論ですって!!
「願っても無い事です。というか。例え、何もしなかったとしても、裸のままで放っておくなんてしません」
「…うん。その普通の感覚がありがたいの。瑞木さん達がラードで生活していてくれるなら、ラード王の依頼を受ける事にするの。服をくれるなら問題ないの。私の旦那達と娘を喚んで欲しいの」
娘さんか!!
まぁ結婚してるんだから当然か。
「では、それぞれの方の名前と年齢と背格好を教えて下さい。イメージが大事です」
「…わかったの。葛城太陽は27歳、身長は176㎝、痩せ型、葛城七海25歳、身長は181㎝、筋肉質、葛城圭子2ヶ月、身長は45㎝、可愛い女の子よ」
ふむ、イメージは掴めた。
これで、人違いはしないだろう。
「わかりました。圭子ちゃんはどちらが抱いていますか?」
「…あっ、そうなの…んー。わからないの。一番最初は圭子にして欲しいの」
うっ、それはちょっと…
「それはお断りします。何が起こるかわからない状態で、圭子ちゃんから喚ぶなんて恐ろし過ぎます」
「まず、見える所から喚んで試しゃ良いよ」
確かに。
「そうですね」「それがいいよ」
「…急にどうしたの?2人とも」
奈美枝さんには、セーフがわからないもんな
「まず、別の人間を召喚して、試しをしてみようという話ですよ」
「…ふーん?そうなの?」
セーフの事はまだ言えないよな。
良い人っぽいけどね。
セーフに目で合図を送ると、奈美枝さんのスキャンを開始し一瞬で終わった。
「召喚による影響は無いよ。太鼓判を押せるね」
あぁ良かった。
何かあったらどうしようかと思った。
「朱音さん、お願いね」
「うん!!」
元気でよろしい。
燈佳さんが復活する目処がたったからね。
「部屋の外に出た朱音さんを、召喚してみます」
「…あぁそういう事なの」
いくか…
あっ、人物の特定で、良い方法を思い付いたぞ。
「では、いきます。今ここに、瑞木美孝との契約者である鍵軒朱音よ、隔たる距離をこえて現れよ」
詠唱を終えた瞬間に、朱音が現れた。
目の前でこちらを見て、キョトンとした顔で立ち尽くしている。
どうやら、服も召喚可能だ。
「良かった!!成功だね!!あれ?朱音さん、どうしました?大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。外にでて扉を閉めたら、すぐに召喚されたから、少しビックリしたのよ。あと、喚ばれた時に半回転した感覚があったよ」
半回転?
なんだろな?
セーフに目配せすると、朱音さんをスキャンし始めた。
「瑞木、召喚による悪影響は見当たらない。大丈夫さ」
ふぅ、一安心。
「朱音さん、喚ばれた時にどちらを向いてましたか?」
「扉を出たままですから、ちょうど、真後ろを向いてた感じですね」
それなら、多分解決だ。
「もう一度、実験をお願いしますよ。今度はこちらを向いてリーフさんと手を繋いで待っていて下さい。そうすれば半回転することなく二人で帰ってこれます」
「「わかったわ」」
二人は、そのまま外へ向かう。
二人纏めて召喚すると、予想通り回転の影響は無い。
離れた場合や高低差も確認する。
「よし!!これで準備良し。召喚します」
まずは…
「万が一に備えて、この上に召喚しますが、抱き止めてあげて下さい」
収納から服や毛布を目一杯だしてクッションにする。
「…宜しくなの」
「では…今ここに、葛城奈美枝の娘である葛城圭子よ、同じく、配偶者の葛城太陽と葛城七海よ。隔たる距離をこえて現れよ」
詠唱を終えた瞬間に、赤ん坊を抱いた筋肉質の男と、上半身裸で非常に焦っている痩せ型の男が現れた。
「…太陽落ち着いて欲しいの!!私はここなの!!無事なのよ。圭子と七海もそこに居るのよ。大丈夫なの!!」
奈美枝さんが声をかける。
太陽と呼ばれた男が、奈美枝さんを発見して安心したらしい。
「無事で良かった。一体何があった?誰かに説明して貰えるか?」「圭子は静かに寝てるよ」
3人で視線を交わして、笑いあっている。
幸せそうでいいなぁ。
「…実は、ここはラード王国なの。私たちはそこにいる瑞木美孝さんに召喚されたのよ」
「召喚?よくまぁ。そんな珍しい魔法を使う奴がいたもんだ」「圭子には影響無いよね?」
七海さんは凄く子煩悩だ。
「…さっき色々試してから喚んでくれたから心配要らないの。凄く良い人達なのよ。私を偏見の目で見ないの」
「まさか!!」「そんな人達が!?圭子に普通の眼差しを向けてくれると?」
「…だから、ラード王からの依頼を受けようと思うのよ」
「あぁ、奈美枝の産休中に話があった、例の魔物の駆除と、被害にあった国民の復活って奴だったか?確か報酬に拠点も手厚く確保してくれるとか言ってきた奴だろ?」
えっ?
やっぱり?
「…そう、瑞木さんたちが居るなら、友達のいない寂しい日々からも、サヨナラ出来そうなのよ」
何があったの?
「「そりゃいいな」」
あんた達ってレベル19509で、能力値平均が84000000ある勇者の性奴隷だよね?
随分寂しい事言ってるなぁ。
瑞木美孝18才
レベル28(15)
体力値215(140)=30100
魔力値219(140)=30660
力339(140)=47460
知力231(140)=32340
俊敏さ214(140)=29960
器用さ220(140)=30800
幸運値250(140)=35000
魅力437(140)=61180
風10(140)=1400
水10(140)=1400
火10(140)=1400
土10(140)=1400
光10(140)=1400
称号
貧乳も好き、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失、狩人、精霊の親友、コボルトの天敵、難病の克服者
スキル
超鑑定
他種族言語理解
スキル取得補正
緊急避難
レベル・スキルリセット
収納ポケット
レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正
叱咤激励
大声
降霊術
精霊魔法信頼級
交渉・召喚魔法上級
解体・身体強化・範囲観測中級
回復・催眠・風魔法・馬術・火魔法初級
武装レベル:槍13、剣8、投擲19、打撃1、短剣20
妻
リーフ
相性
綱芳(340)さやか(653)恵美(595)武司(95)玲子(55)朱音(1071)メルー(72)道緒(83)直(101)メアリー(87)燕(89)レモン(83)流々(88)里乃(81)リーフ(982)天河(53)春臣(63)君里(71)秋虎(72)アーサー(118)奈美枝(106)
精霊:風(11,4)水(9,3)火(9,1)土(8,7)光(7,9)闇(10,8)
奴隷
朱音・メルー・道緒・直・メアリー・燕・レモン・流々・里乃・リーフ・天河・春臣・君里・秋虎
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