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女神とともに転移した世界がまるで地獄(エロゲ)でした  作者: 瑞木美海
第1日目 僕のパートナーは170CMの妖精さん
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SS大地母神セーフの気持ち

セーフさんの恋心を書いてみました

 雪の降りしきる中、セーフは一つの生き物だった物体を抱き締めていた。


 その物体の元の名前を瑞木美孝という。


 老犬となっていたセーフを助け、二本の鉄骨の下敷きになり即死。

 物言わぬ死体となった。


 セーフはと言えば瑞木に遅れること5分。

 苦しみ抜いて死に、元の老犬の体から魂だけ抜け出したところだ。

 そのまま瑞木の亡骸に駆け寄り抱き締める。

 目を閉じたまま、鉄骨との激突の衝撃で断ち切られ、首から上だけになった瑞木の頭部を…


 そして、舞い落ちて地面を白く染め始めた雪のその上を、瑞木の首から滴り落ちる血によって赤く染めながらセーフは呟く。


「ありがとうよ…あんなに真剣に私を助けてくれて、カッコいいね…アンタ」


 一陣の風が瑞木の髪を掻き乱していく。


「男前が台無しじゃないか」


 手櫛で、乱れた瑞木の髪を、いとおしそうに撫で付け、そのまま瑞木の頭を優しく撫で始める。


「こんなに薄汚れて可愛くもなんともない犬になった私を、あんなに一生懸命助けてくれる奴がいるなんて思わなかったよ」


 セーフは禊のために、いくつもの不幸な生き方を己に課していた。


「一種の呪いに近いってのに…そんな命を守るために必死になってたアンタの瞳に惚れちまったよ」


 セーフは瑞木の唇に優しく唇を重ねると、瑞木の頭部を雪の上に戻した。


「名残惜しいがお別れだ。もし、アンタが私の使命に付き合うと言ってくれるなら、レストで一緒に旅が出来るんだがねぇ」


 立ち上がり、もう一度瞳の閉じられた瑞木の顔をセーフは見つめた。


「さよなら…またね」


 転生のために消えていった。


 その瞬間、工事現場に喧騒が戻る。バイトの高校生が死んだのだ。

 救急車と警察が呼ばれ、実況検分が始まっている。


 その中で、セーフは神通力で結界を張り、別れの時間をつくったのだ。


 瑞木美孝は、まだ出会えていない恋人とのデート資金を貯めるべくバイトを始め、一切使うこと無く死亡した。


 冬の終わりに似合わない、雪の舞う土曜日のことだった。


 そしてセーフは木暮と交渉し、パートナーを瑞木にすることに成功する。


 ただし、本人の意思を確認してからだと諭され、返答はすぐに伝えると言われたので、転生の準備をして待っていた。


「一時間もあれば話は終わるよ」という木暮の言葉を信じて。



一時間経過…

 ふっと溜め息。


三時間経過…

 はぁっと溜め息。


十時間経過…

 ……。


一日経過…

 目を閉じ、瞑想を始めた。


十日経過…

 悲しそうに、見えない空を見上げるように、顔をあげた。


一ヶ月経過…

 涙が頬を伝い、幾筋も流れた。


六十日経過…

 額に青筋をたてて、むっつりと座り込んだ。


 そう、二ヶ月近く彼女はじっと待っていた。

 恋い焦がれて待っていたのだ。


 そして、その時は訪れた。


 開口一番は待たせたことを責めてしまう。


 しかし、その返答は謝罪と自分が一度も言われたことのない可愛いという誉め言葉だった。


 一瞬の嬉しさを感じると共に瞬時に怒りが込み上げてくる。


 セーフは襟元で髪を短く切り揃え、ボブカットに近い髪型で、身長も170を超えている。

 目は二重で大きめだが、視線が強く、凛々しい顔立ちという表現がぴったりだった。


 そして、体型的にも膨らみが少なくいわゆるシャープなモデル体型。

 端的に言って貧乳な残念さんだったのだ。


 可愛いという感想に一番縁遠いことを、一番知っているのはセーフである。


 故に、真剣に言葉を尽くした瑞木の言葉はセーフに届かなかった。

 しかし、瑞木の童貞で真剣で、ばか正直な人柄に安心する。

 自分は恋人にはなれそうにないが、良いパートナーを持つことが出来たのだと。


 そして、セーフは笑みを浮かべながら異世界に転移していった。


 惚れ込んだ瑞木のコーチング妖精として…

楽しんで頂けましたか?本編の次回は予定どおり明日1月17日18時からです。お会いできたら幸いです

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