05セーフの使命と僕の加護
「ええと、魔王を倒せば、お仕事完了じゃないんですか?」
「ゲームの話を聞かなかったのかい?性奴隷さえ手に入れて修行すれば瞬殺だよ。そんな奴っ!!問題にもなりゃしない。そんな簡単なことのために私が行く必要なんてないじゃないか!使命は世界のあり方を正すことさ。命を健やかに循環させることなんだ」
めっちゃ抽象的ぃ。
「具体的に何を行うのかが、全く見えないんですけれど?」
「自己の奴隷化の話は聞いてるね?生き残るために自然に発生したレスト特有の生存術…そして諸悪の根源だよ。それを潰す。完全にね!!」
陰りを帯びた眼差しも可愛らしいです。
「確か自己暗示によるものでしたよね?しかも無意識にしてるとか…各職業で指導法すら確立されてるって聞きましたよ?」
「おうよ。ここのところ指導法なんてもんが蔓延ったお陰で、至るところに死んだ目の奴らが働く世界になっちまったのさ。王ですらもね…」
それは…
聞いてて危険な状態だってわかる。
「戦闘系や産業系の職業だけでなく、統治者などの指導者、裁判官や官僚までが自己の奴隷化で破滅的な行動をしてるんですか?」
「鋭い見方をするね。嬉しいよ。でも破滅的ってのは少し違うねぇ。簡単に言えば機械の様なのさ。感情を全く無くしちまったようなね」
確かにそんな指導者の下では働きたくないなぁ。
「そんな国には行きたくないなぁ」
「そうだね。指導者達は、確かに感情を捨てて事に望まなければならない場面もあるんだけどねぇ。それは悲しみを知った上で切り捨てるものであって、はなから排除して望めば酷い結果が待ってるもんだからね」
「つまり機械的な行動をするがゆえに破滅的な結果を呼び寄せていると?」
「おうさっ!!打てば響くとはこの事だね。…だから、私らは確立しちまったレストの社会を、根底から覆さなきゃいけないのさ。奴隷に相互依存するっていうレストの理に則った行動でね」
おうっ。
なんか凄く無理ゲーな予感。
「その方法は?」
「レストで実際に生活してみて考えるに決まってる。解らないことだらけだからね。まずは生活の安定が第一目標。それにはまず性奴隷だよっ。気張りなっ!!」
笑顔が眩し過ぎる。
「コーチング妖精にしては知識的に僕と変わらない感じがしますけど…」
「そのとおりさ。あのエロゲとレストが似通ってるという情報しか確定情報がないからね。だから奴隷に関する細かい前提条件はズレてるかもしれないね。でも、生活をしていくに従って分析するし、情報収集に特化した能力を持ってるからね。コーチとしての能力は低くはないさ。地球の神もサポートしてくれるし、ネットワークにも繋がれるからね。あと一応の案だけは抱えてるよ。でも使えるかは現地を見てから判断だね」
その能力は普通に便利だな。
つーか。
指針があるなら言えば良いのに。
…でも、意味不明な指針は迷走する原因になるから。
…まぁいいか。
「じゃあ、僕が貰った加護について検討しましょうか。結構、チートな能力を貰ったと自負してますが」
「鑑定で見てやるかねぇ。まずは鑑定…他種族言語理解…スキル取得補正…レベルリセット…緊急避難…スキルリセット…収納ポケットが主なとこだね」
「…瑞木…これじゃあ厳しいけど大丈夫なのかい?」
ぇえっ?
「厳しいってどこら辺がですか?」
「瑞木、レストは奴隷に相互依存する世界だよ。そして、その上で奴隷が凄く手に入りにくい世界だ。この特殊能力は、奴隷が手に入った後なら十全に機能するけど、それまでは圧倒的に能力不足に陥っちまう。そこは考えたのかい?」
「木暮さんがレベルリセットとスキルリセットと緊急避難は絶対だって着けてくれたんですけど」
「木暮に感謝しな。その三つがなけりゃ詰んでる可能性大だったよ。ホントなら魅力MAXとか口説きの天才とかのチートが最適なんだ。もっというなら性技の味方なんて面白いかもね」
いや…
ゲス姐さん…
提案がちょっとアレ過ぎです。
「いや、流石にそれは僕の魅力とは言い難いでしょう?だから断ったんですよ」
「バカなことを言うねぇこの子は…瑞木の本質が変わるわけじゃ無いんだから、あんたの力だろうに。でもね、瑞木の魅力を見せて貰ったけど低すぎるよ。これじゃホントに無理ゲーレベルだ」
瑞木美孝
レベル1(1)
体力値100(1)=100
魔力値100(1)=100
力200(1)=200
知力100(1)=100
俊敏さ100(1)=100
器用さ100(1)=100
幸運値100(1)=100
魅力50(1)=50
称号
貧乳好き、童貞、心清き者、死者
スキル
鑑定、他種族言語理解、スキル取得補正、レベルリセット、緊急避難、スキルリセット、収納ポケット
相性
なし
奴隷
なし
「魅力が50だろ?全体的にチートで能力が底上げされてるけど、この数値はレストでは普通レベルの魅力だよ。とても性奴隷になってもいいって言うほどの強烈さは無いからねぇ」
「努力します」
「言い切ったね。気負いもないようだし、じゃあ補正をつけてあげる。気合いでレベル上げして、魅力を高めなっ。内容はレベルアップ時の魅力値上昇十倍補正だ」
「それなら通常の上昇が1でも十倍上がれば10あがりますね。努力のしがいもありますよ」
「後は装備品だね。あまり目立つと問題だから、鍛造の剣と槍を一振りずつとミスリルの鎖かたびらの上に皮のよろいだね。手甲とすね当ては黒鋼製だから重いけど守備力はあるはずさ」
「こうして着けてみると素晴らしいの一言ですね」
「まぁ、目立つ剣やよろいは普通にしておいたからパッと見は大丈夫だけど、鎖かたびらや手甲なんかは高級品だからね。気を付けないと殺されて奪われかねないから注意を怠るんじゃないよ!!」
「気を付けます。貴女を手に入れるまでは死ねないですから!!」
「はいはい。あてにしないで待っててやるよ。さて、あとは金だね。持ってみな。神通力で重さを感じられるようにしてあるよ。この空間には重力がないからね。22万3千ラードだ」
「本気なんだけどな…まぁおいおいわかって貰おうか。さて…お金ですか。22万3千ラード?豚の背油風な呼び方なんですね」
「二年前の調査では、約一年は宿に泊まって活動できる額だ。じっくり調査したり、レベル上げに励めるように多目に用意したよ。大金貨二十枚、金貨五枚、大銀貨十枚、銀貨五枚、大銅貨十枚、銅貨五枚だね」
結構な金額だ。
食費込みでと考えると四百万円位に相当するのかな。
「結構ずっしりしてますね」
「金属だからね。一万ラードは約二十万円位の換算になる。落とすんじゃないよ」
スられたらすぐ解りそうだな。
「インフレとか起きてないですよね?」
「無い…とは言えないよ。人の営みだからね」
二年あれば結構変動が起きかねないよね。
と考えつつ収納ポケットに入れると重さの感覚が消える。
うわっ、便利だな。
「さて、打ち合わせはこれ位にしてそろそろ行くよ」
もれはないかな。
「転移するとこの死者の称号は消えるんですよね?」
「そうさ、私の力で生命を再び獲得し蘇る。私は、神ではなくなり、瑞木にしか見えないコーチング妖精になる」
僕専用?
「他の人には見えないんですか?」
「瑞木に奴隷ができたり、家族ができたり、信頼出来るメンバーが出来た時には、私が見える様になるはずさ。まぁ、人目のあるところでは話しかけたりしないつもりだよ」
専用ではないのか…
仕方ないけどね。
「転移は…レストのどこに出るんでしょう?」
「さぁ行くよ。ラード王国首都ラードの近郊の森だよ。」
ん。
ちょっと気になる。
「身分証明はどうやってします?冒険者ギルド?」
「ととっ!!そうだね。でも怪しまれるから門から入って、中の冒険者ギルドで登録して身分証明を発行してもらおう」
と言いながら僕とセーフの姿が光に包まれ始めた。
当然、僕は…
ずっと続けている正座のままだ。
楽しんで頂けましたか?ではまた明日17日の18時にお会いできたら幸いです