49ご飯配布と初の奴隷契約
下町に着くと辺りには、無気力に腰をおろす人たちの姿があった。
まず、手を洗おう。
「清らかな水よ現れよ」
るるぅーっと水が召喚される。
ふよふよと空中に静止する水に手を突っ込みよく洗った。
手を引き抜き水を還すと、近くの人からため息が漏れる。
見とれる位に、美しい光景だったらしい。
「さて」
器を手にとり、濃い方のスープを満たし、近くの一人に声をかける。
「ご飯を渡しに来たんだ。受け取って」
「えっ?それ?いいの?」
立ち上がり質問する女の子。
「勿論さ。はい」
スプーンと共に器を渡す。
「……」
無言で食べ始めた。
一瞬でも時が惜しいと言うように。
「お代わりはあるから、言って、あと余り急いで食べると危ないよ。食べたらでいいから話を聞いてね」
食べながら頷いた。
「セーフ、この辺りに危険な子は?」
「取り敢えず、あの右奥の小僧がギリギリだね。それ以外は立って歩けそうだ」
「わかった」
ギリギリの彼の側にしゃがみこむ。
移動には身体強化を存分に使った。
「食べ物を渡しに来たよ!!今から口に入れるからね。ゆっくり飲み込むんだ。頑張れ」
叱咤激励を使って虚ろな目を覚醒させる。
震える口に指を指し入れて、薄いスープを少しずつ流し込んだ。
同時に、水の精霊に回復魔法を頼む。
「はいー。いいよー、軽く長くかけるねー」
少しずつ飲み込みに力が戻る。
目にも生気が帰ってきた。
「そろそろ止めな。少しして落ち着いてから、再度薄い奴で良いだろう。回復魔法ももういい」
「そうか」「わかったのー」
あれ、セーフの声聞こえてるね。
「ありがとう、水の精霊」「いいよー」
眠り始めた男の子を、壁にもたれさせて、振り向くと期待に目をギラつかせた人達が立っていた。
十人はいる。
「皆に渡すから、順番に並んでね。大丈夫、皆に渡せるから」
言いながらスープを満たした器とスプーンを両手に出す。
「はい」
「ありがとう」「いえいえ」
「はい」
「すげー」
「はい」
「あんがとよ」「ゆっくり食べてね」
渡しては出し渡しては出すのを繰り返す。
集まった男女十数人に行き渡った所で伝える。
「食べたらでいい。話を聞いてくれ。スープを飲んだら肉料理もある。旨いぞ。お代わりも用意した。器を持って来れば入れるから」
「頂戴」
最初の子だ。
「おう。肉とスープどっちがいい?」
「食べられるならどっちでもいい!!両方欲しい!!」
「うん、そうだよな。気を付けて持つんだよ。はい」
持ってきた器を受けとり、スープを満たし、ハンバーグを二つ入れる。
「いやったー!!」
喜びがハンパない。
それを見て、みんなが我先にスープを食べ尽くそうと頑張り始めた。
「急いで食べないで!!熱いから火傷しちゃう!!下手すると喉に詰まるから!!ちゃんと渡すから、ゆっくり!!誰か死んだら渡さないよ」
食べる速度が元に戻る。
「少なくとも明日も配りに来るから!!心配しないで!!ちゃんとみんなの分を用意するよ!!」
「おぉーっ」
食べながら歓声が上がる。
「話ってなぁに?」
さっきの子だ。
「もう食べ終わったのかい?早いな」
「だって、凄く凄ーく美味しかったの。初めてあんなに美味しいご飯を食べたわ。名残惜しい位よ」
ハンバーグのソースが付いてる。
指でソースを拭い、舐めとった。
さすが恵美さんの作ったソースだ…
旨すぎる。
「きゃあ、汚れるわよ。私…最近まともな生活してないから」
「いいさ、大丈夫」
「お代わりくれるか?」
行列が出来始めた。
「スープと肉を二個でいいか?」
「三個くれるか?」「勿論さ」
みんな並び、お代わりが渡る。
先ほどの女の子に目を向ける。
「お腹が一杯になったところで、お願いが三つあるんだ。一つ、リーダーの所に案内して欲しい。二つ、僕は街のみんなを助けたい。だから、配ってることを、腹が減ってる困ってる奴等に教えて欲しい。勿論、備蓄が十分にある奴等は除外でね。三つ、僕の仲間になって欲しいから、僕の話を聞いて欲しい」
「三つ目は、ご飯の保証はある?」
そりゃね。
「勿論さ。配る側にまわって貰うんだからね」
「なら、私はたった今から仲間だ。よろしく」
僕も君も、名乗ってもいませんが?
「気持ちは嬉しいけど、仲間になってもらうにあたって、説明したいことと、同意してもらいたい事があるんだけどな…」
「ご飯は全てに優先するのよ!!私は鍵軒朱音。ご飯が保証されるなら奴隷にだってなるわ」
「そう、正にそれを説明予定だったんだけどね。僕は瑞木美孝。君の主人になるよ。よろしく。取り敢えずは三食の食事の確保は間違いない。対価は誠実に、裏切らず僕と働く事。奴隷契約に同意するかい?」
「ホントに奴隷扱いな訳か…まぁ、私に二言は無いよ。同意するわ」
ビスッと音がして、空中に契約書が表れた。
杭で留められて、奴隷契約書と銘打たれている。
主人欄に瑞木美孝、奴隷欄に鍵軒朱音と書かれ、署名が刻まれた。
雇用条件欄に三食の食事の確保とあり、満たされなかった場合は双方話し合いのもと、奴隷契約の解除が可能と記載されている。
ポーン。【瑞木美孝の奴隷に鍵軒朱音が加わった】
「はい、これで契約完了だ。これからよろしくね朱音さん。僕の事は呼び捨てで構わないよ」
「へっ?美孝さま。私はてっきり夜の相手をすることになるもんだと思ったんですが?違うんですか?」
おいっ。
「話を聞いてたかい?僕は協力者である仲間が欲しいんだよ!!性奴隷になってもらうとしても、同意を得たうえで、きちんと恋人になりたいしね」
「美孝さま。性奴隷と奴隷って違うんですか?」
さまが嫌な感じだ。
「ストップ。様は止めてよ。まだ、18歳で呼ばれるのは嫌だ。さん付けか、呼び捨てにしてよ」
「えっ?年下?まぁいいさ。美孝さん、違いは何ですか?」
「レストでは、違いが明確にあるね。性奴隷は主人と性的関係を結ぶことを前提に契約した場合に性奴隷になる。奴隷は違うでしょ」
「でも、奴隷商人とかで売られた場合は、そっち方面は酷いもんだって聞きますけど…」
やっぱそうか。
「さっきのやり取りを覚えてる?」
「同意するか?って奴ですか」
「そう、それだよ。君には見えてなかったけど、あのやり取りは神聖にして不可侵の契約行為なんだ。あの瞬間、僕は君を奴隷として雇う代わりに、三食の保証をする義務を負った。その契約を確かに交わしたんだよ。心の中でね」
ゴロツキ達とも似た物を交わしたんだ。
「そんなの口先だけで、逃げちゃえるじゃない」
そう考えるよね。
「僕にはその契約書が見えるんだ」
鑑定でね。
「私は嘘をついてないと?」
「そうさ。奴隷契約は、君にも恩恵を与えるんだ。そこで目一杯飛んでみて」
「いきなり何を?」
「いいから力一杯跳んでみて」
「わかりました」
朱音さんが力一杯ジャンプする。
すると、僕の背丈を越えて二メートル近く跳び上がった。
「うわうわっ」
落ちてくる。
ガシッ両手で受け止めた。
まぁ能力が上がってるから痛くないはずだけどね。
「私に何が起きたの?」
瑞木美孝18才
レベル28(2)
体力値215(10)=2150
魔力値219(10)=2190
力339(10)=3390
知力231(10)=2310
俊敏さ214(10)=2140
器用さ220(10)=2200
幸運値250(10)=2500
魅力437(10)=4370
風10(10)=100
水10(10)=100
火10(10)=100
土10(10)=100
光10(10)=100
称号
貧乳も好き、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失、狩人、精霊の親友、コボルトの天敵
スキル
超鑑定
他種族言語理解
スキル取得補正
緊急避難
レベル・スキルリセット
収納ポケット
レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正
叱咤激励
大声
解体・交渉・召喚魔法・身体強化中級
精霊魔法信頼級
回復・催眠・風魔法・馬術・範囲観測初級
降霊術
武装レベル:槍13、剣8、投擲19、打撃1、短剣20
相性
綱芳(340)さやか(653)恵美(595)武司(95)玲子(55)朱音(3)
精霊:風(10,7)水(8,8)火(9,0)土(8,7)光(7,7)闇(10,8)
奴隷
朱音
設定
一部非表示
楽しんで頂けましたか?
次回はまた明日の18時にお会い出来れば幸いです。