04神との喧嘩とこれから
あの後、木暮さんをなんとか説き伏せて転移準備が完了した。
長かった…
まじめに長かった!
時計があるわけじゃないけど体感で最低でも三日は説得に費やした自信がある。
そして…
現在僕は絶賛正座中です。
「一体どれだけ待たせれば気が済むんだい?気は長い方だけどね、一ヶ月近く待たされれば、いい加減堪忍袋の緒も切れるってもんだ」
開口一番こう言われた。
しかし、このお姐さんの仕草がいちいち非常に可愛い。
お友達になりたいな。
一瞬あっけにとられたけど、なんとか言葉を紡いてみる。
「こんにちは、お待たせしてごめんなさい。真っ暗闇の中で話してたから経過した体感時間としては三日だったんだ。君すごく可愛いけど!!僕を待っててくれたんだよね?どうしてか聞いてもいい?」
「正座っ!!」
不機嫌な怒鳴り声が響き渡りました。
「待ってよ。いきなり正座って言われても君が何に怒ってるのかわからないよ」
立ったまま告げると、今度は殺気をはらんだ視線まで加えて。
「正座っ!」
と再度正座を促されました。
怒ってる顔も可愛いねぇ。
「わかりました。君の可愛さに免じて正座しますよ。はい、正座」
「何だい!!世辞を言う奴は大嫌いだよっ!!可愛さを褒められるような容姿じゃ無いことは、あたしが一番知ってるんだから!」
そっぽを向いて口を尖らせている姿が可愛すぎる…
神か!!?
神なのか!?
「神か!!?」
「いきなりなんだい。当たり前じゃないか。木暮に聞いたんだろ?私はセーフ。地母神さ、とは言ってももうすぐ転生してコーチング妖精になっちまうがね。そんな直前の状態で一ヶ月も待たすなんて!!一体どういう了見なのか、是非聞きたいね!!」
なに?
この可愛すぎる最高生物。
口調はおばさまだけど見た目は高校生だし…
詰問口調と共に恥じらう仕草が可愛いとしか思えない。
めちゃくちゃ好みだ。
「実は木暮さんの説得に時間がかかったんですよ。それ以外には逆にありません」
「はぁ?木暮の説得にかいっ?珍しいねぇ、アイツはそんなに頭が固いやつじゃないから話せば解るはずなんだ。一体何でそんなに揉めたんだい?」
首を傾げながら覗き込む顔が愛らしいです。
ありがとうごさいました。
「実は…向こうでの性奴隷の手配を断ったんです…」
「…バカなのかい?小暮が食い下がるのが当り前じゃないか!」
呆れられた…
「初めては好きな人と…僕を好きだと言ってくれる人としたいじゃないですか…」
「あぁ!!なるほどねぇ。童貞だったね、あんた。そういうことなら仕方がないね。でも、それは蕀の道だよ、覚悟は出来てるのかい?」
なにぃ!?
速攻理解してくれただと!!
「覚悟は残念ながら出来てません。でも精一杯頑張る事を誓います!!」
「まぁ…体験したこともないのに覚悟完了なんて言い出したら、張り倒してやるところだったけど、少しは気合いの入ったバカで良かったよ。流石は私が見込んだ男というところか」
神の一撃って普通に死ねそうだな。
「ところで、すんなり納得して貰えましたけど、どうしてですか?」
「私を何だと思ってるんだい!!地母神だよ!?あまねく生き物の生を司ってるんだ。特に生殖はイコール繁殖の事だよ。知ってて当たり前じゃないか。あんたの年代の童貞ならさっきの理想はある意味当然さ。気概の意味では誇っても良い位だね。やりたい盛りなのに…ご苦労さん」
急にゲス姐さんになってるし…
僕にとっては可愛さは全く減ってないけどな。
「その割りには、木暮さんの説得には一ヶ月かかりましたけどね」
「木暮には理解できないだろうよ。神なんて基本やりたい放題だしね。特に転生を司ってる木暮に、お前さんの初めて抱く女位は商売女じゃなく恋愛したいって気持ちはわからないよ。命こそ一番って奴だからね。喧嘩になって一ヶ月か…ある意味仕方ない」
商売女って直接的な表現過ぎるでしょう。
「一応、根回ししてくれるだけで普通の人って聞きましたけど?」
「本気で言ってるのかい?性奴隷だよ?根回しって記憶をいじくるか、金で買ってくる以外無理だよ。さらってきて記憶改竄なんて無理やりの筆頭だね。だからまぁ金だろうね」
じゃあ…
どういう意味で普通なんだろうな?
まぁ、断り切った話だから別にいいけど。
「あぁ申し遅れました僕は瑞木美孝です。これから異世界にご一緒することになるんですよね?もし、お願い出来るなら…レストでお付き合いをお願いしても良いんですか?」
「…私と付き合いたいって…抱きたいって話かい?その上で性奴隷になって欲しいと?」
うーん。
ズバッと切り込んでくるなぁ。
「単刀直入に言えばそうなりますね」
「全く物好きだねぇ。良いよ。と言ってやりたいところだが生憎無理だ。」
あれ?
好感触だけど、即行で断られました。
「理由を聞いても?」
「冗談かと思ったら本気かい。それともまだ冗談を続けるつもりなのかい。まぁ…結論が変わりゃしないからいいけどね。私には使命があるからねぇ。コーチング妖精になるんだよ」
「両方、兼ねて頂けそうに聞こえますけど?」
「いいや無理さ。コーチング妖精には誰も触れられない。そういう存在に成るために、わざわざこっちの世界で御祓をしたんだからね」
触れないってことは性奴隷になるのは確かに無理だね。
「何か方法は?」
「物好きもここに極まれりだね。全く……全ての使命が終わった時に、まだ同じ事が言えるなら考えてみてもいいよ。ただし、その為に無理しておっ死ぬ様なことは許しゃしないよ!!」
うっ。
良い啖呵だ。
鼻血でそう。
これは頑張るしかないでしょう。
「承知しました。必ず生き残りましょう。使命の内容は僕が聞いても差し支えないんですか?」
「聞いて良いに決まっているさね。瑞木と私とは一蓮托生。瑞木や瑞木の子孫とレストを安定に導くことが使命だよ。三百年位が目処かねぇ」
三百年…
僕は死ぬことが前提っすか。
厳しいお言葉ですなっ!!
ではまた明日15日の18時にお会いできたら幸いです